第15話 夜の出来事

伊藤家の人たちは、寝てしまった。

カチコチカチコチと変な音がする。その音が暗い中に響く。なんだか、怖いな。

怖いと思うと どんどん怖くなってくる。

くーん、くーん ぼくは 思わず泣いてしまった。自分の声さえ、響く。

くーん、くーん ぼくが泣き続けると、パッと明るくなった。ガチャ。ぼくの家のドアが開いた。すると、おとうさんが ぼくをだっこして おとうさんの部屋へ連れて行った。

ここが おとうさんの部屋か。なんだか フカフカする。あったかい。ふと、横を見ると おとうさんの顔が ぼくの目の前にあった。

「ダック、もう怖くないから ゆっくり眠って。」

ぼくは、気持ち良くなって眠ってしまった。

ぼくは小さい時に おかあさんから離されて1匹になってペットショップへ行った。それから、ずっと夜は1匹だった。寂しくて寂しくて、時々 泣いていた。でも今は、とても気持ちが安らかだ。久しぶりに 安らかだ。


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