第13話「旅の終わりに」
【1】
「では、
真南の窓から眩しい日差しの差し込む午後0時。
壁面や床、テーブルさえもが白で統一された清潔感漂う会議室の中で、ひとりのメビウス電子の幹部がそう言った。
十数名の重役達が見守る緊張感に包まれた空気の中、指名された訓馬は涼しい顔ですっと立ち上がり、プロジェクターで映し出されたスライドの脇にある机の前に立って一礼をする。
そして、シワだらけの手に握ったポインターから発せられる赤い光で、スライドにでかでかと映された『無人キャリーフレーム計画』という文字の周りを指し示した。
「我々キャリーフレーム課は現在、キャリーフレームを無人で動かす技術について研究を進めております」
「無人というと、AIの開発ということですかな?」
「はい、その認識で間違いありません」
重役の一人からの質問に冷静に答えた訓馬は、ポインターについているボタンを押してスライドを次のページに進め、コホンと咳払いをする。
「現在、日本の七菱・江草重工・JIO社、アメリカのビッグハード社、月のクレッセント社と様々な企業がキャリーフレームの開発を行っております。これらの企業による開発競争は苛烈の一途を辿り、日進月歩の勢いでその性能は増しております」
訓馬の説明を聞きながら、椅子に座ったメビウス電子の重役達がウンウンと頷きながら、静かにテーブルの上のペットボトルを手に取り、その水で喉を潤す。
そうした仕草を気にすること無く、訓馬はスライドを次へと進めた。
「しかし反面、OSなどのソフトウェア開発はビッグハード社が独占しており、こと操縦AIについてはどの企業も研究が進んでおりません。理由は、キャリーフレームの動作というものが人間の無意識下に眠る行動イメージに頼っているからに他ならず、人工知能が今だその域に達していないためであります」
「確かに、人間の頭脳を完全に再現したAIなんてものは、今だ夢物語にすぎないな」
「左様でございます。しかし我々は現在、豊富なキャリーフレーム運用データを元にキャリーフレームの戦闘用AIの開発に専念しております」
戦闘用、という言葉に会議室の中がにわかにザワめきだした。
重役たちは口々に「ここは日本だぞ」「物騒な話ではないか」「作業用のものと思っていたが」と苦言を呈し、疑念と軽蔑の
そんな中にありながら、訓馬は顔つきを崩すこと無くスライドを進め、説明を再開した。
「昨今、日本の……特に、この
「そういえば、先日も都市部で起こった愛国社による過激なデモが米国製キャリーフレームに搭乗した民間人によって鎮圧されたとニュースでやっていたな……」
「キャリーフレームによる戦闘は、危険が伴います。とは言え、最新の軍用機に限れば、緊急時にコクピットを包み込む
先程まで不満げな声を出していた重役たちの空気が、にわかに変化したことを訓馬は感じ取った。
小声で聞こえる「確かにな」「なにも兵器を作るわけではない」「我が社の独占進技術となるのか」「平和の為というのなら」などという言葉は、訓馬の意見がこの空間内で正当性を持っていることを代弁している。
いかに綺麗事を言おうとも、その実は利益を求める営利団体の構成員。
普段はこちらの部署に、ろくに予算も回さない無関心ぶりだったというのに、同業者が未だ手を出していない、世のために有益な分野だと仰々しさを匂わせるだけで、これだ。
自社の製品が悪用されようなどとは露とも思わず、表層の言葉だけでしか判断できない浅はかな人間。
彼らの卑しさに汚らしいものを感じつつも、それを表情に出さず、訓馬はポインターのボタンを影で力強く押す。
「現在、我が課は秘密裏にキャリーフレームの実践データを収集しております。あらゆる状況と、それに対する対応策をコンピューターにインプットすることで人間と同等、いやそれ以上の成果を果たすことがシミュレーションで確定していますので」
「だが、噂では貴課は非合法な手段でそのデータとやらを入手しているとあるぞ。弊社の損失につながる恐れが……」
「まあまあ、良いじゃないか!」
突然立ち上がり、豪快な笑い声をあげたのは大企業メビウス電子の社長・
若干20歳という若さでメビウス電子を立ち上げ、10年にも満たない期間で巨大企業へと育て上げた指折りの実業家である。
三輪は若々しいスマイルを訓馬に向け、両腕を横に大きく広げるポーズを取って仰々しく口を開く。
「私は気に入っちゃったなあ、その計画」
「ですが三輪社長、噂が……」
重役のひとりが困り顔でそう言おうとしたところで、三輪は人差し指を振りながらチッチッと舌を鳴らし、その発言を遮った。
「噂は噂だろう? そのような
「……ありがとうございます、三輪社長」
社長の胡散臭い言動にしかめ面をしながら、訓馬は建前の礼を述べた。
そんな訓馬に対し、三輪社長は不敵な笑みを浮かべながら壇上へと上がり、くんばに静かに耳打ちをする。
「予算アップの代わりに、ひとつあなたの部署にお仕事をまわしたいんだよね……!」
「仕事……?」
【2】
会議を終えた訓馬は不機嫌な表情で地下へとつながるエレベーターに乗っていた。
キャリーフレーム課は社内では窓際の扱いを受けており、そのオフィスも地下の古びた格納庫近くに位置している。
切れかけたまま放置された蛍光灯がチカチカと点滅する薄暗い廊下を通り、表面の煤けて色あせた立て付けの悪い扉を、訓馬は体全体で力を入れるように押し開けた。
「おや、専務。お疲れ様です」
「訓馬はん、遊びきとるでー」
オフィスに戻った訓馬へと送られるふたつの声。
小会議用の長テーブルを挟むようにして、課長であるキーザとバイトの内宮が椅子に座って食事を取っていた。
その周りでは機体整備の要員が一様に小皿に盛られたロールケーキを食べつつ、
「まったく。人に重役会議に出させておいて、ケーキと
「そうは言いますがね、私が重役の連中にヘルヴァニア人だという理由で嫌われているのは専務も知っているでしょう。特にあの三輪社長にはね」
「それはそうだが……そういえば、このケーキは?」
きれいな円柱型に巻かれ、片方の端からは長い長方形のビスケットが斜めに伸びているロールケーキを指差し、尋ねる。
すると、得意げな顔で内宮が自らの顔を指差した。
「うちが
「そういえば、君は修学旅行に行っていたんだったな。ひとつ頂こう」
食べやすいサイズに輪切りにされたロールケーキの1片を片手で掴み、口に運ぶ訓馬。
掴んだだけで指が沈み込むほどのフカフカなスポンジに、くど過ぎない素朴な甘さのクリームが口の中で混ぜ合わさり、思わず「ほう」と感嘆の声が漏れるほどの旨味が味覚神経を包み込んだ。
「どや、ごっつ
「フ……これほど美味しいものがあるのならば、もっと早く会議も終わらせるべきだったな」
「訓馬はんは大げさやなぁ。キーザはんがお中元で
内宮が指でコンと弾いた白い器には、透き通った水の中で泳ぐように浮かぶ真っ白な
その近くに置いてある、麺つゆの入った小皿のひとつに刻みネギと麺の切れ端が浮いている。
しかし、キーザの前に置いてある小皿は麺どころかネギすら浮いておらず、未使用感が漂っていた。
「……おや? キーザくん、君は
「あ、いや……。こんな味気ない麺はどうも私の口には……」
「まったく、そうやっていい歳で好き嫌いをしているから40になっても女性との出逢いに恵まれんのだ。私の孫娘でも紹介してやってもよいのだが」
「余計なお世話です専務。……って専務、お孫さんいたんですか?」
「ああ、跳ねっ返りのじゃじゃ馬娘がな。今は大学生だったか」
少し目を輝かせていたキーザが、その発言を聞いて肩を落とす。
どうやら冗談のつもりだったのを本気にしていたらしい。
彼はそのまま立ち上がり、ロールケーキの最後の一片をわしっと掴み、「外の空気吸ってきます」と気落ちした声で言いながらオフィスから出ていった。
「へぇー、訓馬はんの孫娘か……。一度会うてみたいなぁ」
「近々この
「ほんまか! 楽しみやなぁ!」
嬉しそうに沸き立つ内宮を見ながら、訓馬は未使用の麺つゆに
【3】
「それで、修学旅行は楽しめたのか、お二人さん?」
「ええ、もっちろん! ホテルの一緒のお部屋で寝てぇ、笠本くんのお父さんに挨拶したから、気分は新婚ハネムーンだったわぁ!」
「うわぁ、最近の若者は大胆でありますね……!」
「おい銀川! 富永さんが変な勘違いしちゃったじゃないか! 親父に挨拶ったって本当に『こんにちは』って挨拶しただけだろ!!」
修学旅行の代休日の昼下がりに、裕太とエリィは大田原たちのいる警察署に遊びに来ていた。
うっとり顔で妄想を膨らませていたエリィは、裕太に激しく否定されたことで一瞬頬を膨らませたが、すぐに持ってきた大きな袋に笑顔で手を突っ込み、次々と中身を取り出す。
「えっとぉ。これが富永さんへのエルフィスキーホルダー」
「ありがとうであります!」
「それからぁ、大田原さんにはコロニー模様の湯呑み」
「おう、ありがてぇ」
「そして、照瀬さんには満月ぬいぐるみ!」
「……なんで俺だけぬいぐるみ?」
エリィにまん丸の満月をかたどったボール状の柔らかなぬいぐるみを手渡され、照瀬は渋い顔で一応の礼を言う。
「だってぇ、照瀬さんの好みってわからなかったんだもの。入浴剤とかのほうが良かった?」
「い、いや……笠元の小僧みたく食い物で良かったんだが」
頭を掻きながら、裕太が買ってきた三日月クッキーの盛られた皿に手を伸ばし、口に運んでパリッと心地よい音を鳴らした。
裕太も同じように自分の買ってきた土産菓子を手づかみで食べる。
「だから言っただろ銀川。土産に迷うなら菓子類にしとけって」
「けどぉ、せっかくのお土産なんだから食べておしまいの食べ物類より、実用的な方が良いかなーって思ったんだもの」
「言いたいことはわかるけどよ……ん? うわっ!?」
ふと裕太が部屋の出入り口を見ると、恨みがましそうな目でガラス窓にへばりつく、警察署のメカニックであるトマスの姿があった。
慌てて富永が「いけない、鍵締めてたであります!」と言いながら扉の方へ歩き、カチャリと鍵を開けた。
「ひどいですよ。僕を除け者にしてお菓子食べなくてもいいじゃないですか! 僕がこういうお菓子好きなの、照瀬さん知ってるでしょう!」
「知らせ忘れたのは悪かったって言ってるだろう」
そう言いつつバリバリと三日月クッキーを貪るトマス。
呆れ顔でその様子を見る照瀬の横で大田原がスッと立ち上がり、トマスの肩を軽く叩いた。
「それにしてもトマス。お前、菓子を
「もめももむまむめむま」
「……飲み込んでから喋れ」
「んがぐっぐ……。ふぅ、美味しかった。それでですね、裕太くんに色々と話したいことがありまして。皆さん格納庫へ来てもらえますか?」
【4】
「ほんで訓馬はん。うちに見せたい言うんは何や?」
訓馬に連れられ、明かりがなく真っ暗な格納庫へと足を運んだ内宮は、期待半分に彼に問いかけた。
しかし訓馬は口で返事をせず、代わりに格納庫の電気をつけることでその質問への返答をする。
古びた蛍光灯に照らされ、古めかしい格納庫に姿を表した巨大な影。
特徴的な
見覚えのあり過ぎるその姿に、内宮は驚愕した。
「な……なんで〈エルフィス〉がここにあんねん!?」
「スペースコロニー『アトラント』において、君はこの機体で、未知の怪獣を相手に戦ったそうじゃないか。その勇姿が宇宙放送で流された結果、〈エルフィス〉の製造元であるクレッセント社のエルフィスシリーズの良い宣伝になったとのことだ。その礼として、君にと送られてきたものらしい。まったく、どこで君がここでバイトしているという情報を握ったのか」
「ほーん……クレッセント社いうんは随分と気前がいい会社なんやなぁ! そうかぁ、この〈エルフィス〉がうちのもんか……!」
かつては憧れ、実際に乗って戦った白い勇姿を見上げながら、伝説的な機体が自分のものになったという嬉しさを抑えようとして、できずに全身をそわそわとさせた。
口元をにやけさせ、旗から見てもウズウズしているとわかる動きをさすがに察せられたのか、訓馬がゴホンと咳払いをして場の空気を正そうとする。
「そんなに嬉しいのだったら、試運転してみればいい」
「ホンマに? ええのんか!?」
「この格納庫も元々はキャリーフレームの実験場だ。それに……」
「それに?」
「……いいや、何でもない」
何かを言おうとして口をつぐむのは、訓馬が何か隠し事をしている時の癖であった。
彼は、普段の言動とは裏腹に人が良すぎる面があり、嘘をつこうとしたり隠し事をする時に、無意識に表情や態度に出てしまう。
今までも何度か彼の言葉に悩まされた覚えのある内宮は、そうかそうかと表面上は流しつつも、何かが仕組まれているかもしれないという考えを持ちながらコックピットから垂れるワイヤーの足掛けに足を載せた。
そのまま体重を足掛けに乗せて身体を床から離し、ワイヤーの少し上らへんにある巻取りスイッチを押す。
すると4メートルほど上方にあるコックピットに向けて彼女の身体ごとワイヤーが上へと上昇し始めた。
飛び移るように〈エルフィス〉のコックピットへと乗り込んだ内宮はそのままパイロットシートに腰掛け、刺さったままの真新しい起動キーを右手でひねり、動力炉を稼働させる。
ブルン、と動力炉が動き出し、コックピットの内側を覆うように張り巡らされた、外の風景を映すモニターに光が灯り、暗く古ぼけた格納庫の中を映し出した。
まずは一歩動いてみるか、と操縦レバーを握り神経接続を果たした内宮は、暗闇の中に光る一点の赤い灯りに気がついた。
指をすべらせるように素早くコンソールを操作し、光量増幅効果をモニターに与えた内宮の目に、その灯りの源が目に入ってきた。
それは、まるでワインのような赤紫の装甲に覆われた、刺々しい鋭角状のパーツが目立つ1機のキャリーフレームだった。
謎の機体はファイティングポーズを取っており、妖しく赤い光を放つカメラアイを真っ直ぐ〈エルフィス〉へと向けながら、ゆったりとした動きで腰を僅かにおろし身構えている。
あれは何だ、と内宮が思うと同時に、その機体はこちらに向かって踏み出しながら、刃物のように鋭く尖った指をピンと伸ばし、〈エルフィス〉のコックピットめがけてまっすぐに腕を突き出してきた。
突如現れ接近してきた赤紫の巨体の頭部パーツの異質さが、咄嗟に対応の動作を入力する内宮の目に、スローモーションがかかったかのように焼き付く。
──その頭部には、右目をえぐったような、深い溝が刻まれていた。
【5】
「右目をえぐられたキャリーフレーム……俺の母さんを昏睡状態に追い込んだ機体が、盗まれたっていうのか」
ジェイカイザーの置いてある格納庫へ移動する傍ら、思いもよらない情報をトマスから与えられた裕太は隠しきれない怒りの感情をほんの少し露わにしながら、トマスの言ったことを復唱するように言い返した。
「その機体は、5年前にクレッセント社が建造した究極のキャリーフレームだそうで。技術面でも不可解な点が多く、その機構を技術部に調査させていたんですが……」
「そいつは誰が盗んだんだ? 今どこにあるんだ!?」
いつもよりやや低い声で、無意識に語気を荒げながら裕太がそう問いかけると、トマスは俯きながら言葉を濁し、やがて押し黙ってしまった。
「笠本くん、別にトマスさんがミスをしたわけじゃないんだから、彼を責めるのはかわいそうよぉ」
「あっ……。そ、そうか、そうだよな銀川。トマスさん、すみません」
「いいんだよ、君が由美江さん……君のお母さんに大怪我を負わせたキャリーフレームを恨んでいる気持ちはわかるから……」
困り顔のまま、丸っこい顔で無理に作った笑顔を見せたトマスは、格納庫の重く巨大な金属の扉についているボタンに指を乗せた。
するとその扉は金属の擦れるような音ともに横へとスライドし、格納庫の中にはいかにも整備中といった感じのジェイカイザーの姿があった。
その足元には……。
「あ、ご主人様……とマスター」
「ちょっとぉ、なんであたしはついでみたいなのよぉ」
「いやいや。そういうことより、なんでジュンナがここに?」
『私が呼んだのだ!』
ドヤ顔が目に浮かぶ語気のジェイカイザーの声。
その理由は、と裕太が聞く前にトマスが説明を始めた。
「ジェイカイザーが、彼女にも何かできることはないかと言ってまして。整備の手伝いをさせてみてたんですよ。彼女、なかなか筋がいいですよ」
ぺこり、と無表情のままお辞儀をするジュンナ。
ジェイカイザーもチャランポランしてるわけではなく、惚れたジュンナのことをちゃんと考えてやっているんだな、と裕太は関心した。
それはそうと、とエリィが話の腰を折る。
「結局、ジェイカイザーについて話したいことって何だったのぉ?」
「ああ、えっと。これを見てください」
そう言ってトマスは格納庫脇に置いてあったクリアファイルを手に取り、裕太に渡した。
ファイルには20枚近い紙が挟まっており、これ全部に目を通すとなると骨が折れるな、と裕太は少し憂鬱になった。
それでも、今後もジェイカイザーを操縦するならばと自らを鼓舞し、びっしりと印字された文章に目を通し始めた。
「えーと、なになに……。本文は地下研究所の調査・探索によって得られた情報である……?」
──ジェイカイザーの未知の動力炉、それはフォトンリアクターと呼ばれる半永久機関であった。
フォトンとは、地球上に存在しない物質であり、イェンス星という惑星よりもたらされたものである。
フォトンは電気や熱などのエネルギーを増幅する効果があり、僅かな電気エネルギーから大型機械を動かすパワーを生み出すことができる。
三丁目二番地に新装オープンした天辺ラーメン、店長オススメの根性盛りラーメンが絶品──。
「……ラーメン?」
「ああっ、すみません。そこ、私のお手製グルメ冊子のコピペミスしたところで……。印刷紙がもったいなくて……飛ばしてください」
申し訳なさそうに横から覗き込むトマスに呆れながら、ペラペラと紙束をめくっていく裕太。
四丁目の小料理屋、一丁目の蕎麦屋、地方チェーンが与代市に新装オープン、ホテル・レストランのケーキバイキング……。
『むむっ! 私はこのケーキバイキングというのに興味が湧いたぞ! ジュンナちゃんと行ってみたいとは思わないか!?』
「お前そもそもメシ食えねぇだろ。というより20枚中18枚がグルメ記事になってるじゃねーか!!」
「すみませんグルメ冊子を書くのがが盛り上がっちゃって……すみません。えっとここから続きです」
「勘弁してくれよトマスさんよ。えーっと……」
──以上からフォトン結晶体による武器強化「ウェポンブースター」は機体のエネルギーを大量に消費するため多様は厳禁。
フォトンエネルギーを直接攻撃に転用する兵器もジェイカイザーには搭載されているが、当機能は搭乗者の熟練に応じて順次開放されていくとされる。
というのがトマスから渡された書類の中でジェイカイザーに関して書かれた文章だった。
「……これだけ?」
「これだけ、とは心外ですね。頑強なセキュリティに守られダンジョンと化していた地下研究所を、手空きの整備班が命がけで切り開いた結果、得られた情報なんですから」
ふくよかな腹部を張りドヤ顔をするトマスに軽蔑の心が生まれる裕太。
なぜならもったいぶられた割には、情報の大半はすでに知っていたり、何となく察していたことばかりだったからだ。
「……とにかく、富永さん。この書類、シュレッダーにかけといて」
「はいであります! そーれガガガガーッと」
「ああーっ!? 業務の合間にコツコツ作った僕のグルメ冊子がーっ!」
「トマス、おめぇ仕事中に何やってんだよ」
紙束を飲み込んでいくシュレッダー装置に涙目ですがりつくトマスを尻目に、裕太はエリィがそういえばという表情をしていることに気づいた。
「どうした、銀川?」
「ねえ笠本くん! ジェイカイザーって乗った回数に応じて機能が増えていく、ログインボーナスみたいなシステムあったわよねぇ?」
「……そうか! 修学旅行中にあれだけ乗ったんだから、何か増えてるかもしれないか! おーい、ジェイカイザー!」
整備の調子を確かめるように手をグニグニ動かしていたジェイカイザーに、裕太は近づき大声で問いかけた。
「ジェイカイザー、お前実はいくつか機能増えてるんじゃないかー?」
『よく聞いてくれたな裕太! 実は密かにいくつか機能が増えていたのだ!』
「よっしゃ! パワーアップってことだな! で、何が増えたんだ?」
『フッフッフッ……! なんと「ジェイブレード」の刃にフォトン結晶をまとわせる機能と、「ジェイブレード」の射撃機構を解放する機能が増えていたのだ!!』
のだ、のだ、のだ……とジェイカイザーの声が静かに反響する。
ジェイブレード。
実際にその姿を見たことはないが、ジェイカイザーの基本装備として搭載されていたらしい剣らしい。
しかし……。
「あの剣なら俺達が預かったままだなぁ。なにせ『機動重機用銃刀等取締法』に引っかかってるからな」
特濃トマトジュースを飲みながら大田原が行った法律の内容を、裕太は知らない。
しかし、キャリーフレームという規格から離れた存在であるジェイカイザーの所有物が日本の法律から逸脱したものであることは想像に難くなかった。
「……ってことは、現状何も変わらねえってことじゃねぇか」
『そうとも言うな! ワハハハ!』
「何笑ってんだよ……」
【6】
横方向に薙ぐように、片目に傷のある赤紫の機体から伸びる、鋭いマニピュレーターが、内宮の乗る〈エルフィス〉の眼前を掠めるように通り過ぎる。
壁から飛び出ていた古びたパイプが、そのマニピュレータによって切断され、鋭利な刃物で切り裂いたような切り口を見せながら落下し、音を広い部屋中に反響させる。
「……速すぎやろ!?」
続けざまに放たれた蹴り上げに対し、内宮はペダルを強く踏むことで〈エルフィス〉を後方に飛び退かせ回避する。
しかし、驚くべき瞬発力により傷を持つ機体は〈エルフィス〉へと肉薄し、コックピットハッチへと鋭利な指を突きつけた。
「っ……?」
急所であるコックピットへの寸止めをされ、身動きできない内宮。
そんな彼女を見下すかのように、傷を持つ機体のコックピットが開き、中から自分と同年代に見えるひとりの少年が顔を出した。
「あの〈エルフィス〉に乗ってこの程度か、内宮千秋」
「なんやと……なんでうちの名前を知っとるねん! だいたいあんた何モ……ン……や……!?」
突き刺すような冷たい視線を向ける男に、内宮もコックピットを開き啖呵を切る。
しかし、モニター越しでハッキリ見えなかった男の顔を肉眼で視認し、内宮は言葉を失った。
学生フレームファイト大会の優勝常連、かつては最年少でプロ入りとも目されていた、内宮自信も何度となく交戦したものの、ただの一度も勝利したことのない人物……。
「
「名前は覚えていたようだな、内宮千秋」
「ちょ待てや、なんであんたがここに……それも、そんなケッタイなキャリーフレームに乗っとんねん!?」
「それは、私が説明しよう」
おもむろに姿を表した訓馬が、拡声器を構えて静かに話し始めた。
と同時に拡声器からはキーーーンというハウリングの音が響き渡り、この場にいる全員が一斉に耳を手で塞ぐ。
「だーっ! 誰もおらへん静かな場所なんやから、拡声器使わへんでもええやろが!」
「失礼失礼……。コホン、先の会議において三輪社長から直々に任されたのだよ。彼と、笠本裕太。およびジェイカイザーとの戦いをセットアップしてくれとな」
「笠本はんと……? なんでや? それに社長とあんた、どういう関わりがあるんや?」
本人に答えてもらおうと、内宮は眉間にシワを寄せながらグレイの方に顔を向け、少し強い口調でそう問いかける。
しかしグレイは顔色ひとつ変えず、自らの顔の前で
「社長についての繋がりは黙秘する。だが、奴は……笠本裕太は俺の人生を壊し、俺の親父を死なせた男なんだよ」
「……なんやて?」
内宮はグレイの言葉に思わず眉を吊り上げた。
確かに、裕太はカッコつけしいで間抜けなこともあるが、目の前の人間の危機には命を投げ出して助けに向かい、困った友人を見捨てられない音のいい男である。
そんな彼が、ひとりの人間の人生を狂わせ、またその親を死に追いやったなどとは到底思えなかった。
内宮の表情から内面を察したのか、あるいはそんなことなどお構いなしといった感じでグレイはコックピットハッチから床へと飛び降り、靴音を立てながら廊下の方へと歩き始めた。
「待てや! どこ行くつもりや!」
「フン、これ以上無駄口を叩くほどヒマじゃないんでな」
いけ好かない風にそういったグレイは、懐からお椀のような物を取り出して訓馬へと差し出した。
「訓馬専務だったか、ひとつ頼みがある」
「……何だ?」
「……
クールな顔つきのままそう言って腹を盛大に鳴らすグレイに、内宮は思わずズッコケてコックピットから落ちそうになった。
【8】
「〈ナイトメア〉? それがご主人様の母上様に大怪我を負わせたマシーン……いえ、キャリーフレームなのですか?」
「ああ、そうだ。赤紫の装甲、刃物のように鋭い手、そして大田原さんが負わせた片目を抉るような傷。それが奴の外見的な特徴だ」
そう言い終えると、裕太はカップを持ち上げ、中に入っていた黄金色に輝くコーンスープをズズ……と音を立てて口へと注ぎ入れた。
ジェイカイザーについての説明を聞き終えた裕太・エリィ・ジュンナの三人は警察署を離れ、エリィが紹介した喫茶店「ブイメー」を訪れていた。
なんでも、彼女の知人が経営している店だというらしく、エリィが旧ヘルヴァニアの皇族であることが露見した故に一緒に来れるようになったと言っていた。
「はい、ご注文の飲み物をお持ちしました。あと、エリィちゃんにはパフェのサービスよ」
質素なエプロンを来た眼鏡で黒髪のウェイトレスが、静かに裕太たちのテーブルに歩み寄りトレイに乗せていたカップをジュンナへと、パフェの入った大きな器をエリィの前へとそっと置いてにっこりと微笑んだ。
ありがとう、と笑顔でウェイトレスにお礼を言うエリィの横で、真っ黒な液体の入ったカップをジュンナが持ち上げ、その匂いを鼻先でスンスンと吸う。
「……ジュンナのコーヒー、えらくドス黒いな。まるでコールタールみたいだ」
「正解です、ご主人様。これはコールタールです」
「おい待て、たしかにコールタールのようなコーヒーという表現は本とかで見たことはあるが、コーヒーのようなコールタールは初めて見るぞ!? それまさか飲むんじゃないだろうな!? というか何で喫茶店でコールタールが出てくるんだよ!!」
「ご主人様、ツッコミはひとつずつでお願いします。まずひとつ、私達の種族にとってコールタールは
ジュンナに紹介されるように手の先を向けられ、頬を困り顔でポリポリと掻いているウェイトレスに、裕太はジト目で顔を向けた。
「えっと、あの。どんなお客さんがどんな注文をしてもお出しできるようにと、父が……じゃない、店長が揃えていて……」
「いやいや、だからってコールタール用意しているのはおかしいだろ!? なあ銀川、お前もそう思うよな!?」
「ちょっとぉ、笠本くん。美崎さん困ってるからそこまでにしときなさいよぉ」
エリィに美崎さんと呼ばれたウェイトレスは、アハハと乾いた声で笑いながら裕太たちの隣の空席に腰掛け、ふぅと一息ついた。
そんな美崎の仕草で我に返った裕太は、責め立ててしまったことが恥ずかしくなり「ご、ごめんなさい……」と冷静になって彼女に頭を下げた。
「いいのいいの。私だって色々とツッコミたい気分だったし。あっ、自己紹介がまだだったわね。私の名前は
「あ、あのぉ美崎さん。まだ笠本くんは彼氏っていうかぁ……」
柄にもなく、エリィがモジモジとしながら恥ずかしがっていた。
この美崎という女性、パット見は大学生くらいの年齢にも見えることから、もしかしたらエリィにとって姉代わりのような存在なのかもしれない。
普段は平気な顔をしていても、身内から彼氏だ彼女だという話題を振られたら、恥ずかしくなる気持ちもわからないわけでもなかった。
それよりも、裕太は美崎の名前に違和感を感じていた。
エリィの話だと、この喫茶店の経営者はヘルヴァニア人で、ウェイトレスをしている美崎はそのヘルヴァニア人の娘だと聞いている。
首を傾げて考え込む裕太の顔をじっと見ていたジュンナが、すっと手を上げて口を開いた。
「ご主人様が言おうとしていることを代弁して差し上げましょう。なぜ美崎さんはヘルヴァニア人の娘さんなのに名前が日本人的なのでしょうか、ということですよね?」
「あ、ああ……。そうなんだけど、まあちょっと気になっただけだから」
「コラコラ彼氏くん。初対面の女性にそういったデリケートな話題は振るものじゃないわよ。ま、いろいろ事情があるとだけ言っておこうかな。それよりも、さっきまでの話の続き、しなくていいの?」
美崎にそう言われて、裕太は何の話をするためにこの店に場所を移したかを思い出した。
気分を改めるためにカップに残っていたコーンスープを飲み干し、コトンと音を立ててテーブルに置いて深呼吸をする。
「それで、えーっと……。そうだ。大田原さんが言っていた盗まれたキャリーフレームが〈ナイトメア〉なもんだから、大変だって話なんだよ」
『それは、そのマシーンといずれ交戦する可能性があるということだろうか』
「ああそうだ、ジェイカイザー。なにせ〈ナイトメア〉って機体は……」
「全長8.5メートル、重量9.6トン。軍用キャリーフレーム企業・クレッセント社が建造当時に採算度外視で傑作機を作ろうというプロジェクトで作り上げた、超高性能機だから、ってことでしょ?」
毎度のことながらどこからその知識を得ているのか、エリィが裕太の言いたいことをスラスラとすべて言ってしまったので裕太は「お、おう……」と相槌を打つことしかできなかった。
エリィの言うとおり、〈ナイトメア〉は、建造当時でも10年先を行っていたと言われるほどの性能を持っているらしい。
それは運動性・反応速度・バーニアの出力・パワー……すべてのスペックが20年前のパーツで構成されたジェイカイザーとは比べ物にならないほど高いということになる。
今までの戦いは、ジェイカイザーの低性能さを裕太の操縦技能でカバーして戦っていた。
流石に軍用キャリーフレームとの交戦の際はだいぶ無理があったものの、それも恵まれた武器や環境でなんとか凌げている。
しかし、もしも〈ナイトメア〉と真正面からやりあうような状況となれば、とてもじゃないが為す術もなくやられてしまうだろう。
自らの母親と同じ様になる……いや、それ以上に命を落とす危険性のある状況を裕太は危惧していた。
「でも、大丈夫よぉ。大田原さんたち警察の人たちがいっぱい捜査してるって言うし、すぐに〈ナイトメア〉も、それを盗んだ犯人も捕まるわよ」
そう言いながらぱくっ、とパフェのフルーツを口に運ぶエリィを見ながら、裕太は窓の外に顔を向け、「……そうだといいんだけどな」と言いながら頬杖をついた。
不意に、裕太は背後に大きな気配を感じ、ハッと振り返った。
そこにはエプロンを身に着けた身長が2メートルはあろうかという大男が立っており、丸太のように太い腕でサンドイッチの乗った皿をテーブルに置いた。
「お待たせしました、当店自慢のサンドイッチでごぜぇます」
野太い声で大男はそう言うと、もう片方の手に持っていたヤカンに入っていた水を、裕太たちの
その様子を見ていた美崎が「あっ」と小さい声を出して、男からヤカンを取り上げた。
「もう、お父さん。そういうのは私を呼んでくれればよかったのに」
「ガハハハ! まあそう言うな美崎。俺様もエリィお嬢の意中の相手の顔が見たくてな」
美崎とは似ても似つかない風貌の大男にそう言われ、裕太は少し気恥ずかしくなる。
目をそらしてエリィの方を見ると、彼女もまた頬を赤らめて照れており、大男に声を張り上げていた。
「もう、アトーハおじさん! からかわないでよぉ!」
「ガッハッハ! エリィお嬢もそういう歳になったと思うと、感慨深いのう!」
大男──アトーハはそう言うと、豪快な笑い声を出しながら厨房の方へと去っていった。
「……あれが旧ヘルヴァニアの三軍将のひとり、アトーハ・ノトナーレさんだっけ?」
「そう、今はすっかり退役して喫茶店のコックさんだけどねぇ。今日はいないけど、奥さんのスーグーニおばさんも三軍将の一角で、美崎さんのお母さんだし」
「ってことは……その血を引く美崎さんって、もしかしてすごく強かったり?」
急に裕太に話を振られた美崎は「えっ」と驚いた顔をし、手を顔の前でブンブン振って否定の意を示した。
「そんな、血筋だけで親の能力が子供にそっくり遺伝するんだったら、エリィちゃんはエースパイロットになっちゃうわ」
「え? 銀川の母親って女帝様だろ? 前線で戦ってたりしたのか?」
「あれっ、エリィちゃんから聞いてないの? エリィちゃんのお父さんはあの〈エルフィス〉乗りのエースパイロット、銀川スグルさんなのよ」
「そっかースグルさんなんだー……って、えええーっ!!??」
思わず絶叫する裕太。
なぜなら、スグルという人物はキャリーフレーム乗りなら知らないものはいないほどの超有名人、いや偉人の域に達するほどの存在であるからだ。
彼は、地球とヘルヴァニア帝国の戦いである『半年戦争』において、地球軍の勝利に多大な貢献をしたキャリーフレーム〈エルフィス〉のパイロットである。
元々は軍人ではなかったそうだが、木星圏にある彼の故郷であるコロニーがヘルヴァニア軍の襲撃を受けた際、偶然近くにあった〈エルフィス〉に乗り込み、そのまま初陣でヘルヴァニアの重機動ロボを4機撃墜したらしい。
しかもそのまま、宇宙においてヘルヴァニアのエースと交戦し勝利。
その後はヘルヴァニアへの反抗部隊『カウンター・バンガード』の中核として、終戦までの半年間で重機動ロボ130機を撃墜したという記録の残っているグレートエースパイロットである。
「お、おま……銀川、お前とんでもねえサラブレッドだったんだな!?」
「えっと、でもほらぁ。あたしって操縦へたっぴだし、才能は受け継いで無いみたいよぉ」
「……それもそうだな」
冷静になった裕太は一息ついてアトーハが持ってきたサンドイッチを口に運んだ。
柔らかなパンの感触とシャキシャキのレタス、芳醇な香りのハムが口の中で混ぜ合い、言葉にならないほどの旨味が舌いっぱいに広がっていく。
「……ヤバい美味しさだな、これ」
「でしょでしょ? 笠本くんなら絶対気にいると思ったのよ!」
「美崎さん、コールタールおかわりお願いします」
「おいジュンナ、おまえちったあ遠慮しろよ持ち合わせないんだから」
「大丈夫でしょう。足りない分はマスターが出してくれるでしょうから」
「ちょっとぉ! あなた、あたしのことお財布と思ってない!?」
「思ってますよ」
「あのねぇ!!」
「アハハハ……」
喫茶店の中で、裕太たちのバカらしい会話はそのご一時間は続いたという。
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登場マシン紹介No.13
【ナイトメア】
全高:8.5メートル
重量:9.6トン
クレッセント社が5年前に採算度外視のプロジェクトで建造した、現存するキャリーフレームの中では最高クラスのスペックを持つ機体。
丸腰でも多大な戦果を出せるようにと、マニピュレーターが鋭利な刃物のように鋭くなっており、素早い動きから繰り出される
また、腕には小型機関砲が内蔵されており、遠距離への対応も可能となっている。
5年前、寺沢埠頭にてナイトメアに搭乗した愛国社の構成員が現場にいた作業用キャリーフレームを無差別に襲撃するという事件が発生した。
その取り押さえに向かった裕太の母、笠本由美江の搭乗するクロドーベルのコックピットをナイトメアの腕が貫き、そのことがきっかけで由美江は昏睡状態となった。
なおその際、当時由美江の同僚だった大田原の搭乗したクロドーベルにより右目にあたる部分を警棒で貫かれ、機能停止した。
ワンオフ機の都合上、外装パーツの換えが効かないため、この傷は現在もそのまま残っており左目のセンサーはモノアイタイプに交換されている。
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