石油神話

はじめに、天に二神、地に二神の神があった。地の二神は大地と水より生命を生み、天の二神は灼熱と極寒で命を奪った。天と地の神はお互いに争い、幾つもの命が生まれ、そして死んでいった。


あるとき、地の二神は人間を作り出した。人間は賢く、そして地の神の力を借り、有効に使った。灼熱の太陽神が見張る昼は水神の潤いを借り、極寒の月神が見張る夜は地神から火を借りた。


石油とは、地神が与えた神の体の一部であり、よく燃え様々な要素に使えるそれを、人々はありがたく使った。その知恵があり、人々は天の神に滅ぼされること無く、今も生きているのだ。


天の二神は常に死者の魂を奪おうと人間を見張っている。しかし、生前に地の二神への信仰が深かったものは、魂が大地へと戻され、そして生まれ変わるとされている(「お天道さまが見ている」「お月さまが見ている」という言葉は、この信仰の現れである)。


今日も人々は地の二神への感謝と祈りを言葉にして捧げる。「アブラカタブラ(注釈:東洋の言葉で『油を、より多くの油を』を意味する言葉。転じて豊穣豊作繁栄を祈る言葉)」と。

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