第9話「コロニーに鳴く虫の音:後編」


 【1】


「ン……朝か……」


 裕太はまぶた越しに窓から差し込む陽の光を感じ、目をこすりながら重たい頭をゆっくりと枕から持ち上げた。

 大きすぎるベッドに綺麗な調度品が並ぶ風景の中、ファスナーの口が開けっ放しの大きな旅行カバンからは昨日抜いで乱雑に詰め込んだ服の裾がこぼれるように垂れている。


 ふわぁ、と大きなあくびをして壁にかかっているやや小ぶりな時計を目を細めて見ると、時刻はちょうど7時を指していた。

 ふと横を見て、隣のベッドでエリィが静かに寝息を立てているのが目に入り、今が修学旅行2日目ということを思い出す。


 ベッドから降りてカーテンを開き、磨りガラスの窓を横にスライドさせて外を眺めると、スペースコロニー特有の天井にも街がぶら下がっている円形の景色が裕太の眠気半分な意識を徐々に覚醒させた。


『起きたのか、裕太!』


 裕太の背中に、コンセントから伸びる充電ケーブルに刺さったままの携帯電話から、ジェイカイザーが怒り混じりの声をぶつける。

 バイブレーションも併用した訴えから彼がどれほど腹に据えかねているかが手に取るようにわかる。


「おはよう、ジェイカイザー」

『何がおはようだ! 昨日の夜、よくも私を一人部屋に置いて行ってくれたな!!』


 挨拶に対して声を荒げるジェイカイザーにそう言われ、裕太は夕食に行くときからずっと部屋に携帯電話を置きっぱなしにしていたのを思い出した。

 ホバーボードに乗ってのエリィとの散歩から帰ってきたときにはジェイカイザーは寝入っていたので、充電ケーブルだけ刺してそのままベッドに入ったのだった。


「悪かったよ。でもほら、エリィがまだ寝てるんだからあまり大声出すなよ」

『ええい、この埋め合わせは今日してもらうからな』

「わかったよ。できる範囲でなら何か──」

「ああんっ♥ ダメよ笠本くん……お尻はあたしたちにはまだ早いわよぉ……♥ むにゃむにゃ」

「…………」


 エリィが発したとんでもない寝言を聞いて、裕太は慌ててエリィのベッドのもとへと向かい無言で掛け布団ぶとんをひっぺがす。

 布団ふとんを奪われたエリィは寒さに身を捩らせ、やがて半目を開けながらゆっくりと起き上がった。


「あ、おはよぅ笠本くーん」

「銀川お前、寝言でなんてこと言うんだよ!」

「寝言ぉ? うーん覚えてないわぁ。……でも、夢の中で笠本くんにとっても気持ちのいいことされちゃったかなぁ♥」

『なんだと! 裕太、不純異性交遊はもっと年齢を重ねてからと……』

「夢の中の話だろ! 俺は何もやってねえ、無実だからな!!」


 絶叫で否定をした裕太は息を切らせながら、自分のカバンに手を入れ今日着る分の衣服を取り出した。

 そのまま立ち上がりトイレに向かう裕太を、エリィが呼び止める。


「笠本くん、着替え持ってどこに行くのぉ?」

「トイレの中で着替えるんだよ。お前もすぐにパジャマ脱ぐだろ」

「あら、笠本くんにだったらあたしは全然見られてもいいんだけどぉ♥ 清らかなな乙女の生着替えよぉ、うふふっ!」

『裕太! 今こそエリィ殿とフラグを立てるときだ!』

「お前も焚き付けるなよ! ったく……馬鹿なこと言ってないでさっさと着替えるぞ」

「はぁい」


 エリィの生返事を聞き流しながら、裕太はトイレの鍵をかけてせっせとパジャマを脱ぎ始めた。



 ※ ※ ※



「よし、と。おーい銀川、着替え終わったか?」

「もうちょっとよぉー」

「早くしろよー終わるまで俺トイレから出られないんだから」

「女の子は準備に時間がかかるのよぉ」

「口より手を動かせ手を」


 浴室と隣接したやや広めのトイレの中で、裕太はため息を吐きながら蓋を閉じたままの便座に座り、携帯電話の中に入っている修学旅行の電子しおりを読み返した。


 ──修学旅行というのは通常ならば先生を先導に従って集団で行動し、やれ歴史的な遺産だのやれ観光名所だのを巡って長々とした説明を聞く、といった流れで進むものである。

 しかし軽部先生の意向で、今回の修学旅行は移動を除くと自由行動の時間が大半を占めており、生徒たちは好きなグループで行動することが許された。

 今日の行動予定スケジュールは、このコロニーに滞在する夕方いっぱいまで自由時間である。

 その後は月行きのシャトルに乗らなきゃいけないので、このコロニーで見学したいところがある場合は急がなければならない。

 エリィが行きたがっていたキャリーフレーム博物館を見た後、時間に余裕があればその近くで行われるという祭りで屋台でも覗こうか……と考えていると、唐突にジェイカイザーが声を張り上げ叫びだす。


『今だ、裕太! 扉を開けて外に出るのだ!』

「おいジェイカイザー、まだエリィが着替え途中だろうが」

『甘いな裕太。ここでラッキースケベめいた展開を行うことによって、エリィ殿と急接近だ!!』

「アホか、このエロゲ脳め。適当ぶっこいてんじゃねえよ、現実でそれやったら犯罪で即刻豚箱行きだ」

『アニメとかだとよくある事象なのだが……』


 残念そうに声のトーンを下げるジェイカイザーのアイコンに裕太が白い目線を送っていると、トイレの扉を外からコンコンと叩く音が聞こえた。


「入ってるぞー」

「違うでしょ、着替え終わったの! ボケてないで出てきなさいよぉ!」


 エリィに促され、裕太が扉の鍵を開けてトイレから出ると、そこにはロングスカートのおしゃれなワンピースに身を包んだエリィの姿があった。

 その上に来た薄手のコートの袖の先を指で握るように抑えながら、彼女はその場でくるりと横に一回転し、「似合ってる?」と裕太に機嫌の良さそうな明るい声で尋ねた。


「似合ってる似合ってる。綺麗だと思うよ」

「むー……、なによぉそのテンプレな誉め言葉……。なんか、もっとこう、あたしが喜ぶようなロマンチックなこと言えないのぉ?」

「そういうのは進次郎にでも求めてくれ。……そうだ、進次郎大丈夫かな」


 裕太は昨日起こった出来事を思い返した。

 サツキが持っていた白いボールから人の頭くらいの大きさの虫が生まれ、ツクダニと名付けられた。

 ツクダニはサツキに非常に懐き、おとなしかったのだがエリィがツクダニと一緒の部屋で寝るのを断固拒否したがために、エリィと進次郎が泊まる部屋を入れ替え、その結果今朝に至ったわけである。

 あの虫に進次郎がパニック映画めいたことをされてる可能性もゼロではないが、サツキが一緒だし大丈夫と思いつつ、裕太はエリィと共に階段を降り、進次郎達の泊まっている部屋の前まで来て呼び鈴を鳴らした。

 すると返事はなく、無言で鍵が開く音だけがドアから聞こえてきた。

 裕太とエリィは顔を見合わせ頷いてから、扉を開いて中へと足を踏み入れた。




 【2】


「あ! おふたりとも、おはようございます! 昨晩はお楽しみでしたか?」


 部屋に入ったふたりを、薄手のパジャマ姿なサツキがベッドの上から飛び切りの笑顔と意味深な挨拶で出迎えた。

 部屋の中に足を踏み入れながら、サツキの妙な挨拶についてツッコミを入れる。


「何がお楽しみだと思ったんだよ」

「それはもちろん! 男女ふたりがひとつ屋根の下ですること。つまり愛し合うことです!」

「昨日は散歩から帰って、そのまま寝ちゃったのよぉ。残念だったわねぇ、ね、笠本くん♥」

「ね? じゃねーよ! ねじゃ!! はぁ……朝っぱらから疲れさせるなよ……」


 頬を紅に染めながらクネクネするエリィに辛辣な言葉を投げかけた裕太は、部屋の中をキョロキョロと見回し進次郎とツクダニの姿を探した。

 レイアウトは裕太たちのいた部屋と変わらない中で、きれいに閉じられたサツキと進次郎の旅行カバンが壁に立てかけられている。

 そのまま部屋の中心に立って入り口からは陰になっている場所に視線を動かすと、部屋の隅に置かれた椅子に、机の上のノートパソコンに突っ伏すようにして、まるで燃え尽きたボクシング選手のようなオーラを醸し出しながら座る進次郎の姿を発見した。


「おい進次郎、大丈夫かしっかりしろ」

『ッハ……!こ、これは…し、死んでる……!』


「い、いや、僕はまだ生きてるからな……」


 静かに顔を上げた進次郎の、深い隈が刻まれた表情を見てすくみ上がる裕太。

 エリィも軽く「ヒッ」とつぶやきながら怯えたような顔つきになり、咄嗟にサツキを問い詰め始めた。


「金海さん、岸辺くんに何があったのぉ!? あの虫が何かやったの?」

「ええ、まぁ。ツクダニ、夜に目が冷めたみたいで部屋を飛び回った後、進次郎さんのベッドの上で休憩してたんですって」

「えぇ……」


 進次郎にしてみれば、響く羽音に目を覚ますと、眼前に目を爛々と光らせたツクダニがいたということになる。

 そりゃあ眠れなかったのも無理はないなと裕太は理解し、進次郎に同情しつつも部屋を変えたことでその犠牲者がエリィにならなかったことに半分ホッとした。


「裕太……僕は顔を洗ってくるよ……」

「行ってこい進次郎。金海さん、ツクダニは?」

「上ですよ!」

「上? うぇっ……」


 裕太が見上げると、部屋の天井にツクダニがへばりついていた。

 サツキが一言「ツクダニ」と呼ぶと、ツクダニはブーンと羽音を出しながら飛び、サツキの頭の上にまるで帽子のようにピトッと停まった。


「それでは、朝食を食べに行きましょう!」

「その格好で行くのか……」

「あ、それもそうですね!」


 サツキはそう言うと、その場でくるりと1回転し、身にまとう服をパジャマからおしゃれな私服へと変化させた。


『目の前で女の子が着替えたのになんだろうこの物足りなさは』

「黙ってろ、ジェイカイザー」


 にこやかに微笑むサツキをよそに、裕太はジェイカイザーに辛辣な言葉を飛ばした。



 ※ ※ ※



 顔を洗い終わった進次郎をさっさと着替えさせた裕太達は、そのまま一階にある食堂に行くため階段へと向かった。


「ふわぁ……」

「おい進次郎、気をつけろよ」

「何を気をつけるって……わわっ!」

『進次郎どの!』


 階段を降りている途中で、突然進次郎が足を踏み外す。

 一瞬、後ろのめりに宙に浮き、踊り場へと落下する進次郎を見て裕太達は声にならない声を出した。

 と、同時にサツキの頭の上に乗っていたツクダニがすごいスピードで進次郎のもとへと飛んでいく。


「あだっ!?」

「ギュミッ!」


 踊り場の床に尻を打ち付け痛がる進次郎と、その進次郎の頭が階段の一段目の上にいるツクダニに乗っている。

 間一髪、ツクダニがクッション代わりになってくれたのか、進次郎は尻もちをつくだけで済んだようだった。


「岸辺くん、大丈夫?」

「いててて、こいつが助けてくれたのか……?」


 進次郎にそっと撫でられ、ツクダニは嬉しそうに「ギュミッ」と鳴いた。


『むむむっ、なんだか私はツクダニが可愛く見えてきたぞ』

「ついにバグったかジェイカイザー。いつかはどうかなると思っていたが」

『勝手に私をバグらせるな! というかバグらないぞ私は!』




 【3】


 進次郎のケガも尻の軽い打撲だけで済んだので、裕太たちは軽く朝食を済ませたあと、そのままホテルから外に出かけた。

 昨日から借りたままの2脚バイクに乗り、4人と1匹はキャリーフレーム博物館を目差してアクセルを入れた。

 コロニーの中央を通る人口太陽の心地よい日差しを受けながら、裕太は2脚バイクの後部座席で揺られながら携帯電話の地図アプリを操作する。


「えーっと……次の交差点を左だな」

「はぁーい。それにしても博物館って結構距離あるのねぇ」

『裕太、もしかして博物館とは真上に見えるあれのことか?』

「真上?」


 ジェイカイザーに言われて裕太が上を見上げると、天井にぶら下がるように綺麗な白い壁の大きい建物が視界に入った。

 その建物から続く道を目で追いつつ地図と見比べると、すぐにジェイカイザーの言う事が間違いでないことに気がついた。


「……さすが、スペースコロニー。目的地が天井にぶら下がってるとは驚きだなぁ」

「んもう、笠本くんってばいちいち反応が田舎者なんだからぁ。今から地面に沿ってぐるっと走ってあそこまで行くんだからねぇ」

「そうだぞ裕太。なにせ、コロニーの中っていうのは目に見える面の全部が土地なんだからな」


 スペースコロニーは、遠心力と人工重力によって外側が下になるようになっている。

 そのため、面に沿って移動すればいずれは天井として見えていたところに立つことも可能なのである。

 そんなことを考えていると、裕太は周囲の通行人から何やら視線を感じ始めた。


「……なあ進次郎。なんか俺たち見られてないか?」

『私のセンサーからは悪意のようなものは感じられないのだが』

「だって裕太、サツキちゃんの頭が……ねぇ?」


 進次郎に言われて2脚バイクの後部座席からハテナ、と首をかしげるサツキ。

 彼女の頭の上では器用にサツキの頭を掴んだまま風を受けるツクダニの姿。

 視線を集めている元凶は、気持ちよさそうにギュミギュミ歌っているようにも聞こえる鳴き声を出していた。


「私の頭? 金髪なのって珍しいんでしょうか?」

「違う違う、ツクダニが乗っているのが不自然なんだよ」

「どうしてですか? こんなにカワイイのに……」


 裕太はガクッとズッコケそうになったが、よく考えてみればサツキは人間に擬態をしている水金族。

 一件天然な反応も、人間の一般的な価値観を知らないからなのかもしれない。


「えっと、ペットを外に連れるときはほら。キャリーバッグとかに入れないと。電車とかに犬持ち込でいる人を見たことくらいあるだろ?」

「なるほど、それもそうですね! それなら……」


 サツキがそう言って目を瞑ると、サツキの金色の髪がフワリとツクダニを包むように伸び、やがてその髪は犬や猫を持ち運ぶ用のキャリーバッグに変化した。

 頭の上に成形されたキャリーバッグを手に持ち、裕太に向かって微笑むサツキ。


「これで大丈夫ですね!」

「そ、そうだな……」


 裕太は言葉を失いながら、(どこでも3Dプリンターだな)と心の中でつぶやいた。




 【4】


「それでは、ごゆっくりお楽しみください」


 大理石の敷き詰められた高級感あふれる博物館の入り口で、入館料の支払いを済ませ受付の女性のお辞儀を受けた裕太たちは、そのまま受付の脇を抜けて広大な建物の奥へと足を踏み入れた。

 白亜の壁に囲まれた細い通路を進み抜けると、やがて天井の吹き抜けた大広間へとたどり着く。

 そこに立っている巨大な物体を見て、途端にエリィが目を輝かせてその場でピョンピョンと子供のようにはしゃぎした。


「うわぁー! 見て見て笠本くん! すべてのキャリーフレームのご先祖様の〈コンテナキャリア〉よぉ! あそこにはJIO社の一番最初の試作機〈プロトザンク〉、あっちには世界初の民間機〈ガブリン〉も!」

「おい銀川、ちょっと待てよ!」

「待てなぁい!」


 早口にまくし立てるエリィに圧倒されながら、早足で進む彼女を追う裕太たち。

 展示されている数々のキャリーフレームが立ち並ぶ館内を、見渡すように左右に視線を移しながら通り過ぎていく。


「おい裕太、僕らはじっくり見て回りたいから銀川さんのことは頼んだぞ」

「おう」


 進次郎とサツキを置いてエリィを追いかける裕太は、やがてひとつのキャリーフレームの前で立ち止まったエリィにやっとのことで追いついた。


「おい銀川、そんなに急がなくても……」

「これ、お父様の……!」


 呆けた顔でそう呟きながらエリィが見上げているキャリーフレームを、裕太も見上げる。

 全体に白の塗装が程され、頭部には意思を秘めた緑色の二つのカメラアイが覗き、両端にはまるで長い耳のように二本のアンテナが伸びている。

 国民的ロボットアニメの主役機のような風貌のキャリーフレームを見ながら、裕太はエリィの妙な反応が気になった。


「お父様? 銀川の親父がどうかしたのか?」


 裕太がそう尋ねると、エリィはハッとしたような表情をした後、慌ててごまかすように両手を振りながら口をパクパクとさせる。


「え、えっとね! お父様が好きなキャリーフレームだったなぁって思ったのよ! ほら、あたしってお父様の影響でキャリーフレーム好きになったんだし!」

「本当かぁ? でも、このキャリーフレームだったら俺でも知ってるぞ。こいつは確か……」

「ヘルヴァニアと地球の戦争、半年戦争において地球軍の勝利に多大な貢献をしたっちゅうキャリーフレーム〈エルフィス〉やな」


 裕太が始めようとした説明を奪うように口を挟んできたのは、奥の方からゆっくりと歩いてきた内宮だった。

 内宮はドヤ顔のまま、ゆったりとした歩調で〈エルフィス〉の脇にある階段を靴音を立てながら降りつつ、説明を続ける。


「確か、なんちゃらスグルっちゅう木星出身の若者わかもんが、こいつでぎょーさんヘルヴァニアの重機動ロボ落としたそうやで」

「それくらい俺でも知ってるよ。ノルマでもあるのかってくらい定期的にドキュメンタリー番組で取り上げられてるからな。それよりも内宮、お前一人で博物館に来たのか? 寂しいやつだなあ」

「そないな悲しゅうことするかアホゥ。入り口で親父はんにうてな、おもろい話いろいろ聞かしてもろとったんやで」

「親父さん?」


 首を傾げながら内宮の背後に現れた人物の影に裕太は、やや前かがみの体勢で目を凝らす。

 〈エルフィス〉に隠れるように立っているその人物を見ようと、エリィも額に手のひらを立てて覗き込む。

 もったいぶって出てこない行動と、内宮の言った言葉の意味を合わせて考えると、裕太の頭にはすぐにその人物が誰かの答えが浮かび、途端に呆れ顔になった。


「何やってるんだよ、父さん」

「笠本くんのお父様?」


「いやーはっはっはっ……本当は階段を飛び降りて格好よく登場しようと思っていたのだがなあ」


 白髪混じりの髪の無精髭を生やした裕太の父、笠本信夫が乾いた笑いを浮かべながらトントンと階段を降りるのを見て、裕太は静かに「歳考えろよ……」と呟いた。


「君がうちの裕太の友達かな? いつも息子がお世話になってます」

「いえいえこちらこそ、聡明なご子息にはお世話になっています」

「銀川、お前は俺の何なんだ」


 互いに深々と頭を下げ合い挨拶をする父とエリィの姿に、思わずツッコミを入れる。

 裕太の父は元々専業主夫をやっていたのだが、稼ぎ頭であった裕太の母が昏睡状態になってからは知り合いのコネを使って江草重工で働き始めた。そして現在はこのコロニー「アトランタ」へと長期出張中であり、博物館の近くにある工場で働いているはずなのだが。


「……んで、父さんはこんなところで何をしてるんだよ」

「いやーはっはっはっ! 今日は仕事が休みなものでね、そういえば今日はお前がここに来ているなと思ってここで待ち伏せていたのだよ。聞けばこのお嬢さんはお前の友人だそうじゃないか」


 内宮の方を見ながらそう言う父の姿に、裕太は思わず言葉を濁らせた。


「うーん、そいつは友達というか知り合いというか」

「失礼なやっちゃな、友達でもええやないか」

「はっはっは、ところでそちらの銀髪のお嬢さんは?」


 裕太の父親の言葉に、待ってましたとばかりにエリィは裕太の腕に抱きつくように飛びついて、嬉しそうな声を上げた。


「あたしはぁ、笠本くんのこいびムググ……」

「友達だよ、友達!」


 父親に恋人と紹介するのが気恥ずかしくなって、裕太はエリィの口を手でふさいで慌てて訂正した。

 恋人というのを必死に否定されたからか、エリィは頬を膨らませて抗議の意を唱える。

 裕太はとっさにエリィの耳元に「親に色々紹介するのはもっと後でも遅くないって」と囁くと、納得してくれたようで微笑みを返してくれた。


「なーなー、笠本の親父はん。うちらフレーム乗りとしては、〈エルフィス〉動かすんて憧れみたいなものやなんやけど、こいつって動かすことできへんか?」

「おい内宮、常識で考えて展示品に乗れるわけが……」

「いいや、動かすことは可能だよ」

「マジかよ父さん」

「一年に何度か、祭りのときにパフォーマンスとしてこの〈エルフィス〉で模擬戦をするんだ。明日からその祭りの日だから、実はもう燃料入ってるんだよねえ」

「へーえ」


 生返事をしながら、かつての英雄キャリーフレームを裕太はじっと見上げた。




 【5】


 同じ頃、進次郎は博物館の出口近くにあった休憩スペースで、サツキと一緒に長椅子に座り、自動販売機で買ったコーラの缶を開けて一息ついていた。

 白く斜めった天井に空いた、四角い天窓から降り注ぐ暖かな人口太陽の日差しを受けて、サツキの頭の上に乗ったツクダニがギュミギュミとゆったりした声を出してくつろいでいる。

 知識というものは、それを得て有効に使える者とそうでもない者がいる。

 エリィのようにキャリーフレームマニアでもなければ、裕太のようにキャリーフレーム相手に戦うわけでもない進次郎は、この博物館で得れる知識は有効に使えないものであった。

 それゆえに、S字に入り組んだ見学順路を直進するように素通りしていき、最後に裕太たちがたどり着くであろうこの休憩スペースで彼らの到着を待つことにしたのだ。


「見てください進次郎さん! ツクダニが歌ってますよ! かわいいですね!」

「あ、ああ……」


 サツキの膝の上で左右に身体を揺らしながら楽しげにハミングするツクダニを見て、引きつった笑みを送ることしかできない進次郎。

 先程階段の転落から救ってくれたとはいえ、ゴツゴツした真緑のテントウムシめいたフォルムには抵抗感が強い。

 そんなことを考えていると、ツクダニが歌うのをやめて短い足を伸ばしながら訴えかけるようにギュミギュミと鳴き始めた。


「進次郎さん、この子あのハンバーガーを食べたいみたいです」

「ああ、あの珍しい自販機バーガーの……って、サツキちゃんはこいつの言葉がわかるのか?」

「はい! 水金族は脳の言語認識部位の構造を変化させて多様な言語を理解できるようになりますから!」


 ドヤ顔でそう言いながらツクダニを抱きかかえ、ハンバーガーの自動販売機に向かうサツキを見ながら、進次郎はそのぶっ飛んだ理論に頭を抱えた。

 ガコンという音とともにゲンコツより少し大きいくらいのハンバーガーが紙にくるまれて取り出し口に落ちる。

 そのハンバーガーを手に取ったサツキは包み紙から中身を取り出し、ツクダニの口元へと持っていって食べさせた。

 そんな光景を眺めていると、進次郎は背後に人の気配を感じハッと上半身ごと後ろに振り向いた。


「お前は……確か軌道エレベーターで会った……えーと誰だっけ?」

「ヨハンだよヨハン! 見覚えのある顔がいたと思えば、何をやってるんだ?」

「なんて言えばいいのかな、あれは……」

「あっ! ヨハンさんヨハンさん!」


 ヨハンの存在に気づいたサツキが、両手に抱いたツクダニを見せるように押し付けた。

 急に巨大な虫を見せつけられ、ヨハンは引きつった顔を青くしながら素早いバックステップで距離を取る。


「なななな、何だいきなり! なんだそれは!?」

「ほら! ヨハンさんがくれた卵から生まれたツクダニです!」

「卵!? あれって卵だったのか!? こらこら、わかったから押し付けるな! 近付けないでくれぇぇぇ!」


 壁を背にして声を震わせるヨハンを追い詰めるように、サツキがじりじりと近寄っていくのが面白くて、進次郎は思わず苦笑した。

 しょんぼりした表情でサツキが離れると、ヨハンはゼェゼェと息を切らせながら前かがみになって手を両膝につける。


「まったく……やっとあの自分勝手な訛り細目女から開放されたと思ったら……君たちと出会ってからというもの、僕は災難続きだよ」

「ほーーーん、自分勝手な訛り細目女でえらいすまんかったなぁ……!」


 ドスの利いた低い声が聞こえた方に三人が一斉に振り向くと、そこには仁王立ちで青筋を立てる内宮がいた。




 【6】


「ええんか? あんさんの隠蔽している女絡みの失態のあれやらこれやら、エレベーターガードのお偉いにばら撒いたってええんやで。なあヨハンはん?」

「ひえええ! 脅迫反対! 恐喝反対ぃぃぃ!」

「自分からうちに教えといてよく言うわ。せやなー、そこのサイダー1本で手を打とうやないか」

「払わせていただきましゅぅぅぅ!」

「うんうん、素直なことはええこっちゃで~~」


 ドS全開の内宮と絶賛キャラ崩壊中のヨハンによる壁際コントを尻目に、裕太は進次郎との合流を果たしハイタッチをする。


「よお裕太、意外と早かったな。その人は?」

「……俺の父さんだよ」

「ほうほう。これはこれは裕太くんのお父上、僕は岸辺進次郎と申すものです。よろしく」


 まるで貴族がするような、片腕を前に出しながらのステップを交えた自己紹介に、若干引き気味の裕太。

 一方裕太の父も深々と頭を下げて息子の友人へと誠実な礼を返す。


「エリィさん! ほら見てください! ツクダニ大きくなってません?」

「ええっ、わ、わからないわよぉ!?」

「よく見てください! こことか、こことか!」

「サツキちゃん、ちょっと落ち着こう。どうどう」


 エリィにツクダニを見せつけるサツキを抑える進次郎。

 その傍らでは自動販売機の前でガックリと肩を落とすヨハンとサイダーを飲みながらご満悦の表情をする内宮。

 奇妙な光景の中取り残された裕太は、これはいい機会だと、隣で若者の青春劇を微笑みながら見つめる父に、この間見舞いに行ったときに確認した、変わらぬ母の容態をそっと耳打ちする。


「……そうか、母さんはまだ目覚めないか」

「医者が言うには、脳や臓器は完全に治ってるけれど、なぜか意識だけが戻らないままなんだって」

「そうか……裕太には苦労をかけさせるなぁ。父さんの仕送りだけじゃ生活も大変だろう」

「いや、そうでもない。今俺の貯金口座に100万くらい貯まってるし」

「どうしてそんなに? まさかフレームファイトを再開したのか?」

「うんや、これのおかげだよ」


 と、裕太は胸ポケットの財布から、薄い銅板のようにも見えなくない民間防衛許可証を取り出して見せた。


「ほう。大田原さんから聞いてはいたが……。裕太、いつの間にキャリーフレームを買ったんだ?」

「いや、買ったんじゃなくてなんというか、拾ったというか」

『出会ったのだ! なあ裕太!』

「!?」

「あちゃー……」


 不意に出しゃばったジェイカイザーに、頭を抱える裕太。

 こうなった以上、父親に対しての説明責任が発生するからだ。

 やむを得ず「えーと」と前置きをして、これまでの経緯を話す。

 すると、父はハッハッハと小さな声で笑った。


「……何がおかしいんだよ」

「いやぁな、裕太も母さんの子だなあと思ってな! 血は争えないなハッハッハ」

『いやはやまったく、ハッハッハ』

「おめーわからないくせに釣られ笑いするんじゃねー」


 何が言いたいのかイマイチわからない親父とジェイカイザーに冷ややかな目線を送りため息をつく。

 修学旅行で、友達と博物館に来て、なんで親父が笑っているのか。

 裕太はこの奇妙な状況をなんとかしてくれと心の中でつぶやいたが、その願いは最も理想からかけ離れた形で実現するのだった。




 【7】


 異常を最初に伝えたのは緊急事態を示す低く長いサイレンの音だった。

 館内に警報が鳴り、2,3度地面が揺れるような感覚に気づいた頃には、ひっそりとしていた博物館は決して多くない見学者達のざわめきに包まれ、にわかに不穏な空気が広がっていく。


「この警報、隕石の衝突のものでもコロニー内部の事故のものでもないぞ……!」


 低く真剣な声で進次郎が叫ぶと、何か巨大なものが衝突するような重低音と共に一際大きく建物が揺れ、天井からパラパラと破片のようなものが落下する。

 このままではこの博物館が倒壊するかもしれない、と裕太の父が叫ぶとその場にいた者たちは全員、一斉に博物館裏手に通じる非常用出口へと急ぎ走った。


「な、何だこりゃあ……!」


 建物の外に出て目の前に広がる光景に思わず、裕太の口から声がこぼれる。

 人工太陽が通っているコロニーの中心部分の、いわば空の部分をコロニーアーミィの可変キャリーフレーム〈ウィング〉が戦闘機形態で飛び回り、時折人型形態に変形しては手に持ったライフルを空中に浮く「何か」に向かって放っていた。

 そんな光景が一箇所だけではなく、視界の至る所で見られるのだ。

 やがて裕太たちの目の前を4輪のコロニー内用戦車〈ヴァイソン〉が低いエンジン音を轟かせながらレンガ造りの塀を突き抜けて通り過ぎていった。

 その動きを目で追うと、〈ヴァイソン〉は博物館前の広場でブレーキ音を鳴らしながら停止し、砲身をグルンと裕太たちの方へと向ける。


「お、おい! 俺達は違……」


 そう言い終わらない内に〈ヴァイソン〉の80ミリの大砲が一瞬輝き、直後に花火が爆発するような音とともに光り輝くプラズマ弾頭を発射した。

 青白く輝く弾丸は咄嗟に伏せた裕太たちの遥か頭上を通り過ぎ、裕太たちの背後にいた「何か」に直撃、爆発を起こした。


「キシャァァァァッ」


 金切り声のような甲高い声を響かせながら力なく崩れるそれは、まるでツクダニの色を変えてをそのまま巨大化させたような、高さ4メートルはあろうかという巨大な虫だった。

 見ただけでザラザラしていることがわかるような模様をした外殻の隙間から伸びる6本の脚は柱のように太く、体表面から火花を散らせながら絶命しつつあるとわかっていても恐怖で足がすくみそうになる。


「笠本はん、前からぎょーさん来おったで!」


 内宮の声を聞いて逆方向へ向き直ると、先程の虫と同じものが3匹、空中から〈ヴァイソン〉を踏みつけるように着地した。

 搭乗員と思われるコロニーアーミィの隊員が逃げるように脱出すると、虫達を巻き込むように〈ヴァイソン〉が大爆発を起こす。


「まるでSF映画とかに出てくる宇宙怪獣じゃないか!」

「いえ、怪獣というより虫っぽいからぁ……怪虫?」

「呑気なこと言ってる場合か! 早くシェルターに逃げ込まないと!」

「えっと、ここから一番近いシェルターは……14番シェルター、こっちだ!」


 裕太の父がタブレット片手に指差し、裕太たちを先導し走り出す。

 しかしその進行方向を塞ぐように、宇宙怪虫が1匹砂煙を上げながら着地し、「キュイイイン」と甲高い鳴き声で威嚇をした。

 その時、ツクダニを抱えたままのサツキが別方向に走り出すと、宇宙怪虫は裕太たちのことなど気にしていないように身体全体をサツキの方へと向け、背中の半透明の翅を広げ震わせ始める。


「飛ぶ!?」

「飛ばすかよ! どっせぇぇい!」


 威勢のいいヨハンの声とともに、脇道から〈ザンク〉が宇宙怪虫にタックルを決め、その身体をふっ飛ばした。

 そして起き上がり体勢を立て直そうとする宇宙怪虫にヨハン機はライフルを向けて20ミリの弾丸を乾いた音とともに数発放ち、宇宙怪虫の外殻を吹き飛ばす。


「ヨハン! そんなものどっから!?」

「へへ、実は車代わりにちょっと使っててな」

「……横領じゃねえか。あれ、そういえば内宮の姿がないような」

「それより、サツキちゃん大丈夫か!」


 ツクダニを守るように倒れ込むサツキの元へ、進次郎が走り寄る。

 そのまま彼女の身体を抱き起こし「早く逃げよう」と声をかけると、サツキはその場で立ち止まって首を横に振った。


「サツキちゃん、どうして!」

「あの虫達……ツクダニを狙っているんです! この子は私が守ってあげないと!」


 サツキが大声で主張をすると、その会話を聞いていたらしいヨハンが〈ザンク〉のコックピット越しに声を出した。


「どうやらその娘の言ってることは本当のようだ。レーダーに映る巨大生物の連中、アーミィの攻撃を受けてるから一見するとバラバラに動いてるみたいだが、目的地はここのようだ!」


 このコロニーを襲っている宇宙怪虫の全てがサツキ、いやツクダニに向かっているということは、迂闊にシェルターへと避難すればそのシェルターが宇宙怪虫の集中攻撃を受けることになる。

 宇宙怪虫は確かに巨大で凶暴だが、キャリーフレームで難なく倒せる程度の相手。

 無限に湧いてくるわけではないであろうから、いっそのことここで待ち構えて各個撃破をしていったほうがいいのではと裕太は考えた。


「よし、ここであの虫連中を迎撃するぞ! 来い、ジェイカイザー!!」

『おう!!』


 裕太がいつものように携帯電話を空高く掲げ叫ぶ。

 しかし、何秒たってもジェイカイザーどころか雰囲気出しの立体映像魔法陣すら現れる気配は見られなかった。


「……あれ、おかしいな?」

「ちょっと笠本くん! ジェイカイザーって研究所からじゃないとワープできないんじゃなかったっけ?」

「あっ!!」


 裕太はここに来て、いつも当たり前に満たしていたがゆえに忘れていたジェイカイザー召喚の前提条件を思い出した。

 ジェイカイザーをワープで呼び出すには、その本体がジェイカイザーが元いた研究所に格納されている必要がある。

 ワープをするのに必要な粒子を散布する機構がその研究所にしか存在しないからだと、以前説明を受けていたのを忘れていた。

 現在、ジェイカイザーの本体は軌道エレベーターで召喚した後、このコロニーの宇宙港まで運んでもらって、それっきり。


「肝心な時に役に立たねえんだからこいつはぁぁぁ!」

『私のせいにするな! 元はと言えば裕太が私の本体をぞんざいにあつかうから!』

「喧嘩してる場合じゃないでしょお! どうする? 取りに行く!?」

「取りに行くったって、ヨハンだけじゃ……」


 そうこうしている内にまたも宇宙怪虫が空から降り立ち、サツキに向かって歩を進め始める。

 サツキを守るように、裕太の父と進次郎は彼女の前に出て両手を左右に伸ばした。


「裕太の親父さん、巻き込んじゃってすみません」

「いやいや。あの子の友達を守るくらいやらないと、妻に顔向けができなくなるからな。……といっても、武器のひとつもないのが不安だが」

「武器ならありますよ!」


 明るい声でサツキがそう言いながら、2人に拳銃を手渡した。

 裕太の父は首を傾げながら不思議そうな顔で拳銃の出処を聞こうとしたが、進次郎が「状況が状況なので」と答えを濁らせた。

 ヨハンの〈ザンク〉が宇宙怪虫にライフルを向けるが、ザンクの腕マニピュレーターを震わせるばかりで引き金を引こうとしなかった。


「ヨハン! 何をやってる!」

「馬鹿か笠本! いま撃ったらあの子に当たってしまう!」


「くそっ! 喰らえ、怪獣め!」


 裕太の父が手に持った拳銃で宇宙怪虫に向けて発砲するが、強固な外殻に弾丸は阻まれ、キンキンと弾かれる音が虚しく響き渡る。

 狙いも定めずに適当に撃っているだったが、その内の一発が弾かれること無く宇宙怪虫へと食い込み、その動きを一瞬だけ止めることに成功した。


「お三方、そこで頭を下げときや!」


 突然、博物館の壁を突き破って内宮の声とともに〈エルフィス〉が現れ、そのまま宇宙怪虫をボールみたいに蹴っ飛ばした。

 遠くでひっくり返った宇宙怪虫に、ヨハンが銃弾を打ち込みとどめを刺す。


「どうや、うちかて機体があればこれくらいできるんやで!」

「って言うけど、それって展示品のやつじゃねえのか?」

「ま、まあ細かいことは気ぃせんと。緊急避難っちゅうやっちゃ! そらそうと笠本はん、ここはひとまずうちらに任せて、あんさんも早うあのナンタラキングみたいなロボット取りに行かんかい!」

『なんたらキングではない、ジェイカイザーだ!!』

「言ってる場合か、行くぞ!」


 内宮に促され、裕太は黙ってコクリと頷き、エリィがいつの間にか用意していた2脚バイクの後部座席に乗り込んだ。




 【8】


 裕太とエリィがこの場を去った後、サツキを守るように背中合わせで宇宙怪虫を迎撃するヨハンの〈ザンク〉と内宮の〈エルフィス〉。

 丸腰だった〈エルフィス〉はヨハン機から渡された対CFキャリーフレームライフルを構え、〈ザンク〉は手に持ったビームセイバーを光らせる。


「内宮さん、後方に2匹!」

「見えとる見えとる! 落ちとれカトンボが!」


 上空から接近してくる宇宙怪虫を、内宮の〈エルフィス〉が正確な狙いでライフルを斉射し、近づく前に地へと落とした。

 今度はヨハンの前方から別の宇宙怪虫が飛来し、ヨハン機へと攻撃を仕掛けようとするが細かくバーニアを吹かせたサイドステップからのビームセイバーによる一撃でその宇宙怪虫を両断した。


「ヨハン、やるやないか」

「君もな、内宮さん。……性懲りもなく来たぞ、今度は1匹だ」

「こっちのレーダーにも映っとるけど、なーんかでかないか?」

「……気のせいじゃないぞ、本当にデカい!」


 反応の来る方へと向きを変えて武器を構えると、先程までの宇宙怪虫とは違う、巨大なカマキリのようなシルエットの巨大怪虫がコロニーの床に足を食い込ませながら降り立った。


「なんやさっきまでのザコとは雰囲気がちゃうけど、先手必勝や!」


 そう叫びながら内宮は〈エルフィス〉の手に持つライフルを巨大怪虫に向けて発射した。

 しかし、放たれた弾丸は巨大怪虫に届く前に何かにぶつかるように跳ね、博物館の壁に巨大な弾痕を描いた。

 負けじとヨハンが〈ザンク〉を踏み込ませ、縦一文字にビームセイバーを振り下ろそうとするが、やはり何か壁のようなものに阻まれて光の刃は目標には届かなかった。


「まさかこいつ……」

「バリアーみたいなもん持っとるんか……!?」

「お二人さん! ツクダニが何か教えようとしています! えーと……あのカマキリさんは、どうやら敵の親玉。女王虫みたいです!」



 ※ ※ ※



「よし、意外とあっさり着いたな」

「そりゃあ、みんな避難しちゃってるでしょうから……」


 エリィの操縦する2脚バイクで宇宙港へとたどり着いた裕太は、避難が終わって人気ひとけのない格納庫の中を記憶を頼りにジェイカイザーの本体のもとへと走り出す。

 開きっぱなしになっていた扉を数枚抜けると、携帯電話からチープな電子音がピピピと鳴り響き、暗闇の中でジェイカイザーの目がキラリと光を灯らせた。


「行くぞ、ジェイカイザー! 発進だ!」

『おう!!』


 その場で屈みコックピットハッチを開いたジェイカイザーに駆け寄り、タラップとなったハッチを駆け上って裕太はパイロットシートに腰掛けた。

 そして左右の操縦レバーに両手を乗せ、ビリっと来る神経接続の感触に身を震わせる。

 と同時に、エリィもコックピットに上がり、シート脇の空洞に細い体を入り込ませた。


「おい、降りろよ!」

「あーら、あたしをこんなところで一人置いて行くつもりかしらぁ?」

「……しょうがねーなぁ。操縦の邪魔だけはするなよ!」

「はーい!」

『行くぞ、裕太!』


 ジェイカイザーの声に応えるように、正面にあるメインコンソールの画面上に指を滑らせ、コックピットハッチを静かに閉じさせてから、裕太は力いっぱいペダルを踏み込んだ。

 勢い良くジェイカイザーの背部バーニアが青い炎を噴射し、その炎に押されるようにしてジェイカイザーは宇宙港を飛び出した。




 【9】


「こなくそーっ!」

「ヨハン! 迂闊すぎや!」


 女王虫の強固なバリアーに攻撃を阻まれ、決め手に欠けるヨハンと内宮。

 しびれを切らしたヨハンがビームセイバーを両手で掴み、バーニアを吹かせて跳躍してから落下の勢いを乗せた斬撃を放つ。

 しかし、その一撃はやはりバリアーに阻まれ、空中で制止するように受け止められてしまう。

 女王虫はその隙を付くように、鋭い鎌状の前足を振り下ろし〈ザンク〉の右腕をまるでバターに刃を通すかのごとくいとも簡単に切断した。

 そのままバリアーに弾かれるように〈ザンク〉が吹っ飛び、「ぐえっ」というヨハンの呻き声がスピーカー越しに辺りに響く。

 切り落とされた右腕は地面にめり込むように落下し、手に持っていたビームセイバーがエネルギーを失い、円柱状の柄だけの状態で地面を転がった。


「せやから迂闊や言うたんや! こりゃあ、はよ勝負決めへんと危ないで……!」


 内宮の目の前に表示されている〈エルフィス〉のレーダーには、コロニーアーミィの包囲網を突破しこちらへ向かっている宇宙怪虫の反応が複数映っていた。

 しかし、現在こちらにあるのは弾切れ寸前のライフル一丁と、片腕を失った〈ザンク〉。

 それ以外は〈エルフィス〉で肉弾戦を仕掛けるくらいしかできそうにないが、あのビームセイバーすら防ぐバリアーに対する決定打には成り得そうもない。

 じりじりと距離をつめる女王虫との距離を保つように、ゆっくりと〈エルフィス〉を後ずさりさせている内に増援の宇宙怪虫が2匹、女王虫の背後に降り立った。

 頬にじっとりと汗を垂らしながら、(万事休すやな……)と半ば諦めの感情を内宮は心に浮かべた。

 だが、その感情は数秒の後に払拭することとなった。


「ギャピィィィ!」


 甲高い断末魔とともに、青白いスパークをほとばしらせて宇宙怪虫の一匹がその場に崩れ落ちる。

 何が起こったのかと、もう一匹の宇宙怪虫が振り返る間もなく、ジェイカイザーが上空から強襲し、手に持った白い警棒を外殻を貫くように突き刺し、キャリーフレームですら一撃で機能停止をする電撃を肉体に直接浴びせた。


「やったぁ! 笠本くん、すっごぉい!」

「おい銀川、耳元で叫ぶな! 集中できないだろうが!」


 2匹の宇宙怪虫が動かなくなったことを確認した裕太はエリィのいる方の耳を片手で塞ぎつつ、カマキリのような姿の女王虫へと視線を移した。 と同時に、内宮とヨハンからのノイズ混じりの通信がコックピット内に聞こえてくる。


「おそいぞ笠本、僕なんかこっぴどくやられちゃって……」

「アホやらかしやだけや。それよりあのカマキリ野郎、ごっついバリアー持っとるらしいで」

「バリアー?」

「ああ、実弾のライフルはもちろんビームセイバーすら刃を通さんバケモンや。笠本はん、突破できそうか?」

「……悪いけどビームセイバー以上の威力の武器、持ってないんだよなあ」

「はあ!?」


 素っ頓狂な内宮の声を聞いている内に、女王虫はジェイカイザーを一番の脅威と認識したのか、ギギギと金属をこすり合わせるような声を出しながらジェイカイザーの方へと向き直った。

 そして飛びかかりながら放つ女王虫の鎌の一撃を避けるように、裕太は咄嗟にペダルを踏み込みジェイカイザーにバックステップをさせた。


『よく避けたな、裕太!』

「気をつけろ笠本! その鎌、スッパリ切れるぞ!」

「その抽象的なアドバイスなんとかしろヨハン! とりあえず食らったらまずいってことだな。んでどうするんだよ、こっちも攻め手ゼロだぞ!」

「くっ……! そうだ、僕を大気圏から救ったあの技はどうだ!」


 あの技、とは最近開放されたウェポンブースターのことだろう。

 ジェイカイザーの腕からエメラルド色の結晶が伸び、その結晶をまとった武器がパワーアップするという代物である。


「ったって、ショックライフルを強化してもビームライフル止まりだったぞ。ビームセイバーが効かない相手に使っても……」

「……そうよ! じゃあビーム兵器をパワーアップさせればいいじゃない!」

「そう言ったって、どこにそんなものが?」

「こっちだ! 受け取れ、笠本!」


 ヨハンの声に反応して〈ザンク〉の方を向くと、〈ザンク〉が残った左腕で地面に転がったビームセイバーを掴み、振りかぶって投げようとしていた。

 裕太は即座にヨハンの狙いに気づき、背部のハードポイントからショックライフルを手に取り、女王虫に向かって数発放った。

 ライフルの電撃弾がバリアに阻まれ霧散するも、女王虫の注意がヨハンに向くこと無く、〈ザンク〉が宙に投げたビームセイバーがジェイカイザーの手元へと無事に到着する。

 空中でビームセイバーを掴んだジェイカイザーはそのままスイッチを入れ、明るい桃色のビームの刃を発振させた。


「ジェイカイザー、ウェポンブースター起動!」

『了解だ、裕太!』


 裕太がコンソールからウェポンブースターを起動すると、ジェイカイザーの両手首からエメラルド色の結晶が伸びるように飛び出し、手に持ったビームセイバーを巻き付くように包み込む。

 結晶の影響を受けたビームセイバーはその刃の色を輝く緑色へと変化させ、刀身が太く長く巨大化していく。

 目の前で突如起こったビームの肥大化現象に恐怖を抱いたのか、女王虫が低い唸り声を上げながら後ずさる。


「行っちゃえー! ハイパービーム斬りよぉ!」

「耳元で叫ぶなって銀川! 喰らえ強化ビームセイバー!」

『カイザービーム一文字斬りぃぃぃ!』


 三者三様の技名を叫びながら振り下ろされた10メートル大のビームの刃は、女王虫のバリアーに阻まれ激しい閃光を放った。

 裕太は操縦レバーを押し込む手に力を入れるも、ビームセイバーはバリアーを押せはしているが貫くまでには至ってなかった。


「あの女王虫、バリアーを前方に集中させてるんだ……!」


 目の前でバリアーとビームセイバーがぶつかる閃光に目を眩ませながら、進次郎は冷静に分析をしていた。

 バリアーを集中させているということは、現在こちらに向いている背後はがら空きである。

 しかし、攻撃を仕掛けようにも〈ザンク〉は丸腰、〈エルフィス〉は逆方向から来る宇宙怪虫を迎撃すべく注意を払っている現状。

 この状況で女王虫に攻撃を仕掛けられるキャリーフレームは存在しなかった。

 そこでふと、先程裕太の父がでたらめに撃った弾丸のうち、一発が宇宙怪虫の動きを止めたことを思い出した。


「なあサツキちゃん、あの女王虫のどこかにとんでもない弱点ってないかツクダニに聞けないか?」

「で、できますけど……。ええと、首の付け根? に呼吸器官に通じる小さな穴があるらしいです。2センチくらいの本当に小さな穴らしいですけど……」

「フ、充分すぎる大きさだ。なぜなら僕は……」


 情報を聞き終えた進次郎は、サツキから受け取った拳銃を両手で握り、照準器サイトを覗き込む。

 よく目を凝らすと、女王虫の首元にシミにも見える小さな点がうっすらと見えた。

 息を止めて手の震えを抑え、額から汗が吹き出るのも構わず慎重に狙いをつける。


「僕は、真に天才だからなあっ!」


 進次郎の握る拳銃から小さな、されど力強い鉛の弾丸が発射され、女王虫の首元にある極僅かな穴に吸い込まれるように向かっていく。


「キシャァッ!!?」


 一瞬。ほんの一瞬だけ女王虫が怯み、ビームセイバーを止めるバリアーの抵抗感が少しだけ緩んだ。

 その一瞬を着いて裕太は操縦レバーを握る手に力を込め、全力で腕を押し込む。

 力を込めすぎて震える裕太の手に、エリィが微笑みを浮かべながらそっと手を重ねた。


「「『はぁぁぁぁああっ!!』」」


 ガコン、と操縦レバーが最奥に押し込まれる感触。

 それと同時にビームセイバーがついに女王虫のバリアを切り裂き、その巨大な体躯を真っ二つにぶった切った。

 そしてエネルギーの切れたビームセイバーの光の刃はV字の切り込みの入った地面から引き抜かれるように縮み、ジェイカイザーの手元で消失した。


 女王虫を失ったことで指揮系統が無くなったからか、レーダーに映る宇宙怪虫を示す光点が逃げるように外側へと離れていき、やがてすべて消えていった。

 コックピットの中で汗だくの顔を裕太に向けたエリィが、やりきったという笑顔を裕太に向けた。


「や、やったわね笠本くん……!」

「……おい銀川、なんで自分が役に立ったかのような顔をしているんだ」

「え? あたしの力を笠本くんに貸してあげたのよぉ」

「あーもう勝手に手を乗せるんじゃねえ! 邪魔で力入れにくくなっただろうが!」

「ひっどーい!!そうやってあたしの想いを踏みにじるんだー!」

「うるせーうるせー! もう乗せてやんねー!」

『裕太、何をやっている! 新手が来たぞ!』

「「えっ!?」」


 ジェイカイザーのレーダーに新たな光点が灯り、真っ直ぐではあるがゆっくりとした速度でこちらに向かっていた。


「そんなこと言われてももうガス欠だぞ!?」

「ちょっとぉ! 少しは残しておきなさいよぉ!」

「だってボスを倒したら終わりってのが定石だろうが!」


 裕太とエリィが言い争っている内に、先程までのとは体色の異なる宇宙怪虫がゆったりと地面に着地した。

 ジェイカイザーを守るように内宮の〈エルフィス〉が宇宙怪虫との間に割り込み、身構える。


「サツキちゃん! 危ないぞ!」


 外から聞こえてきた進次郎の声に気づき足元を見ると、ツクダニを抱いたままのサツキが宇宙怪虫に向かってゆっくりと歩いていた。

 しかしその顔は穏やかで、しかし少し悲しそうな表情をしていた。


「彼らは敵ではありません。ツクダニを迎えに来たんです」


 【10】


 コックピットから降りた裕太たちの前で、サツキの腕の中からツクダニが翅を震わせて宙に飛び上がり、迎えに来たらしい宇宙怪虫の足元に降り立った。

 こちらに振り返ったツクダニは、心なしか小さな目をうるおわせているようにも見える。


「ツクダニは、彼らワタリムシの女王だったんです」

「ワタリムシの女王? 卵から生まれたばかりだったのに?」

「ワタリムシは群れ……いえ、家族で宇宙そらを旅する宇宙の生命なんです。でも気性の荒い群れは、他の群れを滅ぼそうとする。ツクダニのお母さんはそうやって、さっきジェイカイザーが倒した女王虫に命を奪われた……」


 ツクダニとの別れを感じたのか、サツキの目に涙が浮かび、雫がそっと彼女の頬を伝った。


「けれど、ツクダニのお母さんは死の間際、卵に記憶を移して産み落としたんです。その卵は長い間宇宙を漂い、そしてある時私達のもとへと流れ着いた……。けれど、それを察知した敵の群れがツクダニの存在を追ってこのコロニーへとやって来たんです」

「ってことはサツキちゃん、今眼の前にいるのはツクダニの母親が率いていた群れの一員ってことか」

「そうです、進次郎さん。敵の群れの女王が倒れた今、ツクダニは生き残った敵の群れの生き残りを仲間に加え、率いていかなければなりません。だから……だからツクダニとは……さよならなんです。なぜでしょうか、とても胸が苦しいんです。ツクダニと離れると考えると、とても悲しいんです……」


 大粒の涙を溢れさせながら、サツキがへたりこむように座り込み、手を地面につけた。

 初めて裕太たちの前で泣いた彼女の背中を、そっと進次郎が撫で、優しい声をかけた。


「それはきっと、サツキちゃんがツクダニを家族だと思ったから、『家族愛』の感情がそうさせているんだよ」

「家族愛……?」

「短い間でも、ツクダニはサツキちゃんの家族になれたんだ。でも、家族の旅立ちを止めちゃいけない。ほら、笑顔で見送ってあげないといつまでもツクダニは旅立てないんだよ」

「ツクダニ……」


 進次郎に励まされ、サツキは細く小さな手で自分の涙を拭い立ち上がった。

 そして、無理やり作った笑顔をツクダニに向け、そっと手を降った。


「……バイバイ、ツクダニ」

「ギュミーッ!」


 長く、聞いていて心地の良い鳴き声を放ったツクダニは、仲間のワタリムシとともに翅を広げ、飛び去っていった。

 空高く浮かび上がったツクダニは、やがて外へと通じるダクトの穴へと消えていった。

 彼らを見送ったサツキの顔は、悲しげだが、とても晴れやかにも見えた。



 ※ ※ ※



 宇宙怪虫──ワタリムシの襲撃は終わった。

 幸いにも、住人が避難慣れしていたこと、コロニーアーミィが的確にワタリムシの数を減らしていたこと、ワタリムシの目的がツクダニだけだったことでコロニーへの被害はそこまで大きくはなく、多少のけが人が出たくらいで犠牲者もいなかった。

 サツキは自分がツクダニを持ってきたことでコロニーが襲われた、と自らを責めようとしたが、ジェイカイザーにツクダニの卵が引っかかっていなければ地球で戦いが起こっていた……と進次郎が説き、裕太の父の口添えもあって彼女への責任は問われることはなかった。


 そして──


「いやー。憧れの〈エルフィス〉も操縦できたし、なかなかおもろかったな、笠本はん」

「内宮、お前は向こうのシャトルだろうが。おい銀川、早く来ないと置いていかれるぞー」

「ちょっと待ってよぉ! 買い込んだおみやげが結構重いのぉ!」


 裕太ら東目芽高校の生徒たちはは班ごとに分かれ、各々が月行きの小さなシャトルに乗り込もうとしていた。

 この宇宙をめぐる修学旅行の終着点、月。

 それは人類の宇宙進出の始まりの地であり、宇宙における地球から最も近い大都市でもある。


「裕太、元気でやるんだぞ」

「父さんも、腰やったりするなよー」

「ハハハ! 余計なお世話だよ」


 見送りに来ていた父と軽い別れを済ませ、やっとシャトルに乗り込んだエリィを追うように裕太もタラップを駆け上がった。

 宇宙のタクシーとも言われる小型シャトルの中で、裕太は真っ白な長椅子に腰を下ろし、シートベルトを装着する。


「進次郎さん! 月の街、楽しみですね!」

「そうだなサツキちゃん、月でしか活動していない同人作家の同人誌や同人ゲームが天才の僕を待っているんだ!」

『修学旅行のメインイベントだな、進次郎どの! 私もかねてより購入予定表を書いておいたかいがあるというものだ!』

「お前ら……修学旅行を何だと思ってるんだ」

「いいじゃないの笠本くん、楽しみ方は人それぞれよぉ。あたしも月のファッションを見て回るのが楽しみだわぁ!」

「特に用もない俺はそれに付き合わされるわけだがな……」


 四者四様の想いを乗せて、ジェイカイザーの本体入りコンテナを牽引したシャトルはスペースコロニー「アトランタ」を離れ、月へ向けて飛び立った。





……続く


─────────────────────────────────────────────────


登場マシン紹介No.9

【エルフィス】


全高:8.0メートル

重量:5.9トン


 20年前に起こった地球軍(実質木星軍)対ヘルヴァニア帝国軍との戦争「半年戦争」において、英雄的な活躍により地球軍を勝利へと導いたキャリーフレーム。

 当時としてはトップクラスの運動性能に、高性能なビーム兵器を基本装備としており、性能だけなら20年の月日が経ってもなお民間機以上のスペックを誇るまさに傑作機。

 デュアルセンサータイプの目と、長い耳のように後方へと伸びたブレードアンテナが特徴。

 基本装備は頭部のバルカン砲とビームライフル、ビームセイバー。

 製造元のクレッセント社にとっては旗印的な機体であり、以後の多くの機体にエルフィスの意匠が取り入れられており、その全ての機体名に「エルフィス」が付いている。

 また、外見のカッコよさから人気も高く、プラモデルやソフビ人形などさまざまなグッズ展開がされている。

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