「あきはばらちほー。」

arm1475

起。

 “しんりんちほー”にあるジャパリ図書館を目指していたかばんちゃんとサーバルちゃんたちご一行の冒険は続く。

 彼女たちが乗っていたジャパリバスは快調に進んでいたが、いつのまにか奇妙な所に到着していた。


「あれ、ボス、ここはどこ?」


 サーバルちゃんがジャパリバスの窓から身を乗り出して辺りを不思議そうにきょろきょろ見回した。


「なんか“さばんなとほー”や“さばくちほー”とはちょっと違うね……四角い山がたくさんあるよ?」


 かばんちゃんも反対側の窓から外を覗い見た。


『ここは“あきはばらちほー”』

「「あきはばらちほー?」」


 ラッキービーストがいつものように素っ気なくそう答えると、かばんちゃんとサーバルちゃんは顔を見合わせた。


「サーバルちゃん、知ってる?」

「はじめて聞いた」


 サーバルちゃんは傾げてまた外を見た。


 大きな道を挟むように、無数のツタに埋め尽くされたその奇妙な小山が連立するそこは、今まで通ってきた場所とはどこか自然さが不足した光景が広がっていた。


「ここもジャパリパークなのかなぁ」

『違う。GPSの調子が悪かったみたい』

「え、じゃあ道に迷った?」

『大丈夫。サンドスターの濃度が強すぎただけ。修正するからしばらくここで待ってて』


 ラッキービーストはそう答えると両目をチカチカ点滅させながら運転席のコンソールパネルをじっと睨み付けていた。ジャパリバスのGPSシステムにアクセスしているのだが、かばんちゃんたちには知るよしも無い。

 ラッキービーストがそのままじっとしているを観ていた二人だったが、次第にサーバルちゃんが飽きたようにあくびした。


「時間かかりそうだね」

「ねぇかばんちゃん、ちょっとこの辺り見てこない?」

「見る?」

「うん。初めて見た場所だし、なんかおもしろそう」


 サーバルちゃんはずうっと外のほうが気になっていたようである。


「んー。そうだね、少しくらいなら……ねぇ」


 かばんちゃんはラッキービーストに一瞥をくれるが、一行に動く様子も無いので、


「そうだね。ボクも気になっていたし」

「そうだよね! 行こう行こう!」


 サーバルちゃんは両手を挙げてはしゃいだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る