第7章 再びあの夜へ ギン
第19話 明け方。
夜明け前、ギンはふと目を覚まし頭をグイと持ち上げた。何か嫌な感じがする。
首を曲げ後ろを見ると、すやすやと安らかな寝息をたてているカンナと子供たちが目に入り、昨日の夜を思い出す。
「なんでお父さんはそんなに強いの?」
「お父さんは物知りだねえ」
「一緒に狩りの練習しに行きたいよ」
「あたしはお母さんにも一緒に行ってほしい」
幼い口から次々に飛び出してくる言葉は、耳にする目を細めたカンナと俺をささやかな幸せにひたらせてくれる。
なんとかこの子供たちには、俺たちのような思いをさせたくない。と切実な願いと想いは日々強くなるばかりだ。自分でも少し肩に力が入り過ぎだと感じることがあるが、これが、守るものが出来たということなのだろうと思う。
安らかな眠りの邪魔をしないよう、静かに巣穴から外へ出る。
背筋を伸ばし、目を凝らす。
朝もやがかかった森は視界が悪く、これでは高台に上ったところでそう遠くまでは見渡せない。
そろり前に這い出すと、風に流されてくる匂いを分析する。
森が放つ日々の営みの匂いの中で、かすかに嗅ぎ取ったのはギンが1番嫌なもの、死臭だった。
まだ目に見える範囲に変化は見られない、が、本能から出された気をつけろのシグナルが脳内を駆けめぐり、音を立てぬよう早足で進み始めた背中の毛を逆立てる。
半分眠っているような森の中を、警戒の視線を四方へ飛ばしながら歩を進め、森の奥深くへと分け入っていった。
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