第201話 三人の姫は06


 で、訓練を終えた後、一義たちは風呂に入っていた。


 当然水着で。


 ことコレに関しては頑として妥協しない一義である。


 ルイズはふにふにと花々の胸を揉んでいる。


「大きいね」


「自慢のソレだよ」


 花々のアドバンテージだ。


「姫々はスレンダーだね」


「ええ、まぁ」


 モデル体型の姫々だった。


「で、ロリ要素……と」


「お兄ちゃんはちっこい子が好きだから!」


 完全に不名誉な言葉が音々から放たれた。


 実際にハーモニーを溺愛しているため根拠薄弱では無い。


 もっとも一義の言い分を聞くなら、


「愛玩動物の類だよ」


 とのことだが。


 ハーモニーがせっせと食事をして、懐くように迫ってくれば、その微笑ましさに耐えられない一義である。


「なんだかなぁ」


 と云った気分。


「アイリーンも綺麗な体してるね」


「姫々のおかげで質素な食生活を送れています故」


「一義は興奮しないの?」


「するに決まってるでしょ」


 もう少し事情は入り組んでいるが本音でもある。


「別に誰か一人を選ぶ必要は無くない?」


 その通りではある。


 ハーレムハーレムと云っておきながら、一義は複数の女の子を手込めにしたりはしない。


 選ぶのは誰か一人。


 月子よりも尚愛せる一人。


 それを一義は探している。


 それが月子の願いでもある。


 月子には悪いが、


「月子を失った傷を癒やす」


 などと云うつもりは一義には無い。


 その上で月子より魅力的な女の子。


 これが中々に難題だ。


 アイリーン。


 ビアンカ。


 シャルロット。


 ディアナ。


 エレナ


 フェイ。


 ジンジャー。


 ハーモニー。


 アイオン。


 ジャスミン。


 キザイア。


 ルイズ。


 一人として並みは居ない。


 それぞれに魅力的な女の子たち。


 が、そんな女の子たちを理解するにはまだ時間が足りない。


 何せ今春学院に入学してそれほど経ってないのだ。


 女の子たちの慕情は聡く理解しているが、残酷を承知で、


「今はまだ」


 としか言えない。


「そんな難しく考えなくても良いんじゃない?」


 とはルイズの言。


「そうかな?」


 と一義。


「ご主人様は難しく考えすぎです……」


「そうだそうだ!」


「好きにしてくれて良いのに」


「私は何時でもウェルカムですよ?」


「僕も僕も」


「アタマのズツウがイタい……」


 それが現状一義の本音だ。


「いっそ夜這いでもしよっかな?」


「ルイズに自殺願望があるとは知らなかった」


「何でよぅ……」


 ルイズの不満も当然だ。


 ほとんど生殺し状態なのだから。


 とはいえ恋愛は惚れた方の負けなのでハーレムの女子たちは大敗している。


 一義が月子に縛られている限り目は無いのだが、その呪縛はあまりに重く尚雁字搦めで酷く解きにくい。


 そしてその鎖を説く方法は北風では無く太陽の役割だ。


 無理矢理では意味が無い。


 陽光のように降る真摯な優しさと愛が無ければ解けない呪縛。


 今はまだ一義はその呪縛を大切に思っている。


 再三になるがだからこそハーレムの女の子たちには目が無い。


「見限るなら何時でもどうぞ」


 と一義は言う。


 しかし誰も賞金総額一義のレースを離脱しようとはしない。


 死んでも尚苛烈に想う一義の心。


 奇しくもエレナが言った通り、


「一義に愛して貰えると云うことがどういうことなのか?」


 を女の子たちは自覚的あるいは無自覚的に覚っている。


 一義の純情がどれほどの価値を持つのかを知っている。


 一義にしてみれば、


「残酷なだけだよ」


 と云うことになるが。


 パシャッと肩に湯をかける一義。


「僕の何が良いの?」


 一義は問うた。


「格好良いところ」


「優しいところ」


「純真なところ」


「誠実なところ」


「儚いところ」


「君らは誰の話をしてるの?」


 一義の疑問も当人には尤もだろう。

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