第8話 ぼくの旅立ち

生ものって黒い点のやつは言った。

黒い点のやつに書いてみた。

「生ものって何?」

黒い点のやつは少し鼻を上に向けて教えてくれた。

「生ものっていうのは、いきものとも言うが管理人は そういう意味で使ったんじゃない。生きているものは、どんどん鮮度が落ちていく。鮮度ってわからないだろうな。要するに我々は 生きている以上、今日より明日、明日よりあさってと古くなっていくんだ。犬の世界は年をとるのが早いから。古くならないうちに、管理人は人間に我々を買ってもらいたいと思っている。そう言った意味では、いきものではなく、なまものって読んだほうが正解だろう。」と言った。

じゃあ、ぼくは今日、買われる可能性があるんだと思った。

黒い点のやつは ぼくをだまって見ていた。

なんとなく寂しそうに見えた。

ふと、なんで黒い点のやつは人間に買われないんだろうって思った。

前も そう思ったけど。本人に聞くのも失礼だし。

まっ、あんまり考えないようにしよう。

て、事で ぼくは 狭小住宅から出られそうだ。

狭小住宅からの旅立ちだ。

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