第12話 爺さんの思惑 2
焚き火に枯葉を足していていると、婆さんが目を覚ました。
「あ、ここは。れ、玲奈ちゃんは?」
婆さんは慌てて辺りを見渡し、あの出来事を思い出していた。
ワシは婆さんのせいにしてシラを切り婆さんに罪悪感を刷り込んでやろうと思った。
「お前、大丈夫か。心配したんだぞ」
「玲奈ちゃんは?玲奈ちゃんは無事なの? あなた、なんであんなことしたの。なんで」
「あんな事?ワシが何かやったのか。それはこっちのセリフだ。ワシが村の連中に米の納税と倉庫を確認しに村長の所へ行ってたんだぞ。 帰ってくると玲奈は大やけどしているし、聡も腰を抜かしとった。よくわからんから家の中に入ると天ぷら油が引火して少し家事になってたんじゃ。んで、お前を探してもおらんから、まさかと思ってタイムマシンの所まで来たら気絶してたおれてたんじゃぞ。ほんとに覚えとらんのか?」
婆さんは目が点になり「え、あなたが玲奈ちゃんに油をかけたじゃない」
「何言うとるんじゃ。夢でもみとるんか!お前が玲奈のヤケドしている真相を知っとる思うたら、まさかワシが油をかけた?そんな事しとらんぞ」ワシは大きな声で怒鳴りあげた。
気絶して起きたばかりの人間に怒鳴り声をあげ否定すれば、自分が間違っているのかと思う。婆さんの記憶を書き直す事で自らの愚行を隠そうとした。
婆さんは慌てて立ち上がり、「なら、今すぐ玲奈ちゃんの所へいかなくちゃ」
「待て!」
ワシは婆さんの腕を握った。
「玲奈はワシが村の医者の所へ連れて行った。医者は驚いて事件と騒ぎ立てて村の自警団を呼んできた。ほんで、ワシともう1人の婆さんは何処だと探している。ワシは村長と少し前まで話していたから疑われずに済んだが、お前は玲奈をヤケドさせて逃亡という形になっとる。今、自警団の前に出てみろ。お前は間違いなく犯人として疑われる。しばらく、タイムマシンにいろ」
婆さんは言われた事を把握するのに必死だった。
「私が疑われているの?なんで。なにもしてないし、どうしてなの。」
「多分だが、時空を超えて来たせいで婆さん自身の思考や精神に何らかの影響を与えたんじゃなかろうか。ワシは今のところ大丈夫じゃが。何だか怖くなってきたのぉ」
婆さんは立ちすくんで、しばらく目をつむって考え込んでいる。ワシは自分を守るために嘘をついた。やはり、人間は自分が1番可愛いとつくづく思った。それと同時にもし、婆さんがワシを怪しいと何度も疑ってきたら殺すしかない。
まあ、殺しても此処は大日本電機工業の作り出した虚構の世界だ。婆さんは夢から覚めて、元の時代に戻るだろう。ワシはあの快楽を味わってから元に戻りたい。
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