第141話「混線」

 100体のモンスターを送り込み、2体の竜を召還した。

 強化呪術特化の特殊魔術師魔術師部隊も送り込んだ。


 ここ数十年を共に生きたドゥガは龍の体に憑依し最後の行動を開始している。

 複製から生まれた精神とはいえ、幼き頃マザーと本物のドゥガに育てられた彼の精神は強い。

 だが、彼は根本から壊れて居る。生産した私が言うのだからそれは確かだ。憎しみを、こちらの都合の良い情報を刷り込むのは絶望と言う道具は便利だ。特に人の手により作られた不安定な彼の場合、両親への執着、復讐心があってこそ、冬眠中の龍に憑依できる。彼でなければ、寝ているとはいえ龍、憑依後たやすく飲み込まれる。


「のがさぬ! のがさぬぞ!!」

「おおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」


 龍を乗っ取ったドゥガを白い巨人が抑え込んでいる。だが、ドゥガが優勢だ。突破するのも時間の問題だろう。親を愛するドゥガの心、尊いですね。


 ああ、申し遅れました私はディニオ。【希望】のディニオ。

 元の世界では神父でありました。教えを尊び、神を愛し、他人を愛する。絵にかいたような善人だ。


 しかし違和感があった。

 これは本当に私なのだろうか……。

 穏やかな日常を過ごす中、日に日にその気持ちが強くなっていった。


 そんなとき、……私は魔女を拾った。

 私に救われた彼女は礼にと魔術の基本と東洋の死霊術を私に教えてくれた。

 魔術の基本は苦戦したが、死霊術は水の様に体に染み込んだ。死霊術を学ぶにつけ私の中にあった違和感は薄れて行く、不安が消えていく。

 1年。学ぶには短い時間を魔女と過ごし、私は死霊術を習得した。


 教えることはないと言った彼女。彼女は教会の上層部は全て魔法使いだった過去を教えてくれた。「うまく立ち回れ」そういった彼女の笑顔を未だに忘れられない。何故ならばそのあとすぐに彼女は消えてしまったからだ。まるで煙のように……。


 後日知る。教会上層部の権力闘争に敗れた女性が、魔女として粛清された記録を……。


 私は聖人【希望】のディニオ。稀代の死霊術師。


 日本の武者甲冑をまとった白黒の熊が多くの特殊部隊員を倒し、東洋人の女性2名と西部人の女児1名がモンスターを倒している。


 今、この場に、多くの死体が転がっている。


 私が仕込みをした兵隊が、モンスターが転がっている。

 唯一邪魔が可能な異世界航行船のメンバーはドゥガの相手でそれどころではないだろう。


 予定通りだ。


 私はモンスターを生み出す仕組みを知っている。

 私は超級モンスターと呼ばれるモンスターを生み出す仕組みも知っている。


 神よ、感謝します。

 貴方の加護を。貴方の愛を。


 さぁ、この場にいる者どもよ。絶望の時間だ。

 だが案ずることはない、絶望の中には必ず希望がいる。見出してみろ。



 ああ、私は【希望】のディニオ。


 聖人として愛を伝えるもの。


 神の愛を伝えるもの。


 さぁ、希望を見せておくれ……。


----------------

と言う事でディニオ視点でした。

これ差し込みたかったので2話に分けました。また明日!

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