掃き溜めの貴きもの

硬い大地が足底に触れる。無事に地上に降り立てたようだ。

今の時期のこの気候は、この世界で生きる者達にとってはひどく寒いだろう。


目的のものがあるであろう場所へ向けて一歩踏み出す。


離れたところから人々が争う声が響いてくる。

過日取り壊した像の代わりに、誰の像を立てるかで揉めているのだ。

揉めている、と言うより、誰もが「私の像を立てろ」と主張し続けて譲らず、話が全く前に進んでいない。


彼らには今は用は無い。気にせずに目的のものを探し始める。




人にとっていらなくなったものが集められるこの場所。

「いらなくなったもの」だから、人は誰もこの場所にあるもの達に見向きもしない。

しかし、ここに運ばれたもの全てが無価値とは限らない。

人にとってはそうかもしれないが、私達からすればどんな宝石や黄金にも代えられないくらい貴いものが捨てられている場合もある。

それを、必ず見つけ出す。




…やっと見つけた。


この季節にこんな気候の国にいるはずのない、黒い鳥の死骸。

その隣に転がる、まっぷたつに割れた、元はハート形だった鉛の塊。




知っている。

私は、あなた達がしたことを知っている。


両の目を失い、何も見えなくなっても。

みすぼらしい姿になっても。

どんなに凍えても。

あたたかい故郷に帰ることを諦めてでも。

誰にも気づいてもらえなくても。

あなた達が最期までこの町の人々を救い続けたことを、私は知っている。

それが貴い行いであることを、私は知っている。


「町の中で最も貴いものを二つ持ってきなさい」

あの方にそう命じられ、すぐにあなた達を思い浮かべた。

あの方も同じお考えに違いない。




さあ、私と一緒に来るんだ。

これからは永遠に、私達の世界で幸福に暮らせばいいさ。

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