第152話「終局に向けて」

途中で公開してしまうことをお許しください。

終局に向けて2話ぐらいあるかも…

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 世界の理に介入する力、神力。祖父は剣に光を宿しディニオを切付け、先ほど現れた死の国の封印されし王、聖王陛下が光弾を発射している。既存の神に権能を取り返されたとはいえ神の不死性を維持したまま。大したダメージは受けて居ない様子です。……かなりの長期戦になりそうな予感です。


「本体、待たせたな」

 勝さん1号が変態王子を引き連れ短距離転移で現れました。

 遅い! 遅いのです! 亜空間からポイポイと剣を投げてから何分経ったと思っているのですか?


「そう言ってくれるな。こっちはこっちで横挿で入れられた業務で大変だったんだ。なぁ、大賢者ことお師匠様よ」

 勝さん1号はそう言うとこ急が落ち着いてきた祖母に手のひらぐらいの大きさをしたクリスタルを放り投げました。


「……ご苦労様」

 祖母はクリスタルを受け取ると魔法力を流し込み、納得した様な、何かを確信した様な、ちょっぴり怖い笑顔を受けべて居ます。


「……ミリ、マイルズ。もう大丈夫よ。ありがとう」

 祖母はそう言うと私たちの頭をなでます。立ち上がると言う事でしょう。私とミリ姉は視線を合わせ頷きあうとパンダちゃん抱っこ椅子に座る祖母に両脇から抱きついて状態から地面におります。


「あの人が戦っているのに私だけ倒れているわけにはいかないわ」

 心配するミリ姉と私に向けて力瘤を作って祖母は笑顔を見せると椅子から離れて行きました。


「案ずることはない。かの大賢者、今の状態で参戦するなど無茶はしない。……まぁ、参戦するよりも効果的なことはするのだがな」

 自身ありげに笑みを浮かべる変態王子……あれ? 椅子の間に私はこの仮面の変態に抱っこされているのでしょうか? まっ勝さん一号!


「本体、今お前の安全を考えるとこれがベストだ」

 ワタシを抱っこしたままパンダちゃん抱っこ椅子に座る変態王子。シャクなのです。

 などと思って居たら、カチリ、とパンダちゃん抱っこ椅子と何かが反応する音がします。変態王子の仮面が外れ……いえ、何かに吸収されて消えて行きました。

 ……あれ? この顔、どこかでみた様な……。


「本体よ。師匠が始める様だぞ」

 私が文句と疑問を投げかけようとしたところで勝さん1号が祖母が術を展開すると教えてくれました。

 視線を向けると祖母は特殊な粉を撒きながら簡易の魔法陣を作成して居ます。


「師匠の魔法陣を使った魔法とは、ディニオとやら終わったな」

 ふむ、勝さん一号。何を言っているのかさっぱりわかりません。祖母は何をしようとしているのでしょうか?


「勝さん一号。説明をお願いします」

「ああ、すまんな。まず俺たちが遅れたことから説明しよう。俺たちが遅れたのは聖王陛下の封印解除作業を死の国重鎮から望まれたからだ」

 死の国重鎮と言えば、宰相様をはじめとした『偉大なる先達』と呼ばれている喋れない方々ですよね?

「そうだ。死の国重鎮は聖王陛下が封印された際に、教会勢力が起こした反乱へ対抗するために『生きながら死者』となり強力な力を得た聖王陛下の腹心たちだ。……彼らはずっと『聖王陛下の復活』を望んでいた。しかし聖王陛下を復活させるには4つの条件が必要だった。1つ、『封印の神に対抗できるエネルギー』。2つ、『封印術を移し替えるための魔道具』。3つ、『封印術に干渉できる地球魔術師』。4つ、『封印の神と同等の術師』」


 ふむ。


「1つ、『地脈のエネルギー』。2つ、『勝さん一号が王都で作った放送システムを稼働させている魔法力バッテリー』。3つ、予測するに勝さん一号の配下ですね、教国事変以降地球魔術の研究者に出資したとか言ってましたね……。4つ、ヴァンリアンスさんですか……、それほどとは……」

「ああ、ヴァンリアンス。彼は封印の神の力を一部宿して生まれている。訳あって神により魔族へ種族変更を行った際に判明したらしい。それ以降表向き『魔王候補の3番手』として裏では『亜神』として育てられてきたらしい」


 ふむ。


「封印を解いたと言う事は」

「ヴァンリアンスの実力が他の派閥からの横やりを受けても自立できるレベルになったと言う事だ」

「……なるほど、私たちの動きは良い陽動になったのと同時に、聖王陛下の封印を解く要素を満たしたと、そしてあのクリスタルは……」

「ああ、聖王陛下と刺し違えて果てた『封印の神が施した封印術』だ。さぞかし神となったディニオにはつらい術だろうよ」


 なるほど、あの『封印の神が全力をもって施した術を移した』クリスタルから術を行使されれば、ディニオの不死性はかなり失われる……か、確かに終わりですね。


「ぶも」

 祖母の魔法を見守っているとパン田三太郎が私の前に跪いていました。

 曰く『試作一号機の支援に参ります』とのこと。


 確かに、亜神並みの戦力を有する偽ドゥガは現在ターゲットを異世界航行船撃破からディニオ支援に変えようとしています。それを防いでいるのは方向の関係上から試作一号機のみとなっており、現状試作一号機はまーちゃんレベルステージ2まで使用しています。突破されるのは時間の問題です。

 まーちゃんレベルとは異世界人の教国騒乱時に得た情報から『異世界人の背中の光は、肉体崩壊の光。また、神が人に課したレベルと言う名の人体改造の行きつく先、そのステージへいたる道』を定義し、人工的に亜神への昇進を施す術の段階の事を言います。

 ステージ1は神力を現在の肉体と精神体、魔法体、神体を用いて活用する。通常レベルでは覚醒に至らない神体を活用することで、肉体と言うよりは精神体、魔法体、にダメージを受けます。これは人工体である案山子で現状テストを行っている状況です。

 ステージ2は神体活用レベルを上げ、これまで見てきた上位の亜神並みの世界への鑑賞力を発揮させます。こちら現状の案山子では耐えられません。使用すると体のあちらこちらに赤い線が走り、見た目はかっこいいのですが神体の力に肉体と精神体、魔法体のそれぞれが耐え切れず崩壊している証なのです。これは長時間使用すると自戒する為、長時間の使用は禁止しています。

 なおステージ3は世界への干渉能力の発現です。現在私がこの状態なのです。私はもともと中に眠る自然神がいて先日準覚醒しているのでその痕跡を解析することで活用できないかと試みたところできました。神樹様の見立てでは神獣様と同レベルの能力があるとの事でした。……まぁ、教国でのことを教訓に対処したステージ3ですが神樹様から『過信はダメなの、必ず大人を頼るの』と釘を刺されています。

 正論過ぎてぶっ刺さりました。

 まぁ、と言う事で神が宿る私以外ステージ2を長く続けることはリスクでしかありません。私が自ら調整を繰り返している権三郎ならある程度制御できますが、権三郎経由で情報を吸収したであろう試作一号機はもはや限界に近いですね。


「許可します。支援に行きなさい」

「ぶもっ!」

 パン田三太郎は頭を下げると立ち上がり短距離転移で戦線復帰します。……なんか、なんであんなイケメンな仕草するんですかね、あのパンダ。……むぅ、嫉妬とか気持ち悪いこと言わないでください変態王子。




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