第15話 二千年後の子孫
ワシはカードに表示された1番近くの古谷さんの家に来た。
いくら名字が一緒とはいえ二千年以上、未来の子孫など血のつながりを確認することはできない。そんな事は分かっているが、ワシは古谷の姓を持っている人間をワシの遠い親類と決めつけた。
というよりも、ワシは二千年前に生を受けた、いわば人類の大先輩なのだ。ましてや、血の繋がっている人間の家に上がることなど失礼でも何でもない。
むしろ義務だと自分に言い聞かせ物陰から、じっと古谷の家を観察した。古谷の家は木造二階建ての普通の一軒家で天井には太陽光発電のようなものがあり、風力発電の風車がグルグルと回っていた。夕方の4時ごろだったろうか、1人の小柄な女子専門学生が古谷の庭に入り自転車を停めた。
色白で若々しいがワシの好みではないと下から彼女の全身を見渡した。6時ごろになるとイカツイ大きな車からイカツイ親父がでてきた。あんなのが、あの娘の親父かと思うと少しばかり萎えてしまったが、まあ良い。これで心置きなく、家の中の物を使わせてもらおうと決心した。30分後に母親らしい女が古谷の家へ入っていった。スーツを着ていて身のこなしは、しっかりしているが歳はそこそこで顔の造形も醜いため、もはや何の感情も抱くことはなかった。
そして俺は物陰から夜中の三時まで、じっと空気のように身を潜め監視した。4時ごろに玄関に忍び寄るとライトの明かりがワシを照らした。ワシは慌ててタイムマシンの所まで逃げかえった。
タイムマシンの中は異様な湿気と臭いでむせ返った。
「なんじゃ、この臭いは。目にしみるのお」 見ると婆さんは排泄物を垂れ流していた。
「婆さん、あの忌々しき事を思い出せたか?」婆さんはぐったりしていて反応がない。
ワシはかわいそうなので排泄物を外へ捨てて、近くの川に行きタオルを水に濡らして婆さんの体を拭いてあげた。婆さんは少しずつ意識を取り戻して呟いた。
「み、みず...」
ワシは涙を流した。
ワシがこんなにも看病しているというのに最初に出た言葉がありがとうではなく、水だと。
そう思うとワシの涙は止まらなくなった。
「わかった。すぐ水をやろう」
ワシは船内の食事リストから水を選択してホースを手に持った。優しく、婆さんの口から生暖かい布を取り出して、すかさずホースを食道まで入れ込んだ。
「あ、がぁぁ」
婆さんはえづくように嗚咽した。
ワシは涙を浮かべ「婆さん、水をやろう。だが、明日は用事があるから少しばかり帰りが遅くなる。明日の分まで飲ませてあげるぞ」そう言って水10リットルのボタンを押して胃の中に水を流し込んだ。
婆さんは最初、手をバタつかせ暴れていたが途中から顔が真っ赤になり目が飛び出さんばかりの形相で気絶した。ワシは優しいから水を8リットルで止めてあげてホースを口から抜いてあげた。余興はここまでにして、ワシは古谷の家の内部に潜り込む方法を模索し始めた。
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