第9話 ぼくの引越し

狭小住宅からの旅立ちを喜んでいたらなぜか四角い狭い箱に入れられた。

そして、なんか動いている。バンって音がして、ぼくの周りに やたら騒がしい声がしている。

「兄さん、ぼくにも見せて。」

「だめ!車の中に出てきたら危ないだろ。」

「ずるいよ、兄さんだけ。」

「こらこら、喧嘩するな。」

「だって、父さん!兄さんだけ、ダンボールを覗いてるんだよ。ずるいよ。」

「今、すぐに家に着くから我慢しろ。」

人間の大きいものと小さいものが喋っているみたい。

小さいものは声が高い。ん?喧嘩している?

それにしてもうるさいな。

ぼくは四角い箱で窮屈しているのに。

「母さんには、内緒だぞ。いきなり見せてビックリさせよう。」

人間の大きいものが小さいものに話しかけた。

「母さん、ビックリするだろうな。」

人間の大きいものは、これから起こるであろう楽しい出来事を想像して笑っていた。



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