第13話 あぶないメカ

「ヒュウマ、生きてるー?」

「ああ、なんとかな」


 そして、おっぱいが上から来るぞ。気をつけろ。


「二人とも怪我は無い?」


 颯爽と降りてくるおっぱいのフレンズ。


「お、おう。お尻を打ったけれど、大丈夫だ」

「僕も」

「それは良かった」と、おっぱいお化けは言うと、再びふわりと空に飛ぶ。


「でも、何をしてるんですか? 二人とも。セルリアンと戦うときはを狙わなきゃダメです」

「石?」

「簡単に言うと急所です。そこを壊すと、簡単にやっつけられます。逆に言うとそこを壊さないとやっつけられないと言うことです。それなのにそこのあなた。ザルなんか投げて、馬鹿なんですか?」


 おっぱいが毒のある言い方で犬に言う。

 と、ペキニーズがしょんぼりしながら言った。


「で、でも、すごい毒なら効くと思ったから」


 うぐぅ。それは嘘をついた俺が悪い気もしないでもないけれど。

 でも、俺からは絶対に謝らないぞ。

 しかししかし、それにしても怖かった。

 でっかい怪物に食べられると言うのは、ヘリコプターから拘束されて落ちるのとは、また違った恐ろしさがある。


「しかし、なんなんだ、あのセルリアンって奴。あれじゃ、まるで化け物じゃないか。なんなんだよ、あいつは。ペキニーズ、ちょっと教えてくれよ」

「ヒュウマはセルリアン知らないんだ。珍しいよね。じゃあ、教えてあげる。セルリアンはね、危ない奴なんだよ」


 危ない奴なんてのは知ってる。食べられかけたから。


「で? どういう奴なんだ?」

「喋らないし、何考えてるかわからない。フレンズを捕まえて食べちゃうってのはみんな知ってるけど。とにかく危ないんだよ。昔、カバにも言われたけれど、基本逃げなさいーって」


 そ、そうか。かなり危険な奴だな。

 フレンズの天敵って奴なんだろうか。


「うーん、まぁ、良いか。何はともかく、やっつけられたからな。これでもう、安全だし、のんびり行こう」

「でぽっ? 安全? 何を言ってるんですか?」


 おっぱいが首をかしげる。って、いつまでもこの豊満な胸のフレンズをおっぱい呼ばわりするのもどうかと思うけれど。とにかく、おっぱいは言った。


「この辺りはセルリアンが多いですから、安全なところなんて無いです」

「なん、だと」


 おっぱいお化けはいとも容易く俺の希望をぶち壊す。


「そもそも、ここにいるフレンズは、セルリアンの群れに追いかけられてここまで逃げてきたのがほとんどです。ちほーまでの帰り道も分からない。その上追いかけてきたセルリアンがそこらを徘徊しています」

「俺、その辺歩いてきたんだけど。さっき」

「会わなかったんですか? それは運が良かったと思いますよ」


 マジで?

 しかし、道でセルリアンと遭遇してたらと思うとゾッとする。

 いや、もしかするとさっきのでっかい奴も、俺の気配みたいなのを察知して近づいてきたのかもしれないけれど。


「じゃ、じゃあ、早く迷子のフレンズ見つけてこの場所を離れないと。なぁ、ハッピー。……ハッピー!?」


 話しかけようと動かした視線の先、ハッピービーストは壁の瓦礫に埋もれて可哀想な状態になっていた。


「ちょ、飛んできた壁の残骸か! 大丈夫か?」

「……カ……サ」


 様子がおかしい。


「どうした? ハッピー」

「故障……会話機能……」

「なん、だと」


 ハッピーが言ったのはそれで全てだった。

 やたらとノイズが混じり、聞き取り辛いものの、確かに聞こえた。

 故障。会話機能。

 ハッピービーストはもう、会話出来ない?


 思えばダメージの連続だった。

 ジャパリコプターからの落下。着地の失敗。

 おっぱいおばけの理不尽な攻撃。

 とどめにセルリアンが破壊した壁の下敷きである。


「ど、どうするんだよ。お前がそんなんじゃ。俺、どうしたら良いんだよ」

「まだ。ジャパリまん。出せる。会話機能以外。正常」


 ……会話できてるぞ。

 片言になってるだけじゃないか?


「フレンズ。集めたら。迎え。ジャパリパーク。バス。通信」


 ふむ。これは想像で補完しよう。


「フレンズを集めたら、迎えをジャパリパークからバスが来るように通信する。ってことか?」

「……」


 ハッピーはまた喋らなくなった。


「ま、まぁ、そう言うことにしておこう。無理するなよ、ハッピー」


 ほんとは殴りたい。

 斜め45度とかの角度からチョップで。

 この大事なときに喋られなくなると言う間の悪さに対しての憎しみも込めたい。

 でも、これ以上壊れたら困るし、自重しておく。


「とにかく! 一刻も早く他の動物を捕まえるぞ。ところでそこのおっぱい、じゃなかった、えと、とにかく胸のおっきいフレンズ、お前は何のフレンズだ?」

「私? 私は……」


 と、その時、視線を感じた。

 いつか感じた視線。


 ソッと振り返るとそこにいたのは……

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