The outside is sweet
匂いがする。この森にいる。とんだごちそうが。
おびき寄せよう。いつものように。
小さな家を建てよう。
壁は甘いパンで、屋根は菓子で、窓は砂糖で。
愚かなあいつらの好物なんてたかがしれている。
ほぉら来た来たあほづら下げて。あんなに幼い兄妹が。
夢中になって家を食らってる。
自分達がこれから食われることにすら気付かずに。
よだれが流れ出そうになるのをこらえ作り笑いを顔に浮かべ、優しいふりをして兄妹を家の中に招き入れる。
すっかりこちらを信頼したところで、本性を現す。
まずは兄の方を太らせてから食べてやることにしよう。
犬小屋に押し込めて、格子戸をぴしゃりと閉める。
今更わめいたって、もう逃げられやしないよ。
妹の方には兄にやる料理をたくさん作らせよう。
ほら、さっさと水を汲んで来い。
今更泣き出したって、もう無駄だよ。
子供は本当に馬鹿だなあ。
外側の甘い部分だけで判断して、油断するからこうなるんだ。
おかしい、おかしい。
あれだけ豪華な食事を、いつも腹がはちきれるくらい食わせているのに、兄の方はまったく太らない。
目が悪いから見て確かめることはできないが、毎日毎日、犬小屋から差し出された指を握って確かめている。
何も変わらず細いままだ。まるで骨のように。
なにか細工でもしているのか?
いや、甘い外側に騙される馬鹿な奴に、そんな知恵があるわけがない。
兄妹が来てからひと月は経ったが、兄の方はずっと痩せこけたままだ。
早く脂ののった若い肉を腹いっぱい食べたくてたまらないのに。いつまで待たせるんだ。
もう我慢ならん。この際痩せたままだっていい。食っちまおう。
妹の方に、兄の方を煮る鍋とパンを焼くためのかまどの準備をさせる。
妹の方は泣きながらも素直にその通りにしている。
パンより先に焼かれるのは自分なんだがな。
「火がまわっているか確かめろ」
命令通り妹の方がかまどを覗き込んだら、すぐさま中に放り込んで蓋を閉めてこんがり炙ってやろう。
何だと? 見方が分からない?
そんなことも分からないのか! これだから甘い外側に騙される馬鹿は!
見ていろ、こうするんだ!
ほら、わしのようなばあさんでもできるだろうが!
どんっ
背中に衝撃を感じた。
目の前が徐々に赤くなる。
視界の全てが赤よりも赤い
熱い。
それが炎だと理解するのに、随分時間がかかったように思った。
いつの間にか、かまどの蓋は閉じられていて、無表情な鉄の黒色が見えた。
もう逃げられなかった。
熱い、熱い、熱い。
甘い、あの甘い外側に騙されたのは…
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