Everything is a lie

「おやおや、またあの羊飼いの子が騒いでいるね。『狼が出たぞー!』だとさ」


「またかよ、こりねえな」


「どうせ、今回も嘘に決まってるさ。

 私この前、あの子の言うこと信じて外に飛び出そうとして、転んで怪我しちゃったんだよね」


「気の毒にな。俺も前、信じて狼を探しに行こうとして目を離したせいで、作ってた夕食が全部焦げちまってな。腹ペコのまま眠らなきゃいけなかったんだ」


「そっちも気の毒にね。本当、嘘ばかりついて町中に迷惑をかけて嫌な子だね」


「ああ、嫌な子だ。人が慌てふためくのを見るのが楽しいのさ」


「世の中には楽しいことなんてたくさんあるのに、そんなことしか楽しめないなんてねえ」


「とにかく、あの子の言うことは信じちゃダメさ。全部嘘だと思って無視するに限る」


「その通りだね。

 ところで、なんだか獣の唸り声や吠える声が聞こえるねえ」


「羊の悲鳴じみた鳴き声も聞こえるなあ」


「血の匂いもするねえ」


「あの子の泣き叫ぶ声も聞こえる」


「『本当なんだよ! 信じて!』って声も聞こえる。

 でもどうせ、全部嘘だものね」


「そうそう、気にしない気にしない」

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