第163話 嗚呼、青春の日々04


「…………」


 そんなわけで今日も今日とて無為に終わる。


 一義およびハーレムの女子たちは揃いも揃って規格外。


 元よりシダラが魔術都市……ひいては軍事都市であるため戦力の保有は自然なことだ。


 そして超の付く一級である一義たちはシダラの貴重な戦力。


 であれば学院が手放すのは有り得ず、特にダラダラしてもお咎めはない。


 一義が学院に通っているのは主に宗教学や神学や哲学の類を勉強するためで、けして魔法学院の優等生と言える態度では無かった。


 とはいえ銃力の規格外さは学院も承知している。


 結果、特別棟で学院長を巻き込んでダラダラ。


 図書館で本を読みながらダラダラ。


 学食で食事をしながらダラダラ。


 その上でお咎め無しなのだから他の生徒には面白くない。


 とはいえ一義に喧嘩を売ることの恐ろしさを知らない者はシダラに……というか霧の国に居ない。


 後は希に一義を巻き取ろうとする勢力が現れるくらいか。


 こちらも上手くいった陰謀は一つも無いが。


 元より俗世に興味が無い一義ではあるので損得や名誉には興味が無い。


 受動的な人間なのだ。


 人間ではなくエルフだが。


 一義が、


「面倒くさい」


 と顔をしかめて指で摘まんでプラプラ揺すっている【力】という存在こそ一義にとっての敵だ。


「力は歪みを生むか正すことにしか使えない」


 そう嘯いているため当人から喧嘩を売ることはほとんど無い。


 概ねにおいて一義が、


「面倒くさいけど力を振るう」


 のは全て他人のためだ。


 それがまた女の子には王子様のような印象を与えるのだが、当人に自覚は無かった。


「今日も頑張ったなぁ」


 特別棟でダラダラ紅茶を飲んでいた一義が背伸びをした。


「…………!」


 ハーモニーが両手を万歳する。


「花々、通訳お願い」


「ツッコミが追いつかないそうだよ」


「そなの?」


「…………」


 コクコクと頷くハーモニーだった。


「まぁ自覚はあるけど」


 余計にタチが悪かった。


「でも実際やることないしなぁ……」


「四過生ですからね」


 ジンジャーが皮肉ってくる。


「そのとーり」


 自覚はしても反省はしない。


 元より厚顔でもなければ美少女を無数に侍らせて平然とは出来ないだろう。


 それについては一義の心的外傷も関係ないわけではないのだが。


 月子への想い。


 かしまし娘の愛情。


 西方ハーレムの慕情。


 そんなものが一義をじわじわと真綿で首を絞めるように迫ってくる。


 力が無ければ即絞首刑だろう。


 もっとも一義に言わせれば、


「力が無かったらこんな事態になっていない」


 ということになるが。


 結局一義の人外の戦力を行使したが故のしがらみだ。


 それに惚れた女子も居るだろう。


 それに逞しさを感じた女子も居るだろう。


 それに格好良さを覚えた女子も居るだろう。


 その上で、


「で?」


 と言えるのが一義の長所であり短所だ。


 ハーレムの女子たちもその辺は理解がある。


 というか無ければやっていけない。


「一義?」


 アイリーンがフェイのおっぱいを揉みながら問うてくる。


「夕餉はビーフストロガノフで良いでしょうか?」


「好きよ?」


「はぅあ!」


「ビーフストロガノフがね?」


「ですよねー」


 もみもみ。


 フェイのおっぱいを揉みしだくアイリーンだった。


 フェイの方は感度が良いのか顔を真っ赤にしている。


「お姉ちゃん……止め……」


「フェイちゅあ~ん……」


 反魂のアイリーン。


 死者すら蘇らせる特級魔術師だが、当人および妹御であるフェイが不死身であるため……そしてアイリーンが重度のシスコンであるため……色々と残念な結果になっていた。


 一義と出会った頃は清楚で可憐な美少女と云った具合だったがフェイがハーレムに入るなりキャラが変貌した。


 特に気にする一義でもないが。


「姉妹丼という手もありますよ?」


「他人丼でお願いします」


 ある種のやりきれなさは一義の胸にもよぎる。


「どうしてこうなった?」


 アイリーン以外の一義たちの通念だ。


「白米とパスタのどっちにしましょう?」


 フェイのおっぱいを揉みしだきながらアイリーンが問うてくる。


「パスタで」


 一義はサクリとそう言った。


「アイリーン様」


 姫々が提議する。


「わたくしも準備を手伝って宜しいでしょうか……?」


「大歓迎」


「ではその通りに」


「どの通りだ?」


 そう思ったが一義は口にはしなかった。

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