かつて、けものフレンズの流行が始まったとき、人々は混乱に陥りました。なぜこれがおもしろいんだろう?
粗の多いCG、声優は新人でいっぱい、そして狩りごっこ。わけもわからずこのアニメを見て、ハマりはしても上手く説明できない。わかりやすいミーム、優しい世界観、キャラクターデザインの魅力、そして漂う不穏さ等々。たくさんの要因が複合してたくさんの人を惹きつけた、という一般的な言説に集約された今でこそ安心して見られますが、当時は不思議で仕方ありませんでした。
さて、冒頭から冗長でした。そんなわけで本作はそのけものフレンズの面白さの内の『不穏さ』、ポストアポカリプス的な要素に焦点があてられています。
スクラップブックと言うことで、本作は新聞記事や学術論文の体裁を取り、極めて現実的な雰囲気で綴られるのはサンドスターと出会った人類の物語。本編中で最強の便利物質であったサンドスターがどのように人間たちが受け止め、利用したのか。パークの意味、フレンズとセルリアンの意味。それらが政治や学問の視点から解体されていくさまは、お見事と手を叩くばかりです。嘘です。キーボードを叩いています。
もちろん我々はアニメ本編でのパークの姿を知っているわけでして、人はあんな感じやこんな感じになるんだろうなと想像ついてしまいますが、それはどこかアニメを見ていた時の気分ともつながっています。この後どうなっちゃうんだろうと考えずにはいられません。それはまた、けものフレンズの面白さの一つ、巧みなシナリオの為せる業であり、これも間違いなく、広大なけものフレンズの一部なのだと思わせてくれます。