第11話 編み物とはなんぞや

 編み物。

 いや、もちろん、こればっかりはダンナがするわけやなくてですね。

 こう、昔は「女のすること」って決まってたようなあらゆることが、すべからくめっちゃ嫌いな私ですが、何故か数年前にとあるきっかけで習うことになってから、はまってた時期がありまして。


 前にもちょっと書きましたが、我が家(実家)では娘が私しかいなかったもんで、母がやたらめったら私にだけ家事をさせよう、させようとした上に、どーも人にものを教えるのが苦手というか下手くそな人やったもんで。

 いやもう、私は母の希望からすると真反対の方向へ成長してしまったええ例です。

 わはは。

 いや笑い事やないねん。今になって色々困ってるから、それはもうね。


 母はフルタイムの仕事を持っていた人ですが、編み物が好きで、通勤電車の中なんかでちまちまと色んなものを編む人でした。まあ、子供が小さいうちだけの話でしたけどもね。

 んで、私もそれをちらっと教わろうとしたわけです。小さい頃にね。

 けどまあ例によって教えかたの絶望的に下手な母。

 なにしろ人を1ミリたりとも褒めることができない性格。そして必要以上にバカにしたりあてこすりを言ったりすることにだけは超人的な才能をもってはる。


 なにがアカンて、今は私も自覚があって距離おいてられるので楽なんですが、私とまったく性格が合ってない。ここがもう、絶望的にあかんかった。

 まあ、良くも悪くも「女らしい」人なんやろなと思います。

 感情的で、非論理的。自分が悪いとは決して認めず、なんでもかんでも周囲の誰かに責任転嫁。家庭内で最もそのアオリを喰うのは私という、最悪の図式が確立していた。

 まあ、私が同級生だったとして、絶対友達にはなってないタイプでしょうかねえ。


 そんなわけで、腐り網……でなくて鎖編みという初歩の初歩で、すーぐに嫌になってやめてしまいました。(どんな変換やねん! さすが私のPCやね・笑)

 もちろん、裁縫も料理もご同様。

 これ、黒歴史。


 で、ですね。

 結婚して子供も産んで、その子が学校へ行きだしてくれてからは少し時間もできたことやしということで、ほかの資格の勉強なんかもするかたわら、近所の編み物教室の体験講座になぜかちょこっと「参加してみようかいな」って気になったんですね。

 ほんで行ってみたら、これがはまった。

 いや、先生、大事ですね。

 けっこうなご年配の先生だったのですが、お人柄といい教え方といい、本当に素晴らしいかたで。

 もうすっかり夢中になって編みまくりました。

 ちゃんとした糸で編むと、セーターってアホみたいにお高いもんになるんやということを初めて知りました(笑)。

 さすがに小説はテレビ見ながらはかけませんが、編み物だと音だけは聞いていられるから進みましたね。それならむしろラジオを聴けっちゅう話やけども。


 棒針も輪針もかぎ針も使いましたけども、棒針数本を使って指無しの手袋、輪針でダンナの腹巻き、ネックウォーマーなどを編みました。子供のマフラーや帽子とかも。もちろん、自分のものもです。地味な色のポンチョとか、意外と重宝しますよ。

 往生したのは、なんといってもダンナの腹巻き。

 まえにも申しましたが、お腹を冷やすとてきめん、お腹をこわしやすい人なので、やっぱり腹巻きはいるよなあと思っていたのですが。

 あれ、実際に編んだらけっこう大変。

 なんちゅうても、糸が細い。細いとなかなか進まんのですわ。

 逆に太い糸やとあっという間に大物でも出来てしまいますけどね。


 今は小説が忙しくなったもので編み物教室はやめてもうたんですが、作ったものはいまも寒い時期に重宝しているようです。

 ネックウォーマーはメビウス編みというのをやってみたのですが、なんやあっという間にできたので、子供のと私のも色違いで存在するのでした。

 今朝もそんなんで(これを書いている時点でまだ三月上旬)、ダンナは腹巻き装着のうえネックウォーマーをして出勤していきました。


 ぽっちゃりしてるうえにお肌の色の白い人なもんで、やたらピンクとか似合うので、もとのデザインでは黒い糸になってたもんでも、勝手に派手めのピンクで編む私。

 まあメンズの編み図なんだから、糸は大体、紺やらグレーやら、地味めのものが多いのは当たり前なんですが。

 本人がそれでも嫌がらずに着てくれるので、まあよしとしよう(笑)。


 よく、クリスマスプレゼントとかでこういうもの貰うと男子からは「(相手の気持ちが)重いからイヤだ」なんて話を聞きますが、まあ夫婦やからいまさら重いもクソもないし。

 っちゅうかむしろ、本人はいやに喜んでおりました。


「●さんの愛がいっぱいやね……!」


 って、そないにこにこせんでも。こっぱずかしいなもう。

 ただの趣味やし。

 「そこに愛はあるのかい?」って昔ドラマでありましたな。

 この場合、「そこに体があるから」趣味で編んだもんを着せといた、っちゅうだけの話やからねえ。

 とか言うたら、「ひ、ひどい……!」て、まーた泣かれそうやから言わへんけども。わははは。


 だいたいが、アナタは愛を求めすぎや。

 誕生日とかクリスマスとか父の日とか、プレゼントイベントが発生するたび、「なんか欲しいもんある?」と聞いたらもう十中八九、「愛が欲しい」って答えるのやめてくれます?


 まるで私が愛を与えてないかのようではないか!(急にしゃべり口調が小説調)

 人聞き悪すぎや!


 いやまあ、確かに「愛」より「とび蹴り」やら「もみもみ攻撃」やらを食らわしている確率のほうが、日常的にはるかに高いけどもね。

 ふん!

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