第254話 傷心者と小心者08


 そんなわけでこんなわけ。


「今日から皆さんの魔術講師と相成る一義先生……姫々先生……音々先生……花々先生です」


「ども」


「よろしく御願いします」


「だよ!」


「どうも」


 四者四様に挨拶。


 座学庵の異国部。


 元々の異国人の数が少ないため、人数もそう居ない。


 全部で七人。


 それだけ。


「では」


 とゼルダ。


「新しい先生に自己紹介をお願いします」


 まず順当と言えるだろう。


 い草の床に座っていた生徒が一人、立ち上がる。


 碧色の髪と瞳の少女だ。


「私はステファニーと言います。魔術講師である先生方に期待しております」


 席順ごとに生徒が立ち上がる。


「えと……名はタバサ……趣味無し……以上……」


 墨色の髪と瞳の少女はソレだけ言って座る。


「僕はアーシュラ! 魔術より弓が得意だよ! よろしく!」


 これは鉛色の少女だった。


「あう。その。ヴァレンタインです」


 錫色の少女は遠慮がちだった。


「わたくしは名をウェンディと申しますわ。是非とも宜しく」


 丹色の少女が不遜に言う。


「…………」


 黙ったまま立ち上がって礼をする少女。


 杏色の少女。


 名をザンティピー。


 喋るのがあまり得意ではないとは聞いている。


「俺はイヴォンヌ。ま、新任講師に期待していないが頑張れ」


 不遜に言ってのける俺様少女だった。


 栗色の髪と瞳が特徴的。


「殺していいかい?」


「やめんさい」


 こめかみを引くつかせる花々を一義が制する。


「何だ? やるってのか?」


 イヴォンヌの方も挑戦的だ。


 花々が教室の黒板を拳で叩いた。


 ミシィと音がする。


 蜘蛛の巣状に黒板にヒビが入り、ボロボロと崩れ去る。


 金剛。


 鬼の威力だ。


「っ!」


 絶句するイヴォンヌ。


「よくほざいた」


 花々の赤眼は爛々と燃える。


「ひ……!」


 イヴォンヌが失禁する。


「あーあ」


 とりあえず、


「男子は居ないの?」


「居ませんね」


 イヴォンヌの失禁をクラスメイトが処理している中、


「美少女」


 ならぬ、


「美幼女」


 ばかりなのは疲労の一因だ。


「彼女らに魔術を教えるのかなぁ?」


「給料分は働いてもらいますよ」


「僕じゃなくて音々に言って」


「お兄ちゃん……」


 悲しげな音々だったが、


「だいたい魔術と言えば音々」


 が鉄板だ。


 元よりゼルダも認識している。


「とりあえず」


 パンと一拍。


「魔術を行使するに当たっての心構えを先生方に教授願いましょう」


 そういうことだった。

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