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 夜のニュースが慌ただしく事件の第一報を伝えていた。



 ≪只今、第9地区"ナインゲート・ブリッジ”建設現場にて大規模な暴動が起こっています!≫



 スタジオのニュースキャスターが緊迫感のある表情でニュース原稿を読み上げる。≪今晩21:00ごろ"ナインゲート・ブリッジ”建設現場で夜間作業している作業員数名と第9地区の住民との間で小競り合いが発生。それに加担するように作業員と第9地区の人間が集まりだし大規模な暴動に発展している模様≫

 現場に到着したのか画面は“ナインゲート・ブリッジ”建設現場の風景を映し出した。≪中継の小林です!現在私は“ナイゲート・ブリッジ”建設現場付近にいます!≫

 ≪小林さん現在の状況はどうなっていますか?≫

 ≪はい!現在も尚、暴動は続いており治まる気配はありません!これ以上は危険なので近づけませんが"ナインゲート・ブリッジ”付近では火炎瓶なども投げ込まれており所々で火災も確認できます!≫

 ≪わかりました、気を付けてこの後もお願いします≫とニュースキャスターが

一旦、中継を引き取るともう一度ニュースを繰り返した。



 *21:40pm【ナインゲート・ブリッジ建設現場】


 "ナインゲート・ブリッジ”建設現場にはすでに九十九署の強行班係と警視庁機動隊が到着しており暴動の鎮圧に取り掛かろうとしていた。


『岸本お前は本部との連絡係りとして、ここに残れ!』田所は防弾チョッキをまとった岸本美和に告げた。

『私も行きます!』美和は怯むことなく田所に喰ってかかる。『ダメだ!』田所はためらうことなく告げた。

『女だからですか!』美和の問いに田所は何も答えず準備に取り掛かっている。

『警察官になって強行班係を希望したのは正義を貫くためです!女だからとか関係ありません!』

『とにかくダメだ!お前は残れ!』そう言うと田所は木部だけを呼ぶと機動隊と作戦を立てだした。

 岸本美和は握り拳をつくり悔しさを滲ませていた。

 そんな間にも暴動は治まる気配はなく、さらに広まっている。



 *21:50pm【第9地区港埠頭】


 第9地区港埠頭コンテナ内でテレビ画面を見ながらファントムは笑みを浮かべていた。

『いい光景だな』

『もっと煽ってもいいんじゃないか』デスマスクは相変わらずガスマスクを被ったままの姿で話し出す。

『お前たちも加担してこい』ファントムは部下たちに命令をした。

『オレも行くぜ』デスマスクは暴れたくて仕方がないといった感じでファントムに告げる。

『勝手にしろ、ただお前は捕まるなよ』



 *22:01pm【鳥飼インダストリー社:社長室】


 楓は抱えていた仕事に一段落をつけると帰宅の準備を始めだした矢先にデスクに置いていた携帯電話の着信音が鳴り響いた。


 おもむろに携帯電話に出ると父総一郎から慌ただしい声が飛び込んだ。

『楓!テレビ見てるか!』

『いや、今まで仕事してたから。でももう終わって帰るところだよ』

『“ナインゲート・ブリッジ”で暴動が起こっているって今ニュースでやってる!』

『!!』

 楓は慌ててテレビの電源を入れニュース番組にチャンネルを合わせた。

 ≪“ナインゲート・ブリッジ”建設現場で夜間作業している作業員数名と第9地区の住民との間で小競り合いが発生。それに加担するように作業員と第9地区の人間が集まりだし大規模な暴動に発展している模様≫と先ほどからニュースキャスターが繰り返し報じている。

『何があったんだ?』楓は状況が飲み込めないといった表情でテレビを眺めていた。

『“ナンゲート・ブリッジ”に行ってくる!』楓はコートに身を包むと総一郎に告げた。

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