短編集『或る人』

創 智空

俄に考えてしまうこと・無常

世は無常だ。諸行無常。

昔の人が遺した言葉って、本当にその通りだと思う日が来るものなんだな。

だからこそ現代まで遺っているだけか、そっか。


おっとさっそく逸れそうになった。とりあえず無常なんだ。

今、「あぁ、無常だなぁ」なんて詠嘆するほど、物事は1つとして同じまま留まることはないってことを急に実感してしまった。


特に今何かがあったとか、何かしていただとかいうこともなく。

ただ歯磨きをしていただけなんだけれど。


変化は

変化の良し悪しに関わらず、疲れるし、面倒なこともあるし。

自分は変わりたくないと思っていても、変わらないわけにはいかないというか、変わらないではいられないというか。

そういうのって、ひどく煩わしくも感じる。


だけど、私がいくらなぁって思っていても、物事は移ろう。

ずっと眠っていたくても日は昇るし、暑いのが嫌でも夏は来る。いつまでも学生でいたくても社会に出る日はくる。大事だと思っていた友人も疎遠になったり、恋人ができたり別れたり、親を亡くしたり。慣れ親しんだ街を離れる日が来ることもある。


そして自分自身も、年をとりたくなくてもとるし、好きなことを自然とやらなくなっていたり、逆に苦手だと思っていたことを平然とやってのけるようになっていたり。食べるもの、着る服、聴く音楽も変わっていく。


いつだったか、変化を恐れて少しずつ足踏みするようになっていったことがあった。

無意識でやっていたように思う。気づくのに随分と時間がかかった。

あれは悲惨だったな。二度と御免だ。


自分は変わるまいと足踏みしていたって、周りは変わっていく。

それは流れる人混みのど真ん中で立ち止まることのようにひどく困難なこと。

変化すまいと歩くのをやめることこそ、最も変化なのかもしれない。

さらに言うと自分の近くにいる人間に迷惑をかけることになるかもしれないのだ。


そして何より、変化しないならしないで、変化を望むのだろう。


人は変化しないではいられない。

変化の中で生まれた存在だからなのか、変化するものの中で生きていくからなのか。

こんなちょっと大きすぎる話は、私にはよくわからないからこれ以上はやめておこう。


無常に無情を感じても、あゝ無常、なんて思ってこれからも生きていくんだなぁ。


結局なんだか悟ったようなことを言ってしまった。

どうしてこんなことを考えだしたんだっけ。忘れたな。たまにこういうことを考えちゃうんだよな。


まあいっか。明日に備えて、今日はもう眠ろう。

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短編集『或る人』 創 智空 @chiakihajime_421

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