第18話 高所恐怖症とはなんぞや
高所恐怖症。
そう、ダンナはそういう人種でもあります。
「症」とついとって、なんや特別な体質かなんかみたいに言われておりますけれども、実際はこれ、単に人間の生き物としての本能らしいですね。
赤ちゃんの時に実験してみると、人は暗いところ、狭いところは実はけっこう平気な生き物やけれども、高いところだけは本能的に避けるようにできておるものらしいです。
それを成長していくにしたがって少しずつ生きやすいように修正していくだけの話で。
ですからまあ、それは何も、悪いことでもなんでもない。
命を守るために、本来そなわっているスペックみたいなもんですわな。
で、まあダンナはそれを持ったままウン十年生きてきたお人やと、そんだけの話です。
ダンナがそういう「生きもん」やということは、私は結婚前から知っておりました。なんちゅうて、本人が告白しましたもんで。
それがどういう経緯やったかは忘れましたけども、柵とか窓ガラスなんかでしっかり囲われているところはまだマシなんですが、高い建物にときどきあるみたいな、分厚い床ガラスがはめ込んであって足許が見えるタイプは、もうとにかくアカンのでした。
「●さん。ボクがなんか悪いことしたら、ここに連れてきてください」
これ、とあるおでーとの時に言われた台詞です。
場所は確か、瀬戸内海にかかっとる大きな橋の、はじっこの塔の中やったと思います。
あそこにも、足許数十メートル下が見えるような、分厚いガラスのはまった床があるんですな。
その上で、ちょっと膝とかぷるぷるさして(いや多分、腹肉なんかもぷるぷるしてたに違いない)、恐らく気持ちは涙目でそう言ったのではないかと勝手に想像するわたし。
今となっては、なんや萌える映像です。
もっともその時は、「はい?」とちょっと目が点になりましたけどもね。
せやかて、一応「ぷろぽーず」の直後やったしね。
っちゅうか、「この男はもう悪いことする気でおるんかいな」とちょっと目が三角になりかかりましたけども。
結婚前からそんなこと断言する男もおらんやろうから、まあそういう意味でないということはすぐ分かりましたけども。
そして実際、私がそこへダンナを「こういう約束やったやんなあ!」とか言いながらひきずっていかねばならん事態も、今のところは起こっておりません。
まあ、うちの弟その2とはえらい違いやわね。
ああっ、思い出したらまーたむかついてきた!
お嫁さん、ほんまごめんなさい!!
……ま、そんな訳で。
今は、テレビのドキュメンタリーとかでめっちゃ高い雪山やら、崖を上から覗くんやら、高い塔やビルの上から下界を撮ったような映像が出てくると、録画までして娘と二人で「お父さんに見せよう!」が合言葉。
ほんでダンナが帰宅すると、
「ほらほら、オトウサン、ほらほら!」
言うて、二人してにやにやとその表情を横からうかがう。
なんちゅう母子や。
鬼や。
自分で言うな。
ダンナはまあ、映像やと分かってるのでそこまで焦るわけではないのですが、それでも、
「うわ! ヤメテ! 股の間がきゅーってするう!」
って、苦笑しつつもびびってくれます。
ちなみに、怖いモノと言えばホラー映画やとか、お化け屋敷とかいった定番のものがありますけども。
ダンナ、そういうもんはいっさい怖くないらしい。
「いや、もちろんホンマモンは怖いで? けどあんなん、つくりもんやて分かってるやん。つくりもんなんか、別に
というのが、その理由。
だから、そういう映画見たり、アトラクションで遊ぼうと思っても、ちーっとも面白くない人です。
せっかく人が怖がって楽しもうとしてる横で「なにが怖いねん、あんなもん」てつまんなそうにしてる人がいたら、冷めますやん。ねえ?
いやあ、まあでも、霊感とか強くなくて良かったですねえ。
それは私もなんですけども。
いやもう、なくて良かったと思てますけどもね。
あれ、視える人はほんま大変やって聞きますもん。
ああ、また話が脱線しかかってる。
っちゅうことで、今回はこのあたりで。
皆さんもいざという時のためには、ダンナの弱味はがっつり握っておきましょう、っちゅう話でした〜。
……え、違う??
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます