あたたかな手ぬぐい

 じょいやさ、じょいやさ

 お餅にお米、お野菜やお魚も。

 たくさんたくさん積み込みました。


 じょいやさ、じょいやさ

 届けに行きます。

 幸せなお正月を迎えられるように。


 じょいやさ、じょいやさ

 寒い寒い大晦日、雪をかぶって立っていた私達の元に、あなたはやってきた。

 頑張って作ったのに、買ってもらえなかった笠をかかえて。


 じょいやさ、じょいやさ

 お正月の準備もできないと嘆き。

 不安な心がありありと映し出された目で。


 じょいやさ、じょいやさ

 自分も辛いはずなのに。

 私の仲間達の雪を払い、笠をかぶせ。


 じょいやさ、じょいやさ

 最後の一体、私にかぶせる笠がない。

 それに気付くとためらいもせず。


 じょいやさ、じょいやさ

 自分も寒いはずなのに。

 自分のかぶっていた手ぬぐいを私にかぶせ。


 じょいやさ、じょいやさ


「おらの手ぬぐいで悪いが、少しはあたたかくなるでしょう」

 悪くなんてありません。少しなんかじゃありません。


 とてもあたたかいです。

 たった一枚の、ぼろぼろの布がこんなにあたたかいと、初めて知りました。

 石でできた私達にも、あたたかさを教えてくれたんです。


 じょいやさ、じょいやさ 

 届けに行きます。

 幸せなお正月を迎えられるように。


 どうか、良いお年を。

 じょいやさ、じょいやさ 

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