ゴーレムの所有者

そんなこんなあってその日の夕方。

手紙で呼ばれた通りに、私と聖騎士は連れ立ってこの街外れの屋敷に向かっているのであった。


んえ?聖騎士が誰かって?カティですが何か?


「……」


そ、そう!私の幼馴染みは聖騎士、それも数多いる聖騎士の中でもこの国に3人しかいない聖霊守護騎士とかいう超強い存在なのである!なのである!!


「……」


「…………」


カシャ、カシャ……。


うん、何故今になってその紹介をしたのかというと、カティがフルフェイス込みのガチ装備で私の隣を歩いているんだよね。歩くたびにカチャカチャ鳴ってるのはそのためだ。この鎧、確か対龍王撃墜戦で使ってたとか言ってたヤツかな。聖剣だか聖霊剣だか知らないけどそれも腰に帯刀している。


そして、その格好でスタートしてからかれこれ30分ほど無言である。正直コワイ。


「あ、あのぉ。カティ……?どうしたのかなぁ〜?」


「……」


「ちょっとカティ。いい加減なんか言いなさいよ。なんでアンタと無言でこんな寂しい道歩かなきゃ−−」


「シッ、静かに。集中が乱れちまう……ッ!俺がしっかりしないと、ブツブツ……」


……。


よくわからないが、今回の件で彼の触れてはいけない部分に触れてしまったらしい。


そんなこんなで屋敷に着いた。


うん、私はホラーの類は苦手じゃない。苦手じゃないんだけど……。


屋敷が夕闇を纏って此方を見ていた。もう完全に出るね、これ。好条件すぎるよあちらさんに。


というかこの時間帯に明かりが灯ってないけど人いるのホントに?人の気配がまるでないんですけど!?


「ち、ちょっと来るものがあるなーっと。ね?」


「大丈夫だ。俺がいる。心配はいらない」


「……う、うん」


なにこの頼りになる感じ。おかしい、おかしいよカティ!!


///



「ハイ、いらっしゃーい!あ、あなたがマーニャさんね?カワイイわぁ!あ、私がサラ=クルーエルね、ヨロシク!あら、聖騎士様が護衛してるの?スゴイ!ウンウン、彼凄く強そうね!頼り甲斐がありそう!あ、立ちっぱなしだったわねごめんなさ〜い!ハイハイ入っちゃってね〜!今お茶だすわね嫌いな種類ある?お菓子食べる?あらもうこんな時間だものね食事の方が先よねもう準備してあるから食べちゃいましょうか!」


……ハッ!?何故か挨拶もそこそこにお食事させられている!?あ、このスープなかなか……。


「じゃないわ!あ、ごめんなさい大声出しちゃって。じゃなくてですね!」


「あー、ハイハイ。あなたをここに呼んだ理由ね?わかっているわよ」


「……」


「単刀直入に言うわ。あなたに彼のオーナーになって欲しいのよ」


サラ博士はそういうとそそくさと右手にある扉を開けた。するとそこから誰かが室内に入って来る。


私よりふた回りは大きい体躯にサラサラとした銀髪。無機質な光を宿した瞳を此方に向ける、ゾッとするほど綺麗な顔をした青年が立っていた。


……全裸で。


「もしかしてサラ博士。そこの全裸男のことですか?」


「全裸?まあ有り体に言えばそうね」


有り体にってナニ!?そのままじゃん!!


思い出した!思い出したよ私は!!あのダンジョンで会ったね彼!!


「お前、あんなのと知り合いだったのか……?」


「引くなカティ!」


否定できないのね。知り合いだから。


「……彼にはダンジョンで助けてもらったの。本当にありがとう」


「ッ!?こいつが!?」


「……」


「けれど博士。何故彼がここに?あと彼に何か着せてください。頼みますから」


「服なんて彼には……。けれどそうね、これからは必要になるでしょうし」


「え?」


「マーニャさん、もう一度頼みます。彼のオーナーになってくれませんか?というより、もうすでに彼のオーナー認証があなたで固定されているのです」


「……すみません。仰っている意味が私にはわかりかねます」


オーナー認証?なにそれ??


「彼はこう見えて、人間ではありません。神の時代に土に生命として魂を宿された、いわゆる『ゴーレム』と呼ばれる存在なのです」


///


この瞬間。


マーニャというごく普通のありふれた冒険者の少女はゴーレムの所有者となる道を歩むこととなる。


『おはようごさいます。オーナー。末永く宜しくお願い致します』

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