第28話 怪しい奴ら
「ばかばかしい! 違うぞ、俺はな……」
だが、それ以上の言葉が続かなかった。
記憶が無い俺は、自分の身の潔白をどう証明すれば良いと言うのか?
「いえ、その、確証には至っていません。それに、私が疑っているのは全員です。誰もかれもが怪しい。ともかく、私は、合流して食べられるのはゴメンですから。ヒュウマは何とかして、私を納得させてください。全員が、間違いなくフレンズであると。それまで、私は合流しません」
「……ど、どうしろってんだよ」
「あなたなら出来ると踏みました。動物のこと、私達のこと、詳しいんでしょ? 何か違和感を感じたりしたことはありませんでしたか?」
自分の潔白も証明できない。
だが、他の奴らが間違いなく動物であるかどうかを確認するくらいは、出来るのかもしれない。
「わ、分かった。考えてみる。何とかして、証明するから、待っててくれ」
俺は建物を抜け出すと、元居た場所に向かって歩き出した。
違和感? そんなもの、あっただろうか。
だが、なぜだろうか。
自分では良く説明できないけれど、ヤモリの話には、どこか説得力があった。
もし、セルリアンが紛れ込んでいるとしたら、誰だ?
誰が、動物じゃない?
ペキニーズは、どうだ?
怪しい……が、あいつは弱すぎる。まぁ愛玩犬だから納得だ。
犬らしく尻尾も振るし、走るのも遅い。
いびきかく習性までそのままだった。
なんとなく可能性は低い気もする。
アメショーは?
こいつは怪しい。
そもそも、セルリアンが平気って、同類だから戦わないって意味なのではないか?
あいつがセルリアンと戦っている姿は、見たことが無い。
でも、鼻と鼻で挨拶だとか、尻尾だとかほんとに猫だ。
狩りの仕方も。
可能性は低いか?
じゃあ、キジバトは?
あいつ、怪しくないか?
ぜんぜん手伝ってくれないし、おっぱいもでかいし。
でも、鳴き声だとかキジバトそのものだ。
後、おっぱいもでかいし、この点はすごく怪しい気がする。
まぁ、それでもあいつはセルリアンを倒して俺を助けてくれたしな。
可能性は低いと思う。
じゃあ、スズメは?
怪しい。この中で一番憎たらしいし、どう考えても一番セルリアンな気がする。
とは言え、私怨を除くと、スズメのような気もしないでもないが、言われて見ればスズメっぽい部分をあまり見ていない。
でも、ずっと俺のそばにいて、警戒しつつ見張ってるとか、スズメっぽい気もする。
可能性は、低いのだろうか。
ヤモリは?
ヤモリは、どうだろう。
服の色とかが保護色になってるって、ヤモリからしてみれば大げさな能力と言える。
スズメにも言えるのだけれど、正直、あまり関わってないので良く分からない。
ただ、この疑いを俺に教えたのはヤモリだ。
もし、ヤモリがセルリアンなら、そんなこと言わないで実行したほうが明らかに有利だ。
可能性は低いだろう。
……俺は?
俺は、この中では一番怪しい気がする。
が、俺は人間だ。
人間のはずなんだ。
でも、実際は俺がそう願っているだけで、根拠なんて無い。
それよりも、ハッピービーストも疑うべきだろうか。
だが、あいつは明らかにロボットだからなぁ。
ジャパリまんとか体から出すし。
……分からん。全員どこかしら怪しいし、可能性が低い気がするけれど。
だが、それでも考えれば考えるほど、ヤモリの言うように、この中にセルリアンがいるような気がしてならない。
どこかに、違和感がある気がするのだ。
今まで、ここまで来るまでの中に、違和感が。
俺は歩きながら、さらに考え続けていた。
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