第146話「祖父と初代3」

2時間一本勝負!2日目

悲報:体力切れで力尽きる。。。と言うことで朝書きました。

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マイルズの祖父:前魔導公爵ルカス・デ・アイノルズ視点ーー


 さて、若人に適した仕事を任せられた。あとは……。

「かっかっかっかっか。ディニオよ。その程度か? 貴様との因縁も長きに渡ったが終わりはあっけないのう」

「ふふふ、言ってくれますね。ですが私は死霊術師、死体が増えれば増えるほどに戦力が増していきますよ。あなたなバカみたいな魔法で私の魔術が作り出すこの状況を打破できないですよ」

 挑発には乗ってこないようだ。相変わらず。


「ふむ。死霊術にモンスター生成術を混ぜたか、ますます世界の敵よな」

 ディニオが作り出したのは先ほど打ち倒した異世界異宗教過激派魔道士にモンスターを混ぜた様なキメラだ。これは初見だ。


「何をおっしゃる。この汚染された世を浄化する手段であるモンスター生成術は、まさに聖なる術ですよ」

 聖職者としての顔でディニオは言い切りよった。

 確かにダンジョンマスターは魔法力に混入してしまっている『世界の破滅』を望む情報(呪い)を物質化する事でこの魔法世界を維持している。


「それはダンジョンマスターのように計画的に、処理を目的とした場合だけじゃな。貴様がやっていることは聖剣をもった賊となんあら変わりないのう」

 魔法と魔術とモンスターとして強度の高い接近戦を繰り出すディニオが生み出したキメラを破壊する。


「ふふふ。感慨深い物ですね。ほんの30数年前には青臭いセリフを吐き、情熱と才能だけで向かってきたルカス少年はどこへいってしまったのでしょうか……」

 まるで親戚のおじさんが過去を懐かしむ様なディニオ。


「あ、そうだ。あなたにプレゼントがありました」

「……ほほう、何をもらえるのかな。無駄に年を重ねたインチキ宗教家からもらえるものは『たかが知れておる』が、楽しみだのう」

「ふふふ、驚きますよ〜。ダンジョンマスターを殺した際に、このモンスター生成術とともに地脈の操作技術も得、私の死霊術と組み合わせた結果! 大変面白いものが出来上がりました……。出よ! そしてルカス君、再び悪夢をお楽しみください……」

 ディニオの言葉と共に10体ほどの亡骸に光が灯り、空中に展開された魔法陣に吸い込まれてゆく。


「ふむ、面白い手品をみ……」

 魔法陣から現れたのは『奴』だった。

 愛娘マヌリカに殺し、儂らに悪夢を見せ、異世界人を拒絶するきっかけを作った男。

 異世界から来た札を媒介に事象を発動する恐るべき術士、タイチ。

 その男が形作られた。


「いいです、いいですよ。大英雄殿。被った薄っぺらい仮面が剥がれて私の愛したルカス少年が出てきましたね。くくくく」

 ……落ち着け。ここで憤っては奴の手の内。


「でぃいいいにぃいいいいおぉおおおおお!!!!!」

「はははははは、良い。良い。良い。心地よいですね〜その表情。愛して居ますよルカス少年」

 流されるな、わし! これは家族も見ておる。リーリアも見ておる。冷静にタイチの形を持ったアレを消さねば。


「その人形ごと……消え失せろ!!!」

 儂は最大の魔法物質の構成情報を破壊する魔法を解き放ち、タイチとその後ろに控えるディニオを狙う。


「……」

 儂の秘術を放ったその直後、タイチの形をしたモンスターが右手を掲げ何かを呟くとタイチの前に『何度も悪夢で見た』魔法陣が現れ、我が魔法を防ぎ切る。


「さすが稀代の天才陰陽師! 素晴らしい巫術です。世界の果ての愚かしき信仰の産物ですが、今はそれも許せます」

 ディニオが鬱陶しい。


「ル……カス……」

 掲げた腕術の反動で破壊されたがすぐに再生したタイチから我が名が溢れる。


「うふふふ、驚きましたか? 凄いでしょう? 地脈の情報から魂すら再現しているのですよ。そう、ほら、こうすると」

「アヤカ!? やめろ! 奪うな! おれから……、唯一を奪うな!!!!!!」

 ……。知らぬ話だ。だが、こやつがしたことは背景がどうであったとしても許されぬ。


「くくく、楽しいですね。彼の過去。気になりますよね〜」

「くだらぬ。失せよ」

 ディニオ周辺に雷を発生させる。

 しかしこれもタイチの術に防がれる。その反動でタイチは目から血の涙を流し、両腕は腐り落ちた。……しかし、腕は即座に再生される。面倒な……。


「嗚呼、幼馴染と共に異世界へ転移してきた彼。一般人であった彼女を守るために頑張る彼。でも幼馴染はタイチ不在時に守ることを約束した『現地人』に陵辱されてしまう」

 クソの様な話を始めるディニオ。それに呼応して叫び声を上げ、モンスターの死体を札に変え、術に変換してこちらに飛ばすタイチ、火、水、土、光、雷、召喚獣、多種多様。過去もこれらに苦戦したが、改造され、限界を無くしたこの攻撃は厄介だ。


「甲斐甲斐しく、深く傷ついた幼馴染世話をするタイチ。でも、幼馴染には届かない。タイチの目を盗み逃亡する幼馴染。必死に捜索するタイチ。物語であればピンチに現れるヒーロー。でも現実はそうならなかった。タイチが幼馴染を見つけた時にはすでに骸。顔は絶望に染まっていました……」

 ディニオの語りが進むにつれ、タイチの攻勢は強くなっていく。自壊と再生を繰り返しながら。


「悲劇の物語。なおこの物語は、『提供・企画:ディニオ 悪役演出:ディニオ』でお送りしております。ぷーくすくすくす」

 不快。強力しかし精神が未熟な術者を陥れ手駒にする手法はいかにも異世界宗教よ。


「知ってました?ルカス青年と出会ったころのタイチ君は『まだ』少しでも不幸な人を増やすまい、と。それが自分が守りきれなかった幼馴染に対する贖罪だ、と信じて居たのですよ。貴方の娘に近づいたのも100%善意だったのですよ。素晴らしい英雄ですね。……しかし、残念。彼は異教の民。敵の英雄は、私たちにとって、彼にとっても悪魔なのです。世を正そうと活躍する大英雄ルカス青年、手が届く範囲で救おうと必死に手を伸ばす異教の民の英雄タイチ少年。英雄は互いに潰し合い、心に傷をおっていく姿は……大変、爽快でしたよ。くくくくく」

「知らん。ちなみにディニオよ。その様な事情。過去の出来事を増して語るは老人は老害というらしいぞ、ディニオ爺」

 タイチとわしの攻防は続く。際限なく再生を繰り返し、強力な巫術を繰り出すタイチに対し、決め手がない……。リーリア……。いや、彼女を此処に呼ぶのは愚策だ。それを理解しているのだろう彼女は制御室から戻ってこない。


「くくく、大変良い表情です。ではその老人からルカス青年にもう一つプレゼントをあげましょう」

 子供に飴を配るような口調のディニオ。奴が手を振るうと先ほどまで此処に居た物どものとの戦闘中に仕込んでいたであろう魔法陣が光だす。あとどの程度の仕込みがあるか……。半分程度は使わせたはず。最後にはアレがあるだろう。ますます術に精通した援軍が欲しいが……、いかんせん術というよりも力のものが多い様だな。


「さぁ、おいでなさい。かつて大英雄と共に戦いし英雄たちよ!!!!」

 いろいろな遺体が発光し起き上がる。どれも見覚えのある顔だ。領地奪還戦において儂とともに戦った者ども、超級モンスターと戦い散っていった者ども。


「……ルカス様。申し訳ございません。体が意のままに動きませぬ。早々にお倒しください」

「うむ。安らかに眠って居たところすまぬ。すぐに儂が終わらせてやろう」

 本当に悪趣味だ。だが、こお奴らのことを思うとすぐにでも……、しかし手が足りぬ。


 どぉおおおおん


 その爆発音は儂の焦りと思考を中断させる。儂と同系統の術。過去改良を施され効率化される前のとがった発想のもと構築されている術。そんな術を疲れる方は……。


「ほっ」

 そのかたは儂の横に降り立つ。


「お困りの様じゃな、我が子孫よ」

 20歳そこそこのお姿で言われてもピンとこない。

 しかし初代様は満面の笑みで儂を見ると、その姿は子供の頃より寝物語で聞かされてきた始まりの英雄と被った。

 

「……これはこれは、初代様。お恥ずかしいところをおみせしました」

「ふむ、異世界宗教が厄介なのは我の時代もそうであった。しかし、ディニオか我から逃げ切った愚物が未だ生きておったか。これは我のしがらみでもある様だの」

 初代様はそういうとおちゃめな表情で、儂にウィンクをする。

 冷え切っていた心に火が灯る。

 さぁ、ディニオよ。此処までやってくれたのだ、覚悟はできておろう。

 今の儂は手強いぞ。

 なによりも一族が語りつぐ英雄がいらっしゃる。儂は一族を代表してこう体現せねばらぬ。『貴方の志は、想いは、間違いなく受け継がれ、此処まで昇華しました!』と。



「参りましょう。決着の時ですな」

「うむ。鬼退治と行こうぞ」

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