第5章 家族と共に

第13話 きっと。

巣穴から少し離れた、昼寝するにはちょうどいい陽だまりの中をさっきからギンは所在なさげに行ったり来たりを繰り返してる。

縄張りの点検に向かうも途中で引き返し、点検の前に食い物だとモグラの穴に鼻を突っ込んでは、いやカンナの様子を少しだけ……とそんな調子で落ち着きなくぐるぐるとしていた。


小一時間も経ったころだろうか。

ギンの耳がピクリと動く。

細く、か弱く、とても小さな泣き声が耳に届いた。慌てて向きを変え切り株の根につんのめるようにして巣穴へすっ飛んでいく。


暗い巣穴の奥で横になるカンナの前には、ふにふにとした小さな、本当に小さな赤ん坊が。

丁寧に愛おしそうにそっと羊膜をはがし、へその緒を切り胎盤の処理をするカンナは美しかった。神々しいほどに美しかった。

まもなく2匹目、3匹目、4匹目と一定の間隔を置きうねりをと共に体内から出てくる。

顔を舐められ気道を確保された赤ん坊達は順番に、みいみいと小さな、けれども力強い生命の声をあげはじめる。


なんて、なんて小さな、そして何物にも代えがたい命たち。

きっと守り通して見せる。

あの時の救えなかった父さんを、守れなかった母さんを、助けられなかった兄弟たち。

その分とは違う、違うがこの赤ん坊達は俺の体を通して父さん達へ確かにつながっている。


「点検がてら食料を持ってくる。何かあったら呼んでくれ」

「うん、気を付けてね」

「ああ。お前も、体を休ませろよ」

母さんも、俺をこんな風に産んでくれたんだろう、な。


巣穴から出たギンは、胸にせり上げてくる想いに気を取られないよう、ぶるっと頭を振ると、警戒の視線を飛ばしながらいつもの点検へと向かった。







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