#30
男に案内されるまま楓は第9地区の港埠頭のさらに奥へと進んいった。
古びたコンテナ倉庫の前に数名の人影が確認できた。
『つ・・つ・・連れてきました』
『ご苦労だったな』中央に立っている男が労いの言葉を掛ける。
『これ・・外してください・・』
楓を連れてきた男が人影の方へ近づこうとした時、中央の男がさらに言葉を掛けた。
『いや、お前はそのままそこに立っていろ』
男はどういう意味か理解できずに立ち止まった。
その瞬間、男の手に持っていたプラスチック爆弾が爆発した。
黒炎が舞い上がるなか腕と顔の一部が吹き飛んだ男が倒れていた、生死の判別はもはや見るまでもなかった。
【ファントムか】
『お前が俺たちの邪魔をしている”ナインゲートのカラス”か』顔半分を隠すように白い仮面をつけた男が言った。 ファントムだ。
【お前を探していた】
『探す手間が省けたな』
【SCARは壊滅してもらう】
『デスマスク、相手してやれ』
ファントムの後ろに立っているガスマスクをつけた大柄な男が前に出てきた。
『目障りなカラス野郎はぶっ殺すに値する』デスマスクがいきなり飛びかかる。
楓は咄嗟に避け、体制を整える。
デスマスクはさらに楓目掛けて向かってくる。
デスマスク腕を振るい殴りにかかった。
楓はその腕に体ごと絡まりつき、そのまま足をデスマスクの首にかけ仰向けに倒した。
楓はデスマスクを腕ひしぎ十字固めの体制に持ちんだ『!!!うぉ!』デスマスクはうめき声を上げる。
ファントムは楓の戦いぶりを真剣な面持ちで眺めていたがやがて何かを悟ったように言葉を発した。
『もういい、デスマスク 下がれ』
楓がデスマスクから離れると右腕を方から抑えながらデスマスクは下がっていった。
『なるほど、そう言うことだったのか』
ファントムはそう言うと笑いだした。
【何がおかしい】
『同じ穴のムジナだってことだ』
【何?】
その言葉の真意に答えることなくファントムが楓目掛けて突進してきた。
左右に繰り出してくるファントムの打撃を防御しながら楓は反撃を伺っている。
『胴が空いてるぞ』ファントムはそう言うと楓の腹に蹴りを入れた。
楓はその衝撃で後ろへと吹っ飛んだ。
楓は片膝をついた状態で呼吸を整える。
ファントムはゆっくり近づきながら『お前はオレに勝てない』
楓がファントム目掛けて突進してきたがファントムは回し蹴り一発で楓をさらにふっ飛ばした。
仰向けに倒れ込んだ楓は起き上がれずにいた。
ファントムは楓に近づき楓の髪を掴み顔を引き寄せた。
『お前はオレに勝てないんだよ』
【何故だ】
『グレート・エスケープだな』
【なぜその名前を知っている】
『オレもそこで訓練されたからだ』
【!!】
『猿渡のじじいに何を吹き込まれたか知らないが、力を持てば結局それが権力になり・・支配する、人間とはそう言うものだ』
【ちがう、悪の根源を断てば平和が来る】
ファントムは楓の顔を殴る。
『悪の根源など断つことはできない、人の中に完全なる正義など存在しない』
楓はファントムの腕を振りほどき再び向かっていく。
『わからない奴だな』ファントムは楓の攻撃を巧みに交わすともう一度顔を殴った。
楓はまた地面に崩れ落ちた。
ファントムは片膝を付いて息を切らして下を向いている楓の顔をおもいっきり蹴り上げた。
今度は仰向けに吹っ飛び、地面に寝転んだ。
ファントムは楓に近づき再び髪を掴む、血まみれとなった楓の顔を見ながらファントムは問う。
『オレとお前とでは決定的な差がある、それが何か分かるか』
【・・・・】
『”味わった地獄の数”が違うんだよ』
ファントムはさらに続ける。
『グレート・エスケープと出会ったという事はお前にも少なからず何か地獄を味わったのだろう、グレート・エスケープはそういった奴に漬け込むのが上手いからな。
だが、お前の受けた地獄なんてものはこの世の中ではほんの少しの事だ。』
【・・・】
『オレはお前以上の地獄を経験した、その差が今のこの状態になっている』
ファントムはそう言うと楓の髪を掴みながら反対の手で自分の仮面を取った。
楓はファントムの素顔を見て驚愕する。
ファントムの顔半分はただれた状態でケロイド状になっていた。
ファントムは楓を突き放すとコンテナ倉庫の方へと向かっていく。
『野暮用が出来た、あいつはお前に任せる。好きなようにしろ』
『わかりました』デスマスクはそう答えると倒れ込んでいる楓の方へと向かっていった。
ファントムは普段の移動時は部下の運転による車移動であるため、部下が即座に車の用意に走り出した。
『一人で行く』ファントムは部下を制した。
一人で車に乗り込むとそのまま走り出した。
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