第27話 ジャパリパークからの物体X
「おい、お前、どこにいたんだよ」
「?」
ヤモリは不思議そうな顔で首をかしげると、言った。
「とりあえず、こっちに来てください。ちょっとお話があります」
そんなわけで、ヤモリに導かれるまま、俺はヤモリと朽ちた建物の中に入った。
「どこにいたんだよ。でも、見つけられて良かった」
「? ヒュウマ、私はずっといましたよ?」
「ふぁ?」
「こちらから声はかけませんでしたし、声もかけられないのは不思議に思っていたのですが、この四角くて高いものがたくさんある場所に来てから、ずっと」
「ずっとって……」
良く見ると、ヤモリの服の色が、保護色のようになっていた。
「ア、アイエエエエ!?」
「あいええ? 何ですか?」
「い、いや、ニンジャを見たときはこう叫ぶことが決まっているので、つい」
「にんじゃ? 私、ニンジャじゃないんですけど?」
だがしかし、その存在感の無さは何だ?
服の色が景色に同化してるとか、そう言うのはまぁ、良いとして、なんで誰も気づけないんだ? 忍んでるからじゃないのか?
「ニンジャは、そうですね、パンサーカメレオンと会ったことがあるんですが、私ごときをニンジャと呼ぶのは、彼女に対して失礼だと思いますけど」
「パンサーカメレオン?」
「彼女は完全に姿を消せます」
まじで?
いや、でも、お前もかなりのものだと思うぞ?
とは言え、これで全員集まった。
「じゃあ、皆のところに行こうか」
「待って欲しいんですけど」
「ん?」
ヤモリはソッと何かを取り出した。
「これ、知ってますか?」
「こ、これは、マンガじゃないか!?」
とは言え、ヨレヨレの紙に鉛筆書きである。
セリフも無い。犬の足跡のようなものが押されているが、これは一体……
「ホラー探偵ギロギロです」
「知らないタイトル」
実際、聞いたこと無い。
いや、記憶が無いので忘れているだけかもしれないけれど。
「ファンなので、こっそりお借りしていてのですが、借りたままこの場所に逃げることになってしまいました」
「お、おう。それで、そのギロギロがどうしたって?」
「セルリアンです」
ヤモリが、まるで紙芝居のように、漫画の説明を始めた。
「フレンズそっくりのセルリアンが、この中に紛れ込んでいる。
しかも自覚がありません。バラバラになった迷子のフレンズを甘い言葉で集めて、全員が揃ったところで正体を現して一網打尽にしようとしているシーンです。ギロギロが見破って事なきを得ますが、これを知って驚いているフレンズの表情がまた傑作で、作者の洞察力が絵に出てる良いシーンです。それで……」
……ん?
「えと、どういうこと?」
「つまり、何が言いたいかと言うと、今の状況に似ているって話なんです、このお話。
聞いてくださいヒュウマ。この場所は、誰にも知られてない場所です。今まで、どのフレンズもこんな場所があるなんて知らなかった。ジャパリパークにこんな場所があるなんて、私も始めて知りました。なんでだと思いますか?」
「それは……わかんないよ。なんでなんだ?」
見当もつかない。
「それは、この場所に迷い込んだフレンズが、誰も帰ってきていないから」
ヤモリの目がギラリと光った。
ゾクッとする。
なんだ? なんだって言うんだ?
「ここはセルリアンの数が多い。大きなセルリアンもいます。でも、それでも、誰も帰って来ていないのはなぜなんです? ここを知るフレンズが一人もいないのは、どう考えてもおかしい。多分、このギロギロのエピソードのように、みんなで帰ろうと迷子を集めて、一網打尽にして食べてしまう。そんなセルリアンがここにいます。それも、フレンズの形をした、フレンズそっくりのセルリアンが。
私には心当たりがある」
……
「ば、ばかばかしい。そんなの、どこにいるってんだ?」
ヤモリがジッと俺を見つめる。
なんだ、その目は?
……俺か?
俺かよ。俺を疑ってるのかよ?
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