第143話「混線3」

すみません。4月は体調不良が続き。GWは扁桃腺が張れていて連休が消えていきました……。

気付けば本日「おっさん(3歳)の冒険。」発売日(5/10)ですよ!

https://20646.mitemin.net/i739904/

と言う事で本日は3回更新します。

・本編(朝)

・外伝(昼)

・本編(夜)

書籍化祭りじゃ~!

と言う事で本編をどうぞ!

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こんにちは、増援が遅々としてやってこない。責任者出てこい!

 あ、私の分身でした……。

 焦燥感が止まりません、マイルズ(3歳)です。


 現状最奥に異世界航行船、そちらを搭乗員の皆さんが結界を張りつつ、初激で受けた破損を修復中です。当初は主戦力が赤龍と化した偽ドゥガを牽制しておりましたが、今は試作一号機が騎士よろしく、攻撃と防御を行う形で抑えて居ます。


 その手前にはディニオ率いる異世界宗教過激派とモンスター軍団。登場当初は異世界人は偽ドゥガを支援。時間経過とともにモンスター軍団のみが、何故か、こちらの司令室に向けて進軍を開始しました。

 しかしそれはパンダ三太郎の登場によって阻止され、TS美少女戦士マモルン♪の猛攻と香織ちゃんのえげつない攻撃で押し返し、ついには偽ドゥガの支援を行って居た異世界宗教過激派までもがマモルンと香織ちゃん対策に向けられて居ます。


 私はというと安全のため分厚い壁に阻まれた司令室でいつもの権左郎が真後ろに立ち、影からは魔王候補筆頭のティリスさんが護衛に当たり、ついでに心配症の竜人学者デスガルドが気にしている状況です。因みに座っている『抱っこちゃんパンダ椅子』は脅威を感知すると、ウッサや神宮寺君などの3級神レベルの攻撃であれば守り切れるカプセル、最強のシェルターに変化します。(解除するのも大変な手間なんですが……)


 ということで急な開戦当初に比べ少々我が方優勢。

 だが、形勢は崩れ掛けており、何が起こるか不明。

 異世界人過激派からの横槍がなくなり、龍化した偽ドゥガを抑えている初号機。ブレスをシールドを中心とした防御で防ぎ、体当たりや魔法弾を剣と盾でいなして居ます。しかし、如何せんもう武装が持ちません。まず間違いなく後数分であの武器は破壊されてしまうでしょう。

 あと試作一号機は異世界人過激派達の攻撃が地味に効いている。ぱっと見でも駆動系に損傷を抱え、当初かわせていた攻撃を受け流さなければなくなって居ます。

 試作一号機が行動不能になるのが先か、マモルン達がモンスター軍団と異世界過激派を駆逐するのが先か。 私の見立てではスーパーモードのマモルンであれば、龍化した偽ドゥガと渡り合えるはずなのですが……。


「うぉりゃーーーーー」

 ……マモルンはそのスペックに振り回されております。

 サポートとしてつけたマスコットが仕事をして居ないのでしょうか?

 ……あ、これはサポートが聞こえてないやつですね……。

 ダンジョンで戦闘訓練ができたかと思って居ましたがそんなに簡単では無いようですね……。

 一方香織ちゃんの方は地球魔術合戦でマモルンの行動をうまく囮に使いながら戦果を挙げて居ます。あの年であの戦い方できるのか……。あの子、敵に回したくないなぁ……。……マモルン、(あらゆる意味で)ファイト! 叔父さんは被害の少ない場所から見守っています。


 この状況でパンダ三太郎が試作一号機のフォローに……いえ、そうしてしまうとマモルンや香織ちゃんにミリ姉と戦闘経験が少ない組が隙をつかれて戦線が崩壊してしまいかねませんね……。


 ……この状況であれあば『龍の主人』としての変態王子が必要です。

 ……何かに負けたようで悔しいのですが。


(本体。本体。聞こえているか?)

 聞こえています。遅いのですよ。どこで何をしているのですか?


(悪い。少し取り込み中でな)

 こちらの状況は分かっていますよね?それよりも重要事項なんてことがあるのですか?


(それがあったりするんだよ。そっちの教会幹部【希望】のディニオとかいう奴が厄介でな。呪い・洗脳術・死霊術に長距離転移術までできる上、『この国の根幹にかかわる問題』に関わっていたから、そっちに注力してくれている状況は願ったりなんだよ)

 ほほう。あの宰相さんが敵方で前線に出ていたようですがその件ですか?


(ああ、お陰様であっちに転移、こっちに転移とてんてこまいだよ)

 長距離転移術を会得している人はレアですからね。魔王国ですら数名でしたっけ?


(ああ、言い忘れていた)

 何ですか。とても嫌な感じなのですが……。


(私に長距離転移術を仕込んだ御方達がそろそろそちらに着くぞ)

 え?


(何やら獣神様と神樹様が動いてくれたらしくてな、あの都市から動けるようになったようだ)

 ……。


 マジで?

(マジで)


 ……。ってそうなるとやばいですね

 抱っこちゃんパンダ椅子の内側のスイッチを押し通信をONに変更。

「こちらマイルズ。全員後退!」

 私の通信に即座に反応したのは一号機とパン田三太郎、そしてマモルンのサポートマスコットであるマル。

 試作一号機はその場にしゃがみ大地に楯を突き刺すと、盾をその場に残し異世界航行船の前まで後退する。試作一号機が後退すると残された盾から大量の煙が発生した。


「魔法力拡散フィールドですね」

 何をしているのか戸惑う私に権三郎が解説してくれます。


「あれは煙ではなく、1つ1つが魔法を魔法力から分解、拡散する魔道具です。亜神に近く、準精神生命体の龍化した偽ドゥガでは突破に時間がかかる事でしょう」

 なるほどいわゆる奥の手と言う奴ですね。

 などと感心しているうちにパン田三太郎は相対していたディニオと異世界過激派とモンスター軍団に背を見せミリ姉と香澄ちゃんに向かい保護します。

 驚きで固まっているミリ姉と比べ、状況を観察している香澄ちゃん。貴女、本当に高校生ですか?

 保護し距離をとるとパン田三太郎の代わりとばかりにマルの完全制御に移行したマモルンが割って入り……「ナニコレ?」とマモルン本人は驚いていますが、目玉機能であるファンネルを展開、多角的な攻撃をしています。マモルン……すみません、ファンネルはニュータイプ専用武装なのです。The凡人である私とマモルンでは制御できない武装なのですよ。……香澄ちゃん辺りであればあっさりと制御してしまいそうですが……。


「ぶもっ!」

 戸惑うマモルンとNTD……じゃない「まーちゃんレベル:ステージ2」に移行し赤い粒子を纏いファンネルを操る丸が奮戦していると、ミリ姉と香澄ちゃんを抱えたパン田三太郎が短距離転移術で戻ってきます。そしてパン田三太郎は2人を下すと即座に短距離転移術を発動し前線に戻っていきます。


「マイルズ!」

「ミリ姉、どうやらおばあちゃんとおじいちゃんが来るみたいです」

 戦場からの強制退場に怒り心頭のミリ姉に端的に告げると、その言葉で察したようで真っ赤になっていたお顔が平静に戻りました。流石、11歳でプロハンター活動しているミリ姉。状況理解が早い。

 ……お待ちください、何故私を抱え上げて頬を膨らませているのですか?

 我が姉ながら大変可愛らしいのですが、可愛らしさではこの不肖マイルズも負けません! ……頬を突っつくのやめてもらってもよいですか? ……え? 「まーちゃんレベル:ステージ2」の武装を実装しろ? ごめんなさい。あれはレベル200超えていないと装備しているだけで危険な代物なのです。……わかります。あのマモルンがレベル200超えているっていう理不尽。え? 違う? 嘘は良くない? 何故そう簡単に見破るのですか? とっとにかく無理なのです! 危ないのです! あれは特殊な訓練を受けた(強制)のマモルンか、特殊な訓練を受けた(自発)香澄ちゃんじゃなきゃ起動できないのです。手に余る武装は自滅してしまうのです。ふはははは、止めてくださいw。弟をくすぐっても武装は出てきません。ここは……逃げるのです! 戦略的撤退なのです! 『姉(魔王)からは逃げられない』ですと! ぐぬぬ。……結局、終始ミリ姉のペースでいじられました。

 制御室の緊迫した空気に私も皆さんも若干疲れていたので、現在いい感じに空気が緩みました。そして何故だかミリ姉は平然と私を抱えて抱っこちゃんパンダ椅子に座っております。抱っこちゃんパンダ椅子、ある程度拡張性を持たせたのが失敗でした。私にジャストフィットなサイズであれば……。「子供は成長が早いから少し大きめ」が身に染みていたのですね……。え? 神様の影響で成長していないはず? 余計な設定を思い出した人はあとで校舎裏なのです!!


「あ、来たみたい」

 ウキウキしたようなミリ姉の声とともに戦闘現場に視線を戻すと、龍化した偽ドゥガとディニオと異世界過激派とモンスター軍団の間、ちょうど異世界航行船ドックの中央に力場が発生します。力場は上下左右に衝撃波を放ち、転移先の安全を確認しています。安全確認ができるところは案山子の体で安全意識が低下している勝さん一号も真似してほしいのです。


(いや、あれかなり難しいの)

 言い訳乙!

 などとやっていると力場から光があふれお二人の姿が現れます。


「孫に良い所を見せに……、儂が来た!!!!!」

 いや祖父よ。それでだいなしっす。


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