#31

デスマスクはコンテナ倉庫内にある医療用ベットに傷だらけの楓を寝かせた。

楓はまだ意識が朦朧とした状態で上手く動けなかった。

デスマスクは横の棚から何かしらの瓶を何個か取り出し調合らしき事をしていた。

徐々に意識が戻ってきた楓は自分の置かれている状況に気づいた。

デスマスクは調合が終わったのか楓の方に振り向いた。


『殺傷能力抜群の新しい毒だ、記念すべき第1号はお前だ』


デスマスクはそう言うと毒の入った液体を古びたパーカーの下につけているサスペン

ダーみたいなものに設置した。

そこには管が通っており、それは腕の方までつながっていた。

デスマスクはその腕を横になっている楓に向ける。

しかし次の瞬間、楓は即座にデスマスクの腕を掴み、さらにもう片方の手でデスマスクのガスマスクを外した。


咄嗟の出来事ですでに腕の管から発射された毒はデスマスクの素顔目掛けて撒き散らした。


『うぉおおおおおお!!!』うめき声を上げるデスマスク。


楓はベットから崩れ落ちると這いつくばりながら出口の方へ向かっていった。

コンテナの出口が見えると楓は腕からワイヤーを伸ばした。


そのワイヤーは伸びるだけ伸びたのち何処かに突き刺さった、楓はとりあえずこのコンテナから抜け出す為に今度はそのワイヤーを巻き戻した。


体がワイヤーに引っ張られコンテナから楓は脱出した。


勢い良く飛び出した楓はそのまま港埠頭からT湾へと落ちていった。







コンテナ内でのたうち回っていたデスマスクは棚の引き出しに入っている小瓶を取り出した。


そこには白い錠剤が入っておりそれを一粒取り出し飲み込む。

数十秒して苦しみは消え、デスマスクは落ち着きを取り戻した。

これは万が一の為に用意していた解毒剤だった。




『あの野郎・・・』












T湾は静かに波打っていた。



その静寂をかき消すように海面から勢いよく飛び出す物体があった。


【ハァ・・ハァ・・ハァ・・】楓は激しく息を切らすと重い体を気力で動かし港埠頭まで起き上がった。

地上へと上がるとそのまま体を仰向けにし、倒れこんだ。



意識がまだ朦朧とするなか、何かが近づく気配を感じた・・・

しかし、今の楓には反撃する気力は無く成す術が無かった・・


近づいた人物は3人ぐらいで黒い特殊部隊が着るような戦闘着を身にまとっていた。



拳銃を構え近づいた特殊部隊らしき人物の1人がワイヤレスイヤホンを付けている右耳を抑えながら話し出した。





『ジェネシス部隊第1班、第8地区境目の岸で”クロウ”を発見』

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