第147話「祖父と初代4」

「はっ、はっ、はっ、はっ、くっはっ……」

 祖父と対峙する陰陽師のゾンビを見てから祖母の様子がおかしい。苦しそうに呼吸をし、胸を押さえる。眼は赤く染まり、魔法力が暴走するように青くオーラの様に『祖母の背中から天へ向かい発光』している。まるで、転移してきたばかりの『異世界人』の様だ。


「……御婆様」

「……おばあちゃん」

 私とミリ姉は抱っこちゃんパンダ椅子を降りると、苦しそうにしている祖母を座らせる。

 ……魔法力が暴走して内部と外部の制御が無くなって器以上の力が体を壊しかけている。私が『まーちゃんレベル』として案山子達に使わせている能力に近い事象だ。


「大丈夫よ。すぐに良くなるから……」

 怒りから暴走しかけているこの状況でも気遣いができる祖母は凄いです……。

 そもそも『まーちゃんレベル』とはウッサが亜神から神へ昇華した場面を参考にしたシステムです。体と世界の境界を魔法力で緩和する。ウッサの場合は神、つまりは事象を司る者になる為、世界の情報との接続、その為に長い年月をかけて適応する為地上で生活し神となりました。『まーちゃんレベル』はその簡易版です。

 無理に境界を取り除き流入する力を魔法力へ変換し扱う。だからレベル初期段階はオーラを纏い、レベルを上げると肉体が崩壊の兆しを見せ。赤い亀裂が入ります。

 権三郎、マル、パン田三太郎、試作一号機、勝さん一号。私が作った案山子達は『まーちゃんレベル』を崩壊開始のステージ3まで実装しています。出力をあげ世界の事象へアクセスするステージ4は……、まだ実装していません。ステージ3でも十分に取り扱いが危険なのですから。

 祖母は私の見立てではステージ2に至りかけています。

 一般人やなりたての亜神であればステージ1の負荷に耐えられないところ、流石大賢者と言ったところでしょうか……、しかし生身ではステージ2はやはり危険です。


「おばあちゃん、大丈夫。すぐよくなるから」

 祖母は私の頭に手を置くと苦しそうにほほ笑む。

 祖母の右手をミリ姉が握り、左手は私が握る。

 そして私はすぐ横にあった緑のボタンを押す。

 抱っこちゃんパンダ椅子は外皮が赤く染まり、そしてやがて亀裂が入る。

 そう、この抱っこちゃんパンダ椅子はただの防衛機能付き過保護椅子ではないのです。マッサージチェアも……、いえそこもこだわり機能ですが違うのです。『案山子達がまーちゃんレベルで暴走してしまったためのメンテナンス』用の椅子でもあったりします。サイズが可変なのはそこら辺を意識したためです。


「……」

「……」

 祖母の息が段々と落ち着いていきます。祖母は苦しみから徐々に解放され、疲れからか背もたれに体を任せる。どうやらこの椅子の機能が効果あったようです。

 あとは経過観察。

 祖母の手を握っているためモニターが見えないですが、祖父よ、早めに決着をつけてください。今回は私がいたから、私が誘拐の経験から『まーちゃんレベル』を開発していたから、対処できました。でもいつまでもこの対処で正解と言う事ではないのです……。お願いしますよ……。



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