第17話 約束の誓い

「やめてええ」


女の子の声が船内に響き渡った。


ワシは女の子の口にろ過したオレンジジュースを3滴ほど垂らした。

「おいしいだろ。オレンジ独特の酸味と胃酸の酸味が混ざり合って、舌がヒリヒリする」


婆さんは白目をむき、手足の痙攣がまだ続いていた。


ワシは娘に罪悪感を刷り込むために喋り始めた。



「オレンジジュースを欲しいと言ったのは、お前だ。ボタンを押したのも、お前だ。もし、私は無実というのなら言えばいい。だが、お前が人を殺す片棒を担いだことは、紛れもない事実だ。母や父に相談すればいい。お前の事が可愛いから守ってくれるだろう。だが、お前が殺人の片棒を担いだことを世の中の他人にばれてみろ。お前ら、家族は元より親戚も、お前が味わう苦痛を味わう事になる。だが、お前は命の恩人だ。この事は無かった事にしてやりたい。だから、ワシの頼みを一つだけ聞いて欲しい」



娘は鋭い目つきで爺さんを睨む。


ワシはオレンジジュースを飲み干した。


「3ヶ月間、ワシの世話をして欲しい。もちろん、犯罪を犯せとかワシが君を性の処理に使うような事は一切しない。ただ、世話をしてくれるだけでいい。3ヶ月したら、婆さんの件もケリがつくだろうし、君のやった行為が世間にバレることもない。どうかな?」


少女の目はうつろになり下を向いた。


「ほんとに3ヶ月間、世話したら、この事を内緒にしてくれるの?」


「ああ、するとも。なら二人だけの約束の誓いをしよう」


ワシは拘束した女の子をテーブルの上に置いた。


「ちょっと、なにするの」


ワシは仏頂面で彼女の胴体と手足をテーブルに巻きつけ、頭をロープとレンガで固定した。口を閉じないように口を開く器具を取り付けた、中の様子をペンライトで確認した。


「今から約束の誓いを行う。これを見ろ」


ワシは袋の中から小さな球体を3つほど手にした。


「これは遠隔操作で爆発する爆弾だ。これをお前の体の中に入れる。すこし、きついかもしれんが我慢しろよ」


ワシは細長い棒で彼女の気管をこじ開けた。気管に小さな爆発物を突き刺した細長い棒を入れた。


「食道だと便から排出されるからな。気管支までいれておく」



女の子はあまりの苦しさに朝食を吐き出した。

「今日はご飯と味噌汁を食べたんだね」

そう言ってワシは彼女の気管支に流し込んだ。



10分程すると彼女はえづく仕草をやめて涙目になりながら落ち着きを取り戻した。ワシはその爆発物を口に入れ舐めまわしながら、彼女を拘束しているロープを解いた。


「痛い思いをさせてしまったね。もう、大丈夫だ。ワシは君を信頼している。万が一裏切るようなことがあれば、爆弾を破裂させて、君の胸を粉々にして君のやった事は公表するよ。安心してくれ。3ヶ月我慢するだけなのじゃから」


女の子は下を向いて泣いている。ワシは後ろから彼女を抱きしめ呟いた。



「君も辛いと思うが、妻を失ったワシの方がよっぽど辛いんじゃよ。少し手荒な真似をしたのは君を信用するためなんじゃ。決して君を傷つけずに世間に君のやった行為を隠し通してみせる。信じてくれるか?」



女の子は震えながらワシの腕を握り続けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る