第10話 爺さんの凶行
「ない!ない。ないぞ...」
爺さんは叫んだ。
昨日まであった稲が全て刈り取られハゲ頭になっていた。「こんなこと、誰がしたの..」婆さんはうなだれて膝を崩して呆然とハゲ頭を見つめていた。玲奈は冷静に言い放った。
「実は村長の命令で稲穂を刈り取られる事になっていたんです。鬼に税を納めるのと村での税金もあって言い出しにくかったんですが、あなた方を家に泊めるだけでも苦労したんですよ。その分は働いてもらわないと」玲奈は生活の貧しさを考えたら、仕方ないと言わんばかりで涙を流して訴えた。
「ええよ。1人で悩んでたんだねえ。主人失って1人で子供育ててるところに年寄り2人がいきなり来たら苦しいわよね。苦しかったろうに。また、みんなで頑張ろう」婆さんは玲奈を背中をさすって語りかけた。
「婆さん、この女は信用できんわ。お前、どんなつもりで一緒に稲を育てた思うとんじゃ。婆さん、帰るぞ」爺さんはガチギレして稲刈り用の鎌を地面に突き刺し、小屋へ戻った。
「爺さん、ちょっと待って」婆さんはあとを追いかけ、玲奈も追いかけた。爺さんは家にある荷物を外に出して、この家からさる支度をしだした。玲奈は泣きながら謝っていたが爺さんは頑なに無視をして婆さんと荷物をまとめて外へ出た。
「おい、玲奈。最後のチャンスをやる。俺はここに来て日記を書いとった。お前らとの思い出をな。だが、この思い出は消したい。台所の油を持ってこい。これを燃やして天にささげる」
玲奈は台所へ行き油を持ってきて聡は枯葉などを集めた。爺さんは鞄から日記を取り出し地面に置いた。
爺さんは次の瞬間、鍋の油を玲奈にぶちまけ、すかさずポケットからライターを取り出し点火して火だるまにした。うぎゅああああ。玲奈の断末魔が辺りを覆った。
「わしらは過去から来たんじゃ。人を殺しても罪には問われん。食い物と労働の恨みは恐ろしいんじゃ」爺さんは聡の胸ぐらを掴み「お前らは一緒、狭い世界で人をだまくらかして、セコイ生き方して死ね」と唾を吐き捨てた。婆さんは余りの出来事に腰を抜かし小便を垂れ流し気を失った。玲奈の美しい顔は見るも無惨な姿となり瀕死の状態に陥っていた。爺さんは婆さんをおんぶして荷物を片手に聡に言った。
「お前も運が悪かったな。恨むなら自分を恨め、人生変えたいなら自分で動け。もう、お前の母ちゃん、助からんかもしれんぞ。村の人に助け求めなな」そう言って、ライターを投げた。爺さんと婆さんは自分達のタイムマシンのある場所へ向かっていった。
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