筆者の解説 ~というより単なる言い訳
今回のお話は如何でしたか?
筆者がこの物語を思いついたのは、昨年(2011年)に発行した「尹白南の京城」を制作していた時でした。資料をあれこれ見ていたところ、「愛に騙され金に泣き」のエピソ-ドが出てきました。一読して‘これはイケる!’と思い、さっそく執筆活動を開始しました。その際、「愛に騙され金に泣き」の原文にも目を通しておこうと探してみたのですが見付からず、結局、断片的な紹介文をもとに構成しました。それゆえ、韓国で上演、上映されている内容とは違っている部分もあるかも知れません。その点は御諒承下さい。
上記のような経緯で生まれたこの物語の登場人物は皆、実在の人々です。そして、いずれも当時の朝鮮の大衆演劇の世界での著名人ですので、この話は“オ-ルスタ-夢の競演”的な雰囲気にもなっています。登場人物個々人についても詳しく知りたいと思い、人名事典やネットで検索してみましたが、一部の人々を除いて情報が得られませんでした。特に林仙奎氏については、「愛に騙され金に泣き」がこれだけ大ヒットしたにも関わらず、南北双方の事典に掲載されていませんでした。因みに彼は(日本からの)解放後、文芸峰夫人と共に北朝鮮に行きました。北で映画女優として活躍した文芸峰夫人については、北朝鮮の人名事典に出ていました。こうした事情で各人の性格等には筆者の創作が相当入っていて、実際の人物像とは異なっていると思います。その点も御諒解下さい。
ところで、この「愛に騙され金に泣き」は何語で上演されたと思いますか? そう朝鮮語ですね。当時の朝鮮半島は日本の統治下に置かれました。そのため、この時代は“言葉を奪われ、文化を奪われ”と一部では言われています。しかし、日本の戦時体制が本格化する1942・昭和17年までは朝鮮語や民族文化の研究や民俗芸能の上演等が行なわれ、それに対する弾圧みたいなものは特にありませんでした。そして、それ以後も一応、日本語使用は強制されましたが普及することはなく、日本統治が終了するまで朝鮮語によるラジオ放送や雑誌の発行は行なわれていました。つまり、実際は朝鮮語使用が認められていたと言えるでしょう。
経済的に豊かになり、人権や様々な権利が認められている現代には遥かに及びませんが、この物語の時代は朝鮮の人々も内地日本の人々と同じようにそれなりに暮らしていたのではないでしょうか。
追記:本文中の固有名詞については、当時、朝鮮人は朝鮮語読み、日本人は日本語読みをしていたため、敢えて読み仮名を付けませんでした。
紅桃誕生物語 高麗楼*鶏林書笈 @keirin_syokyu
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