#32

バサッ!!



ベットの布団を放り出し楓は勢いよく体を起こした。



『・・・・・・?・・・どうなってるんだ・・ここは・・』



そこは楓の部屋だった。

自分がなぜ部屋にいるのか分からず頭が混乱していた。


(そうだ!確かナインゲート(第9地区)でファントムと戦って・・・)


楓は第9地区でファントムと戦い・・敗れ・・デスマスクに殺されかけたところを辛くも逃げ出したのだ・・・

しかしその後、T湾へ落ちてからの記憶が出てこない・・


そこで楓はあることに気づいた。


顔をさらけ出し、部屋着に着替えている!

(誰かに助けられたのか??  スーツは!?)

ベットの周りを見渡した。

すると脇にアタッシュケースが置いてあった。

楓はそのアタッシュケースを開けると中には戦闘服が入っていた。



(誰が・・?)


頭が混乱している中、楓はもう一つ大事なことを思い出した。




”グレート・エスケープ!!”



『ファントムは”グレート・エスケープ”を潰す気だ』


楓はすぐさま部屋着を脱ぎ、ポロシャツとジーンズに着替えるとアタッシュケースを持って下へと降りていった。


『楓!大丈夫なの?』下へ降りると母・和歌が心配そうに話しかけた。

『母さん、誰がここまで連れてきた?』

『あなたのお友達だって言う人よ、2人であなたを抱えて来たわ』

『そうか・・なにか他に言ってた?』

『いいえ、何も』


ひとまず自分が今、世間で報じられている”ナインゲートのカラス”であることはバレていないらしい。


『何があったの?怪我までして・・』

『大丈夫、ちょっと酔っただけだから』苦し紛れの言い訳だ・・


楓はそう思いながらも今は急いで”グレート・エスケープ”のアジトまで行くことを優先した。



駐車場から愛車である白のBMW X-1に乗り込むと勢い良く飛び出した。











白のBMW X-1は第5地区の平地についた。




楓が勢い良く飛び出した、すでに”ナインゲートのカラス”として。



中央にあるマンホールを開けると警戒しながら中に入った。




静まり返っている・・・・



人の気配も感じられない・・・


その理由が明らかになる光景が楓の目の前に飛び込んだ。

地下のだだっ広い空間に大勢の人間が倒れていた。


”グレート・エスケープ”の人間だ。


その全てがすでに息絶えている。 血生臭い匂いがすべてを物語っていた。

楓は奥にある訓練中は猿渡の部屋となっていた仕切りの方へと向かう。

仕切りから中を覗く・・・



猿渡が倒れていた。



うつむけに倒れている猿渡の体の下からは大量の血が流れていた。


『・・・ファントムだ・・』


突然声が聞こえた。

楓は警戒しながら振り向くと、地面に仰向けに倒れている男がいた。

楓が初めてこの訓練場に来た時に案内した男だった。


『何があった』

『ファントムが来て全員殺した・・』

『ファントムが”グレート・エスケープ”出身だと何故隠してた?!』

『オレはもうダメだ・・・ここから早く逃げるんだ・・・』


『あんたには色々聞きたいことがある・・・死んでもらったら困るんだよ』


楓は男を肩に抱えると地上へと向かった。









九十九記念病院




男を乗せたストレッチャーは治療台へと運ばれる。


緊急医たちが慌ただしく動いている。




楓はポロシャツとジーンズ姿に戻り待合室で佇んでいた。

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