第4話 サザンカ6


 ─5月14日 24:30 倉木邸広間─




 さて、これはどうしたものか。


 サザンカはブルリと一度身を震わせた。

 この状況を打破できるすべがてんでわからない。この場から逃げたせる術だって皆目検討もつかない。

 ならば下手に動かぬ方が得策か?

 いやいや、それではこの状況を覆すことなど不可能だ。

 ならば……、ならば?


 答えが浮かばぬまま、サザンカは膝の上に置いた震える指を固く結んだ。

 掌に爪が刺さる。その痛みで僅かに霞みがかった微睡む頭を叱咤した。


 総司郎の提示してきた『提案』。

 それを否応なく受け入れさせられたのはたった数分前のはずだ。

 あの後、総司郎は言いたいことだけ言って消えた。

 にこにこと穏やかな表情のまま、空五倍子色が正面の両開き戸に消えて行ったのだ。

 曰く、もう遅くなったから眠たいのだとか。

 それはこっちだっておんなじだろっなんていう隙も暇もなく、メイドとともにスルリと消えていった和装の影。


 説教大合戦のときとは打って変わりぐっと押し黙ったまま俯いたフタツミと、目を伏せたまま沈黙するイチゴでは、もはや先ほどのように非難の雨に苛まれることはない。

 総司郎は何にも悩まされることなく、片方だけ開いた扉に呑まれてどこぞへいなくなった。


 故に、現在この部屋に残っているのはサザンカと残り二人だけ。

 もともとイチゴが居座っていた椅子。

 それと対になる一つにフタツミが腰を据え、黙したまま自分の髪を指先に絡めて弄んでいる。

 サザンカはといえば、この二つの前に、隣から拝借してきた椅子を置いてダラダラと冷や汗を垂らしていた。


 無言ばかりが溢れる部屋の中。

 総司郎の去って行ってそれからずっとこれである。誰も一言も発さない。この席に集まったはいいものの、一様に口を閉ざしたままでもはや数分が経過していた。

 腕を組んで瞳を伏せるイチゴと、難しそうな無表情のまま空間を睨みつけるフタツミ。


 二人に挟まれて、サザンカは気が気じゃない。

 話しかける言葉も思いつかないし、この状況で話が広がるとも思えない。無機質な投げ合いに何の意味があるだろう。

 サザンカにできることといえば、決して心地よくないこの空気の中。二人のうちどちらかが口を開くのをただ待ちぼうける事だけだった。


 こんな無益な時間を過ごして何の足しになると言うのか。

 サザンカとしては是非とも、今すぐに自室に立ち返り、ふかふかな布団にくるまってぐっすり睡眠にありつきたいところなのだが。


 おそらくではあるが、ここにいる二人にもきっとそれは同じはずだ。

 何もせず、何の目的もなく、無言で流れる一人ではない時間は誰にだってそうであると思うから。

 それでも彼らがここに居座ったまま時間を過ごすその理由は、3人がこぞって囲うサイドテーブルの上に置かれた半紙。

 もとい、この場を去る総司郎が残したメモ書きにある。


 これをどうにかしない限り、サザンカは延々とこの責め苦を受け続けなければならないのだ。

 サザンカは苦く唇を歪めた。


 コチコチと時を刻む時計は今どの数字を指しているだろうか。

 鬱陶しいほど1秒1秒が長く感じる。

 眠気でふと瞼が重たくなった。上と下がぴったりとくっついて、持ち上がらなくなる、そんな錯覚さえ浮かばせて……。

 どろりと体を包み込んだそれは、あまりにも甘美な誘惑。

 迷う事なく飛びついていきそうになって、サザンカはそれを何とか口内の肉を噛んで堪える。


「で? なんだっけ、初めは自己紹介から……だったかしら?」

「たしか、そんなこと言ってたねえ」


 ようやく静寂を切り裂いて口を開いたのはフタツミだ。

 どこか覇気に欠けた厚みのない声は、静かな部屋の中でよく通った。


 それにサザンカは曖昧な笑みで応える。

 サザンカのその笑みにはやっと居心地の悪い沈黙から逃げたせたことへの喜び反面、先程フタツミが発したあまりにナンセンスな『課題』の内容が再び自分に突きつけられた事実に対する脱力が滲んでいる。

 だってこんなの笑うしかない。

 コントじゃないんだぞと思わず口にしてしまいそうになるのだ。

 サザンカは机の上の資料、というか覚え書きのようなメモを手に取った。


「『仲良しプログラム』……か」


 巫山戯てるとしか思えない、メモの一番上に記載された題名を口にして舌で形を確かめる。

 そうやってみたって印象は変わらない。……ひどいネーミングだ。

 悪巫山戯にしたって出来が悪すぎる、サザンカは苦い笑みを浮かべた。


 フタツミが肩をすくめる。


「完全に舐められてるわね。知ってたけど」

「からかって遊んでんでしょうよ、俺らをコケにすんのが野郎の趣味ですから」


 イチゴもメモを横目にそう吐き捨てて頷いた。

 パラパラと半紙をめくり、達筆で書かれてある文字を目で追って、サザンカは彼らに続いて引き笑いになる。


「ほんと、……こりゃあひどい」


 酷い、そう言い表す他に言葉が見当たらない。

 サザンカは椅子の背もたれに寄りかかって息をついた。


 まず最初に記されている『自己紹介をする』に始まり、ズラリと半紙の上に整列した文字列。

 それはサザンカたちに倉木が出した、課題だ。

 課題、なんて学生じゃないんだぞ。こう思うのはさておき、そんなどころの話ではない。問題はそれ以上なのだ。

 先程読み上げたプログラム名もまたしかり。その内容の一つ一つも見るに耐えないほど、名に恥じぬひどく拙いものなのだ。


 ちらり、正面で不機嫌面を並べる二人を見やる。

 どう考えたって、二十歳はたちそこそこ。前半か、後半か、判断に悩む。それほどの年齢であるはずだ。

 だっていうのに、目の前に突きつけられたのはあまりに幼稚な、お遊びのような、課題。


 ガキじゃあるまいに。

 思わず呟いたサザンカに、フタツミが冷めた視線を投げる。


「見た目に違わず馬鹿ね。子供じゃなくてもアイガンドープツだって何回言われればわかるのかしら」

「うぐぅっ……」


 トゲトゲと胸を刺す言葉の雨。

 そりゃあ確かに何度も言われたけれど。

 愛玩動物、改めて自分の立場を思い知らされた事と、彼女のぶっきらぼうな答えにサザンカは不恰好な笑みを浮かべた。


 よほど今回のことが納得いかないらしく、フタツミは現在、すこぶる機嫌が悪いのだ。

 いや、そもそも機嫌のいい彼女に出会ったことなど一度もない。もしかしたらこれが通常運転なのやも。


 ええ? なになに? 馬鹿言うなフタツミは初めからずっと不機嫌だったって?

 確かに、総司郎の話が始まる前から。サザンカが知る限りはずっと、この二人は苛立った様子だった。

 殺気立っているのはもう周知の事実。わざわざ説明するまでもないことだ。

 しかし、それでも『不機嫌』だと感じるのには訳がある。

 先ほどまでのイライラ、今はそれに輪をかけて、……というわけではない。


 逆だ。

 話が終わってからというものむしろ一転して、熱のない絶対零度の空気が続いている。

 まったく気色の変わった『不機嫌』なのだ。


 もちろん、総司郎に押し付けられた提案とやらのこともシジマのこともあるだろうが。

 明らかに舐め腐ったこの文章もその理由の一つだろう。


 無駄に達筆な文字で記された半紙が2・3枚折り重なっただけの簡単な文章だ。

 紙に染み込んで乾いた墨が電灯の明かりをテラテラと反射している。……どうやらこれは筆で書かれているらしい。

 総司郎はとことん古風なものを愛好する男のようだ。


 ──普通にボールペンとかで書きゃいいのに。

 愛好者にして見ればそんなことはないのだろうけど、サザンカにはそうとしか思えない。

 墨だってタダでもなかろうに。


 まぁ、別にそんなことは今どうでもいいことなのだ。

 この高価な墨で綴られた巫山戯た名前のプログラム。

 どんなに馬鹿馬鹿しくってたまらなくたって。どんなにもう眠くてしょうがなくたって。

 サザンカたちはこれを【今すぐ】こなさなければならないのだ。


 理由は簡単。

 そう指示する【命令】が頭の片隅で鳴り響いているから。

【明日から即実行に移れるように、今のうちに済ませておけ】とかなんとか。煩く繰り返すから。


「手短に済ませましょうよ、どうせ結局やるはめになるんだから」

「賛成っすわ。俺もとっとと寝たいんで」


 フタツミがそうため息をつくと、イチゴの方も一つ首肯を返した。


 どうやらようやくやる気になったらしい。

 今までの無言地獄の終わりにサザンカはほっと息をついた。

 これでやっと眠れる算段がついたのだと胸の内でガッツポーズをして、サザンカは愛想よく笑った。


「ジコショーカイ、だっけ?」

「そうすね」

「じゃあ、イチゴから時計回りに」


 フタツミがそうイチゴを片手で促すと、促された男は半眼になって息をついた。


 サザンカの目も自然とそちらに向かう。

 実を言うとこの男の自己紹介とやらには少々興味があったのだ。

 なんてったってこの男は妙な喋り方をする。

 倉木と話していた時もそうだが、丁寧なんだか乱暴なんだかわからない。

 見た目もだいぶ大人しそう……、というか真面目そうな印象を受ける。

 しかしフタを開けてみれば、この有様だ。

 この男に『いちごちゃん』だなんて可愛らしい名前をつける総司郎の気が知れない。


 そんな、半ば好奇の目で目の前の椅子に座った男を見る。

 イチゴはくあっと一つあくびを漏らした。

 そして重厚な椅子の肘掛に片肘をついて短くこう吐き出す。


「イチゴ」

「フタツミ」

「さ、サザンカ?」


 続いてフタツミがテンポよくそう名乗ったものだから、この流れに流されて気づけばサザンカも先日もらったばかりの名前を口走っていた。


 パチクリと目を瞬かせる。


「で、次は?」

「え、あ『握手』だけど……。あの、自己紹介今ので終わりなの?」

「こんな馬鹿馬鹿しいこと、まともにやってらんないわ。手短に済ませるって言ったでしょ」


 こんな茶番に三文だって払えないわ。

 ぎこちなく二人を見比べるサザンカを、フタツミはそう切り捨てた。


 確かに全くその通りである。

 こんなあほらしい企画をまともになんかやってたら気が狂いそうだ。

 しかし、それにしたってこれは。


 フタツミはふんっと鼻を鳴らした。


「握手、ねえ……。あいつ馬鹿にしてんの隠す気もないわね」

「どーせ何の意味もねえんでしょうけど。付き合わなきゃなんないんだから因果なもんですねえ」


 フタツミの言葉にそう息をついたイチゴ。

 彼は言い終わると同時にフタツミの方へ手を伸ばした。


「ほら」

「どーも」


 イチゴの差し出した手をフタツミが無造作に握る。

 適当に緩く結ばれた二つの手。

 軽く上下に動いたそれは、なんの前触れもなく簡単に解けてすぐに離れて行った。

 そして、自然な流れでサザンカの方を向く。


「はい、サザンカも」

「えっ、アッハイ」


 少々戸惑いながらそちらに伸ばした片手。

 細く長いフタツミの手が柔く拾って、すぐに離れる。

 とんとん拍子に進むこの作業に目を白黒させてそのまま固まっていると、フタツミのと入れ違いにイチゴの手が重なった。

 ところどころ硬い所のある節ばった指がまた遠ざかるのをサザンカはただ唖然と眺めていることしかできない。


「次は?」


 ぼうっと木偶人形のように固まっていると、どこか苛だたしげな、男の声がサザンカをそう急かした。

 それにようやくサザンカはハッと我にかえる。

 突き刺すような青い瞳に肩を跳ねさせて、サザンカらバサバサと慌ただしくメモを拾い上げた。

 トーンの低い声に焦って忙しなく瞬きを繰り返しながら、変に固くなった声でそこに残された文を読み上げる。


「『好きなものを教えあう』? ……そうだなぁ、俺はゲームとか……」

「少なくともお前らじゃねえことだけは確かですわ」

「同感ね」

「ええええ……」


 すると返ってきたのは、簡潔で些か塩辛い答え。

 それにフタツミも頷いて同意する。

 たったそれだけ。

 たったそれだけの短い会話を済ませただけで、二人から次を促す視線を寄越された。


 不思議そうに顔を上げたサザンカは、それを真っ向から受け止める形になる。

 ビクリ、サザンカは肩を大きく跳ねさせた。

 もともと目つきのよろしくないふたりだ。

 この険しい視線に慄いて、サザンカは急いでメモに目を走らせた。


「ゔ、ぎゃ『逆に嫌いなものは?』」

「「倉木」」

「……」


 ピタリと重なった声。

 これには流石に苦笑い、サザンカの表情も若干引きつったようになる。

 ──いや、わからなくもないけど。


「『今回のゲームに向けての意気込み』」

「ねえな」

「ないわね」

「ないんだ……」


 いや、パッと言われて思い浮かぶものはサザンカにだってないが。


「『チームのみんなに期待したいプレイ』」

「俺の邪魔にならないことっすね」

「早く敵を倒してゲームを終わらせることよ」

「えーと……」


 正直、言いたいことはたくさんある。

 でも、サザンカは軽く頬を掻いただけで何も突っ込まずに次の文字列を読み上げた。


「『どうやってこれから距離を縮めていくのか相談』」

「適当に」

「なるようになるんじゃないかしら」

「……消極的すぎでしょ」


 まともにやらないと言ったがまさかここまでとは。

 サザンカは呆れて頰を掻いた。

 言ったけど、それでもこの課題の趣旨とは。総司郎が求めている答えとは、大分離れすぎている気がするのだ。


 こんなんでいいのか?

 そう思わずにはいられない。


 きっとその言葉通り、この後の1ヶ月半の間に自発的に動いてくれる人はいないのだろう。

 適当に、なるように、時間だけにに任せるつもりなのだ。


 ダメじゃないかなぁ。そう思わずにはいられないが、サザンカは今、そう思ってもられない。

 疑念を抱くよりずっと、視線に従うことが何より優先されるからだ。

 もたつくサザンカに一段と険しくなった眼光がチクチクと刺さってサザンカを苛む。

 それを避けるためには次の文章を読み上げる他に手段はないのだ。


 サザンカはもう半ば、というかもう全面的に呆れ果てて……。しかしそれでもパラリと紙をめくった。

 めくった半紙の下にあったもう一枚。これの一番上に綺麗に並んだ墨の文字。


 このメンバーでは、形になるかも怪しい難題。

 そこに記されていたのは、そういうものだった。


「……『互いの良いところを褒め合う』」


 今までの流れからして完全に無理だろう。

 ああ、いや。これもまた適当なことを言って流すという手もあるか。


 こんなときに、誰にでも使える万能褒め言葉。

 伝家の宝刀『優しいよね』さえ使えればどうとでもなるのだが。

 その片鱗さえ見えない二人を何と褒めたものか。サザンカは首をひねった。


 大体他の二人はどう出るつもりなのだろうか。ちらりと視線を投げてそちらの様子を探る。

 はあっとトゲトゲしいため息が落ちる。黙ったままで肩をすぼめるサザンカの目の前で、フタツミはさらりとこんなことを言った。


「あんたって短気で神経質で付き合いづらいし近寄りたくもないけど、短所しか持たないストイックさはある意味尊敬するわ」

「お前は顔から中身まで全部ブスですけどヘソの曲がり具合とか極めてるなあっていつも思います」

「……ねえ、それ褒めてるつもりなわけ?」


 対するイチゴも平坦なトーンでそう言い終えて口を閉ざした。

 サザンカはもう苦『笑』さえ引っ込んで苦い表情になった。


 ──もう隠す気もないストレートな悪口じゃねえか。


 褒めるってなんだっけ? 相手の好印象なところを述べることではなかったか。

 今のどこに好印象があっただろう。

 思いあぐねるサザンカの正面で、流れるような自然な所作でついっとフタツミがこちらに顔を向けた。


「サザンカ、あんたは、」

「いや、俺いいっす。……間に合ってマス」


 課題をこなすため、言葉を探し始めるフタツミ。

 サザンカは壊れた人形のようにブンブンと首を振ってそれを拒否した。

 フタツミが訝しげに眉を寄せる。


「なによ」

「なにって、そんなわざわざ褒めてる風にして貶されたくないじゃん」

「骨なしチキンのカス野郎」

「いや、褒めてるふりのほうをやめてほしいわけじゃなくて……」


 それでは課題とは全く真逆になってしまうではないか。

 せめてどうにか普通に褒めようとする努力ぐらいはしてもらいたい。これではただ罵倒しているだけである。


 サザンカの困ったような表情に、フタツミは鼻を鳴らして肩口に溢れた長い髪を乱暴に後ろに払った。


「ふぅ。……まあどうでもいいわ、そんなこと」

「ぜ、全然良くない」

「あんたの番でしょ。早くしなさいよ」


 そう睨まれてサザンカは虚をつかれたように固まった。

 半秒後に意味を理解して半笑いになる。


「え、えええ。俺え?」

「そうよ、さっきから結局何も答えてないじゃないの。もうこの際なんでもいいから」


 ため息混じりにサザンカを急かしてフタツミはひらひらと手を振るった。


 そういえば、フタツミの指摘の通りである。

 確かにサザンカは喉元まで出かかる言葉を飲み込むのに必死になって、先程から質問に答えずじまいだ。


 さて、ではなんと言ったものか。

 サザンカは渾身の力を振り絞って脳みそを働かせた。

 この二人を、褒める言葉?

 そんなもの一寸たりとも褒め言葉が浮かんでこない。浮かんでくるはずがない。

 その現状にサザンカは冷や汗を垂らした。


 だってサザンカは二人とは初対面なのだ。

 いいところも何も彼らのことを少しも知らない。

 こんな自己紹介では人柄が何も伝わってこない。

 適当だとか口が悪いとか、そういう悪印象はまだしも、褒めるところを見つけるなんて無理な話だ。

 こんなお題、こなせるわけがない。総司郎はどこをどう考えてこのお題を盛り込んだのか。


 ──あ、何も考えてないってこともあり得るのか。

 サザンカは頰をひくつかせた。


「えっと、二人とも息ピッタリで仲いい、ね?」

「どこがよ、目玉腐ってんじゃないの?」

「なんでもいいって! 今なんでもいいって言った!」


 そっけない、というか塩辛い返答にサザンカはそう声を上げる。

 フタツミがそう言うから捻り出したのだ。

 全く、何も、一つも思いつかないというのに! 必死に考えて導き出したのだ。多少のズレは許してほしい。

 大丈夫、そんなこと実際は全然思ってないし、適当言っただけだ。


 サザンカはそう主張するが、対するフタツミは全く聞く耳を持たない。

 早く話を進めろと冷たい視線で訴えて、ギャンギャンと吠えるサザンカを彼女はいともたやすく黙らせた。


 黙らされたサザンカはギリリと小さく歯を鳴らす。


 ──……くそぉ、もうこの女のことは信じない!

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