名無き夜に

例えば。

来たる新たな年へのカウントダウンが、思いのほか呆気なかったりだとか。秒分時間日週月年その他諸々の時間を区切る概念は、その実曖昧な境界の上で成り立っていたりする訳で。

「ハッピーニューイヤー!」

と誰かが叫ぶ。皆もそれに追従して、オウムのように同じ語句を叫ぶ。

人生には明確な章分けも無い。上映時間も決まっていなければ、困難な道の先に立ち塞がる巨悪なんてものもない。

ただ、自分が野垂れ死んだ直後、暗転した劇場内を微かに照らすエンドロールの文字列達と、出会い笑い泣き怒り結ばれそしてやがて別れる。そんなシナリオをなぞりながら、今際のその刹那までを惜しみ生きてゆくために、人は今に名を付けたのだろう。

さらば、愛おしき今よ。

エンドロールの向こう側、追想のひと時まで、どうか美しくあってくれ。

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我楽多箱 佐鹿 遊 @Saga_Yu

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