淡い恋が咲かせた花
萱草真詩雫
約束
ー『さらいにいくかも』ー
…そう宣言してくれた直君。
あれから半年の月日が経った。
僕もようやく新しい学校と新居に慣れたある日。
休日の為、家にいると、インターホンが鳴る。
ーピンポーンー
「はい?」
玄関を開けた瞬間、そこにいた人物に目を疑った。
え…嘘…
「陽加、久しぶり」
逢いたくて逢いたくて仕方なかったその人が、変わらない懐かしい笑顔で言う。
僕は小さく名前を呼んだ。
「な…お、君…?」
「お前、暫く見ない内に大人っぽくなったな」
僕はまだ信じられなくて聞く。
「本当に、直君…なの…?」
「当たり前だろ?」
そう答える直君に、僕は思わずガバッと勢いよく抱き着いた。
「うぉっ!」
直君は一瞬驚いたけど、優しく受け止めて抱き締め返し、背中を撫でる。
「夢みたい…っ!」
「夢じゃないよ」
笑って即答する直君。
夢にまで見た直君がここにいる…!
僕は直君の胸に顔を埋めて泣いた。
「なおっ、く…っ!ひっく…な、おく…んっ…!!」
「よしよし」
そんな僕を、直君を受け止めてくれる。
嬉しくて仕方がない…
好きが溢れて止まらない…
ようやく落ち着いた僕は顔を上げて見つめる。
「逢いたかった…」
「俺も。陽加の事忘れた日は一度もないよ」
直君は愛しそうに僕を見つめ返し、そしてこう切り出した。
「陽加、一緒に暮らそう」
「え…!?」
僕は驚きを隠せない。
今、なんて…
「親に無理言って引っ越してきたんだ。学校も陽加と同じとこだよ。それに一人暮らしだし、丁度良いだろ」
「でもっ…その…良い、の…?」
「言ったろ?さらいに行くって」
覚えててくれたんだ…!
どうしよう…良いのかな…こんな夢みたいな事があって。
「俺と暮らしてくれませんか?」
「…はい」
直君の告白に、頷く。
「陽加…」
「何?」
首を傾げる僕の耳元で直君は熱っぽく囁いた。
「キス、したい」
「っ!!」
みるみる真っ赤になる僕。
でも…
「ぼ、僕も…したい…んっ…!」
言うと同時に直君が口付けた。
「はぁ…幸せかも」
「僕も…幸せ…」
僕達はずっと一緒…これからも。
淡い恋が咲かせた花 萱草真詩雫 @soya
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