captur#7

#29

《”ナインゲート”に現れた謎のヒーロー!》



《CROW(カラス)が”ナインゲートを救うのか?》



《悪と戦っているとはいえ、これは許されるのか?!》





 翌日から他のニュース番組・新聞・週刊誌がこぞって”第9地区”に現れた謎の人物について報じだした。


 その大半は”第9地区”の希望としてヒーロー扱いし”ナインゲートのカラス”と呼ばれ英雄視しているが中にはやっていることは犯罪だと糾弾しているものもおり、賛否がわかれていた。






『CROW(クロウ)・・カラスか・・』


 田所はいつもの場所でタバコを吹かしながら週刊誌を読んでいた。


【何かがおかしい】


 田所の背中越しでまたしても声がした。

『だからその急に背中越しから話すのやめてくれよ』

【SCARの部下たちの姿が急に減った】

『CROWにビビったんじゃないのか』田所は少し茶化すように言った。

【CROW(クロウ)?】

『この前テレビで取り上げられて以降、世間ではあんたの事をクロウって呼んでいるぞ』

【名乗った覚えはない】

『オレもあんたをどう呼んだらいいか分からなかったから、いいじゃないかこの際クロウで』

【勝手にしろ】

『あの放送で九十九警察の面目は丸つぶれだ、署長はカンカンであんたを捕まえると言ってる』

【だろうな】

『なんにせよ、あんたのおかげで犯罪率が下がったのは確かだ』

【ナイトメアについては何かわかったのか?】

『ナインゲート・ブリッジ暴動事件での第9地区側の人間から出た薬物はやはりナイトメアだった』

【ナイトメアがあれば誰でも兵隊に出来るということだな】

『ただ、科捜研のやつが言ってたが・・ナイトメアはその性質上長期保管が出来ないらしい』

【どういう意味だ】

『どこかで栽培しているとしか考えられないとのことだ』

【第9地区の何処かで・・か】

『一体どこにそんな場所があるんだ・・』

【探してみる】


 夜の闇へと飛び立とうとした時、田所は呼び止めるように話し出した。


『オレは立場上、あんたを追わないといけない』


 楓は振り向くことなく背中越しで聞く。


『だが、あんたを信じる。クロウは今の第9地区には必要だ』


 それに答えることなく楓は夜の闇へと消えていった。









 楓は静まり返った夜の第9地区を歩いていた。


 ファイターとして動き出してからは毎晩のようにこの第9地区へと来ているが、誰もいない日はなかった。

 黒ずくめの男に怯えながらもSCARの誰かは歩いていた。


【何か変だ・・】


 警戒度数を上げ楓は慎重に前に進む。



 楓は路地から大通りにでるとある光景が目に飛び込んできた。

 月明かりのなか道の真ん中で小刻みに震えながら立っている男がいた。

 楓は警戒しながらその男に近づいていく。

 男の格好を見た楓はその姿に驚きを感じた。

 男は両手をビニールテープでガチガチに縛られ、その手には小さなプラスチック爆弾が握られていた。


【どうした!】


『あんたが・・”ナインゲートのカラス”か・・・』


【何があった?】


『オレは今日1日あんたをここで待っていたんだ』男は意外な事を口にした。


【どういうことだ】


『あんたを連れてこないとオレはこれで吹っ飛ぶ・・』

 男は手元の爆弾を顎で指し、震えながらさらに続けた。



『ファントムがあんたを待っている』

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