第9話 家族へ。

2匹は、山を歩き野を歩き川を歩き、湖の畔に出てはこれまでの事、大切だった家族、仲間の事、人間の事、様々なことを語り合い、その合間に、ギンは狩りの仕方から人里のことまで教えられることは、全てカンナに伝えた。


カンナは言う。

「ギンさんのお祖父さんにあってみたかったな。お祖父さんが言ってた生き延びるための知恵、私たちが持っている知恵って何か聞いてみたかったな」

「俺もだ」


「私ね、父さんが腰を撃たれ動けなくなった時、ずっと父さんに寄り添ってた。一緒に殺されてもいいから、大好きな父さんと離れたくなかった」

ギンは黙って先を促す。

「人間の足音が聞こえてきたとき、苦しい息の下だった父さんが急に頭もたげて、私の耳を思い切り噛んだの。痛くてびっくりして父さんを見た、そしたら――。そしたら父さんの瞳がって、そう言ってた」

カンナの足元に、幾度も流してきた涙が枯れることなく流れ落ちる。


2匹は黙ったまま連れ立って歩く。

それぞれの背中にある、悲しみと苦しみを分け合うように歩く。


春の陽射しが降り注ぐ大地の上で、眩しそうに空を見上げていたギンが突然口を開いた。

「なあ、俺たち、家族にならないか」

「家族に?」

「ああそうだ。大切な家族に」

ほんの少しだけ呆気にとられ、少し照れくさそうに、そして沢山嬉しそうにしながらカンナが答える。

「うん」


2匹は、目を合わせることなく、ただただ陽射しの温かさを、お互いの心の温かさを感じながらいつまでも日向ぼっこをしていた。

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