第148話「祖父と初代5」
ふぅ、一息…つけない(本業で。。。)
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マイルズの祖父:前魔導公爵ルカス・デ・アイノルズ視点ーー
何故それでその効果が発動するのか、効率の悪い術式でなぜか高威力の魔法を放つ初代様。数十年、魔法の世界に使っていた儂だが、このような力押しだが、繊細な技術見たことがない。
魔法理論、術式、その先にある才能の様なもの。発動直前の感覚の様なもの。
言葉にするのは難しく、しかして効果は絶大。
「……負けてられぬな」
儂は精霊眼を起動し魔法を放つ。元部下たちが溶けていく様は心苦しいが、部下たちが最後は笑顔でこちらを見ていたのが救いではある。
「ほほう、そなた現役の魔導公爵であったか。では魔導公爵殿、そなたの元部下たちは我に任せられよ。魔導公爵殿は異世界人2名を相手してほしい」
儂の精霊眼の発動を確認し、初代様は感心したように提案した。
「初代様。申し訳ございませんが精霊眼の継承術は既に失われております。故に儂は『前』魔導公爵にございます。あと、ご配慮感謝いたします」
「ほっほっほ。では自ら習得した物かそなたも苦労して居るのう……」
立ち位置を入れ替わり際に声を掛けられる。
「……しかし、魔導公爵の証として精霊眼を引き継がせておったはずだが……残念なことよ」
「現代技術では難しい……、いえリスクが高い術式ですので」
「ふむ、では前魔導公爵殿は諦めておるのかのう?」
言葉と同時に初代様から放たれた魔法に目を奪われる。術式に変化が起こっている。まるで一度魔法体に書き込んだ魔法回路を書き換えているような……。バカな。そんな危ういことを平然と……。
「前魔導公爵殿、戦闘中に敵から目を離したら危ないですよ~。ルカス少年」
ディニオがタイチを操り儂に攻撃を放つ。……ん? ディニオとタイチの間に繫がりが見える。
儂は防御に徹し『今見え始めた』ディニオとタイチの間に繫がりを観察と考察をする。まず何故儂はこれが見えているのか、それは……間違いなく初代様の偉業を見ているからだろう。卓越した技術と魔法回路すら書き換える応用性。その応用性が失われた精霊眼継承術のキモだと言わんばかりに見せつけられた。それが切欠なのだろう。儂の視点が変わった。故にディニオとタイチの間に繫がりが見え始めたのだろう。
ではなぜ『ディニオとタイチ』の間だけに繫がりがあるのか、他の元部下たちの間にはない。2つの違い、それは……。
「ルカス少年……君との因縁も終わり層で私はさみしいですよ」
「ル…カス……、ふ…じゅつは……、せか……いとのつなg…」
「黙りなさい。辺境の蛮族は反抗的でいけませんね」
ディニオとタイチの間に繫がりが強くなる。強制力か。ネタはばれた。
ディニオのこの術は本人が言っていた通り『地脈から情報と力を抽出する』術なのだ。だから『この世界の住人であり、魔法力を通じて世界とつながりの強かった』元部下たちはディニオの術で簡単な命令にそれぞれの判断経験で従っている。だが『この世界の住人ではなく、魔法力に頼らない術を使う』タイチ、人生の半分をこちらの世界で生活し死んだ、そんなあやつを再現はできても十全に能力は発揮させられない。だから意識と力をタイチに向ける必要がある。
「……ふふふ、まるで亀の様ですね。ですが、わかりますよね。時間は私の味方です。そう『仕込み』は終わっているのですよ。今はそれが発動するまでの余興。……まぁルカス少年は、余興で死ぬのですがね!!」
ディニオの言葉とともにタイチは秘術を発動する。……見たことがある。前の戦いでも見せた『鬼神』と呼ばれる異世界の亜神を召還し憑依する術。
「……させぬぞ?」
落ち着いた様子の初代様の声が届く。
「地脈とのつながりで力を得たのは、異世界の者、お主だけではない」
振り返ると元部下たちは元の亡骸に戻り、初代様だけがゆっくりとこちらに歩いている。
「なっ、再生は? 無限の悪意は? 魔法力の流れは? 貴様! 何をした!!」
「簡単なことだ、流れがあれば介入して止めればよい。儂はここ数百年この施設で地脈から魔法力を吸い上げため込む装置で寝ておったのだぞ? できぬ道理はあるまい?」
……いえ、初代様。できません。いや、魔法回路の書き換え……、地脈……、できる……のか?
「さぁ前魔導公爵殿、やつの術が完成する前にやってしまうのだ!」
「……いえ、成功率を考えると初代様が」
「やれ、失敗したら何とかする。それが先達として後輩にしてやれる唯一のことじゃ」
……。言われてしまった。儂も言ってきた言葉を、この歳になって言われるとは……。なんだこの高揚感は!
「ルカス少年、無理はおやめなさい。鬼神を相手にした方が簡単ですよ」
悪魔の誘惑か。きっと鬼神をこちらの世界に召喚できれば奴の奥の手がさらに強力になるのだろう。
「では、タイチよ。その呪縛、払ってやろう!」
儂はタイチと向き合い腕を伸ばす。
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