#11
*22:29pm【ナインゲート・ブリッジ建設現場/岸本美和】
ナンゲート・ブリッジ建設現場では建設現場で働く作業員と職に就けない第9地区の人間、そしてそれを鎮圧する機動隊の隊員とでもみくちゃとなっていた。
怒号と火炎瓶が飛び交っている状況にさすがの機動隊もすぐには抑えきれなかった。岸本美和は離れた場所にあるパトカーのそばで運転席側のドアを開けたまま本部と連絡をとっていた美和は現場に入れない歯がゆさを噛みしめていた。
その時、美和の目にある姿が飛び込んだ。
怒号と炎が入り乱れる暴動現場内に幼い子供の姿があった。
子供は泣きながら誰かを探しているようである。おそらく暴動に参加した親とはぐれたのか??どうしてこんな幼い子供を連れて暴動に来たのか?と美和は親に対する怒りすら感じていた。
さらに状況は機動隊、その他の人間が幼い子供の存在に気づいていない。
美和はためらうことなくパトカーから自分の職務を投げだし“ナインゲート・ブリッジ”へと駆けて行った。
*22:45pm【ナインゲート・ブリッジ建設現場/非常線付近/鳥飼楓】
鳥飼楓の車が現場に到着し、楓は飛び出し駆け寄ろうとしたが既に制服警官が≪KEEP OUT≫と書かれたテープが貼られておりこれ以上は進めなかった。
『鳥飼インダストリー社の社長の鳥飼楓だ!中に入れませんか!?』
『ダメです危険です』制服警官は即座に楓を制した。
そんな楓と言い合っていた制服警官の肩口にある無線が鳴り響き声が飛び込んてきた。
≪強行班係の岸本が持ち場を離れ現場に向かった模様、見かけたものは至急持ち場に戻るように伝えてくれ!≫
『美和が!!』楓の顔色が変わった。
*22:59pm【ナインゲート・ブリッジ建設現場/暴動内】
ファントムより命を受けた“SCAR(スカー)”のメンバーはデスマスクを筆頭に暴れに暴れていた。
デスマスクは大柄な体格を活かし第9地区の人間だろうが機動隊の人間だろうが作業員だろうがお構いなしといった具合に片っ端から殴りかかっていいた。
他の部下たちもなりふり構わず暴れつくしている。
デスマスクは一人の男を後ろから羽交い絞めにするとコートの腕の部分から細長い管を出してきた。
そのまま管を男も顔の付近に近付けると『さーどうなるかなー?』と告げ管から霧状の液体を男の顔にかけた。
すると男の顔はみるみるタダレ出し、数秒の間に息をしなくなった。
『効果は抜群だな』
*23:05pm【ナインゲート・ブリッジ建設現場/岸本美和】
岸本美和はナインゲート・ブリッジにたどり着いていた。暴動は尚もまだ治まる気配を感じることなく炎が燃え盛っている。
泣き叫ぶ子供を確認すると美和は駆け寄った。
『もう大丈夫よ』
美和は幼い女の子を抱きかかえると安全な場所へ移動しようとした。
田所は暴動の鎮圧に奮起しているところだったがふとそらした視線に岸本美和の姿を確認した。
『岸本!なにやってるんだ!』
『子供が一人で歩いてたんです!』
『ここは危険だ早く戻れ!』
美和はうなずくと背中を向けて走ろうとしていた。その視線上に楓を確認した。
『美和!こっちだ!』楓は自分の所へ来るように手を振った。
美和は走り出そうとした瞬間、大きな衝撃を頭に受けた。
暴動で暴れていた男が持っていた鉄パイプが美和の頭を直撃したのだ。
美和はその場に倒れ込んだ。子供はどうしたらいいのか分らず立ち往生していた。美和は意識が薄れ行く中、女の子に『まっすぐ走るのよ・・あの男の人のところまで・・』
女の子は言われるがまま楓の方へ走って行った。
楓は女の子を抱きかかえると『もう大丈夫だ』と声をかける。
視線を美和に戻した時にはもう美和は暴動で暴れまわっている人たちの下敷きになっていた。
『美和ーーー!!!』
踏まれたり、蹴られたりしてして傷だらけの光景を楓はただただ見ていることしかできなかった。
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