承。
ジャパリバスを降りたかばんちやんとサーバルちゃんは、ツタに埋め尽くされた四角い小山を見上げていた。
「これ、山と言うより“たてもの”みたい」
「“たてもの”?」
サーバルちゃんはかばんちゃんが漏らした初めて聞く言葉に目を丸めた。
「……うん。なんか頭の中で浮かんだの。ボクもよく分からない」
「そういう名前の山なんだね多分。――あれ」
サーバルちゃんは小山の麓にあるモノを見つけた。
「あれ? でかい顔のフレンズがいる」
「でかい顔?」
「ほら」
サーバルちゃんが指した方向に、小山を覆うツタの間から確かに大きな顔らしきモノをがあった。
「絵だよアレ」
「絵?」
「絵というか……“看板”」
「カンバン? かばんちゃんの仲間?」
「違うよ、看板……広告……待ってるにょ……ううっ、何か頭の中がモヤモヤする」
かばんちやんは自分でもよく分かっていないらしい。記憶の底から引き上げた自分でもよく分からない言葉に、かばんちゃんは傾げるしかなかった。
「ちょっと近くまで行ってみよう」
「う、うん」
マイペースなサーバルちゃんに、自分のあやふやな記憶に戸惑うかばんちゃんもひとまず従う事にした。
問題の大きな顔の下までやってきた二人は、そのツタの奥に描かれた大きなフレンズの顔を見上げた。
「見たことの無いフレンズの顔だ」
「ボクにはサーバルちゃんみたいに見えるけど……」
そこにはメイド服を着たネコ耳の少女が描かれていたのだが、二人にはそこがかつてアニメグッズを販売していたビルだとは知るよしも無い。シャッターが閉められていなければそこには色んなグッズや薄い本が並べられている光景が窺えただろうが、もっともこの二人にはそれを目の当たりにしても何なのか判らないままであっただろう。
「うん?」
そんな時である。サーバルちゃんの耳がピクピク反応する。
「なんかあっちから声が聞こえる」
「声?」
「うん」
サーバルちゃんは来た方向を指した。かばんちゃんの目には、その先には相変わらずの光景しか見えなかったが、フレンズの聴覚は異変に敏感であった。
「行って見よ」
「大丈夫かな……」
「平気、平気」
サーバルちゃんはかばんちゃんの手を掴んで駆け出した。
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