第150話「超えるもの」
「いや〜、やってしまいましたね」
にやにやしているディニオは祖父に向かってそう告げます。
陰陽師っぽい日本人が消えて管制室にも音が戻ってきたので中継が完全復旧、祖母の呼吸も正常に戻りつつあります。
あ、私、皆様の3歳児ことマイルズでございます。
「おじいちゃん、かっこよかったのです」
「うん、おじいさまカッコ良かった」
「……ふふ、当然よ。私の英雄様ですから」
祖母にも少しの良数が出てきていますが、顔色は以前悪い様です。
なぜか立ち上がりさんせんしようとしたので私とミリ姉で止めます。そのため左右から兄妹で抱き、抱っこちゃんパンダ椅子に座らせております。
祖母には私とミリ姉で止められるほど弱っていると事実を把握していただきたい。
「ルカス少年、ありがとう。これでより完璧な超級モンスターが出来上がりました」
ディニオは醜悪な笑顔で腕を振るうと巨大な魔法陣が中空に展開される。
それは縦ではなく横に展開され範囲の屍、モンスター、異世界宗教過激派を飲み込む。祖父は察知して居たのか飛び退いて範囲外に逃れて居ます。
「はははは、私は今から地上最強に至る! 多くの憎悪に塗れた遺体、地脈が集中していることで必要以上のエネルギーと情報が存在、さらには!」
ディニオが手を振り下ろすと魔法陣は縦に伸び、タイチと呼ばれた男がいた上空に私達日本人が想像する鬼が現れ、魔法陣に囚われる。
鬼は、頭からに一本の角を生やし、大柄で筋肉質な体格に青い肌、手に持つのは金棒。非常に強そうな鬼ですが、魔法陣に囚われ、逃れようと足掻いて居ますが逃れられません。
「……この状態で術者に遠距離から攻撃とかすれば楽じゃないですかね」
私の素朴な感想を漏らすとミリ姉が呆れた様に返してきます。
「魔法陣を含めて一個の生命体だから発動してしまえばもう無理よ」
「じゃあ、魔法陣の方に仕掛けをしたらどうかな?」
「それは……」
ミリ姉もわからなかった様で祖母に視線を向けます。
「……良い観点です。常識的に考えるとそんなこと絶対に不可能ですが、術を馬鹿みたいに見せつけている相手が悪いですね。……うちの人は常識を覆すことが得意な大英雄様ですよ」
祖母はそういうと私とミリ姉の頭に手を置きモニターを凝視します。つられて私とミリ姉もモニターを見る。するとモニターの端の映し出されている祖父が何か術を展開して居ます。一見、脅威の魔法陣に抵抗する術に見えますが……。
「無駄ぁ、ルカス少年。この魔法陣が展開された時点で貴方の敗北なのですよ。私はこれから超級モンスターを超える者となり、神樹や偉大なる樹と並び、神王を越えるこの世界の第三極。地上の神となるのです!」
神獣様やウッサのことを忘れて居ないかと突っ込みたくなりましたが、神の等級を思い出します。確かウッサは5級、神獣様は4級、神樹様は3級だったはず。級によって事象管理力、つまりは扱える力が違うのだとか……。ディニオは余程の自信があるのでしょう。
しかし、果たして5級未満の亜神と亜神数体分と言われる超級モンスターを作り出す術を合わせたところでその様なものが作り出せるのでしょうか?
超級モンスターが単数の場合は複数の亜神で対処する。所謂勇者・英雄の類のお話です。
超級モンスターが複数の場合は地上勤務の神が対応する。ウッサが神に昇格する際に見せた力が神の力の様です。
超級モンスターを作り出す術で神樹様に並ぶ力が作れるのでしょうか……。
ディニオが並べた『偉大なる樹』は知りません。神王様……神獣様より上……そんなポジションにいたのですね……。家庭に立場のない大きなお犬様かと……。
「何かしているようですが、無駄です。術の本体は私の体なのですから。30年。30年かけて完成させたのです。幾人の亜神を殺し。幾百人もの同胞で試し。ドゥガの複製体を教育し、実験を繰り返し、亜空間で数多の実験体を得て、やっと……完成させたこの術は我が体に刻まれています」
「……」
祖父がさらに距離を取りました。魔法人がより一層強い光を放ち始めました。
「亜神。龍。超級モンスター。全てこの世界の法則、その根源に触れる者たち。それを解析し、研究した。つまりは……」
ディニオが語気を強めると魔法陣内の生物と生物だったものが一か所に集まり、圧縮されてゆく。
「神の情報もあるのだ。長く地上に君臨する神樹から、偶に降臨する高位神。全て地脈の情報に刻まれている。『表層をなぞるだけでは』とお思いですね。いいのですよ。器さえ作れれば、中身はやがて満たされます。素晴らしいですね。流石我が同胞。このような施設を作ってくれたこと心より感謝しますよ」
「……勝った気で良くしゃべる……」
「ええ、勝ちが確定しています。タイチが異世界の亜神である。鬼神を召還してくれたおかげでね。この世界、それは神の管理する理の表層。異世界があるように、神の管理する領域には多数の世界がある。それを突き破る事象。それは我らがこの世界に来た事象。それを再現する。素晴らしい。以前よりタイチには期待していました。事象を解析したいと思っていました。ですが。死んでしまった……。貴方に殺されて情報のカギである魂が壊されてしまった。ただ殺してくれれば私の思惑通りでしたのにね……しかし、許しましょう。貴方が再びこの場に現れ、私と対立してくれたことでタイチの魂を再構成できました。そして……、私が神と対抗できる術を完成させてくれた……感謝に耐えません」
魔法人は収縮し、ディニオと集約したソフトボール大の黒い玉。
「さぁ、決着の始まりです。ルカス少年。私は人間を超えます」
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