#20
九十九警察所:朝
田所はいつもの様に警察署近くのコーヒーショップでコーヒーを買って出勤していた。
玄関で門番の制服警官に挨拶をして中に入ろうとした時、奥からドタバタと走りだしてきた木部がいた。
『どうした?』
『あ、田所さん!おはようございます』
『だから、どうしたんだ?朝から慌てて』
『いや、なんか第9地区港埠頭に縛りあげられた人がいるって・・』
『どう言うことだ?』
『“SCAR”の売人って張り紙と一緒に縛りあげられてるらしいんですよ・・オレもまだ状況がわからなくて・・とにかく行ってきます』
『あー待て、オレも行く』と言うといつもはゆっくり飲むコーヒーを一気に飲み干し木部とパトカーに乗り込んだ。
*
第9地区港埠頭
田所はその光景に驚きを隠せなかった。
港に設置されているクレーン車から高く伸ばされたシャベルの先端に男2人が括り付けられている。
『どういうことだ・・』田所は絞り出すように話した。
『さっぱりです・・誰がこんなことを』木部はシャベルの先端の男2人を眺めながら答えたが答えになっていなかった。
『内部抗争か』
『ですかね・・今SCARに立ち向かうやつなんていませんからね・・』と話して木部は咳払いをした『あ、すみません』
警察をも見放してる現状をつい発してしまったからだ。
クレーンが下ろされシャベルから降ろされた男2人に田所は話かかけた。
『誰にやられた?』
男は震える体を押さえながら話し出した。それは冷えからと昨夜の恐怖が入り混ざっているようであった。
『黒ずくめの男だ・・』
『黒ずくめの男・・?』
『ああ、そいつ1人にやられた』
『何か話したのか?どんな感じの男だった?』
『わからねぇ・・声はなんか機械音みたいなので解らなかった・・けど・・』
『けど・・なんだ!』
『”SCAR”のボスの事を執拗に聞いてきてた・・』
『なに?』
『お前らのボスの事を聞いてどうする気だ?』木部が割って入った。
『しらねえよ!俺たちだってボスとは会ったことねえんだからな』
木部は田所の方を見ると『どうなってるんですかね?』
『さーな・・』田所もまだ状況が把握できていないといった感じで答えた。
ただ田所は”第9地区”の状況が変わっていくような妙な胸騒ぎを覚えた。
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