第131話「マイルズ、おぬしも悪よのう・・・」
皆さんこんにちは。
俺を覚えているでしょうか?
ほら、まーちゃん先輩の後輩で、異世界知識をまーちゃん先輩に刷り込んだ神宮寺です。
ほら、ぐう鱈がちょくちょく『寺』と『司』を誤字した挙句、面倒くさくなって出番が減った神宮寺です。
……コホン。
出番がもらえなかったこの3年、結構大変だったんっすよ。え?作品の時系列は1月もたってないだろうって?……こまけぇな(ボソッ)。
いやいや、そんな読者様には向かうなんてしませんよ。ええ。
で、なんでしたっけか?……ああ、そうそう。俺の仕事を説明しなければなりませんでしたね。
まずまーちゃん先輩に命じられたのは神界での工作活動です。
具体的に言うと、あの後まーちゃん先輩自ら南方に回収に向かわれた亜神の皆さんではなく、神界でそれぞれの派閥に分かれていた、まーちゃん先輩の中の人(神)を主神にまつる神々を『まーちゃんを愛でる会』に再統合することです。
何気に数柱1級神とかいたし、更にはお母様の狂信者である転生神のお姉さまに絡まれ、目をつけられてさらに動き辛いったらありゃしない……。もう寿命が数万年縮んだっすよ……。
ま、神様に寿命はないんすけどね♪
……てか、まーちゃん先輩の中の人(神)とまーちゃん先輩どのくらいお互いを認識してるんですかね……。まぁ、俺が見抜けるようだったら今回の工作は成功してないか……。大丈夫かな、まーちゃん先輩。
そんなこんなで神界での政治もひと段落下し、『放置していた地上業務に追われていた』俺に『まーちゃん先輩の使者』として権三郎君が伝言を持ってきたのですよ。『変態王子と合流せよ』てさ……。
……いや、連絡をもらった時に俺がいたのって、何気に神界の中層なんだけど……。神界って亜神が住む浅層、低位神が住む下層、俺たち管理を担当する中位、高位神が住む上層、まーちゃん先輩の中の人(神)達が居た層(ここの存在って高位神の一部しか知らないらしいので俺たち程度の神は『あるらしい』ぐらいしか知らねーんすよ)。上に上がるのにそれぞれ人間から神様に成る位に大変なのに、しれっと伝令に来てたなあのゴーレム(0歳)……。
……見なかったことにしよう、そうしよう!
ということで、俺は今、まーちゃん先輩がいる世界、まーちゃん先輩がいる大陸の南部に来ています。
制圧済みの現地人類と、洗脳済みの亜神軍団で古代遺跡を発掘しては起動している。
これはまーちゃん先輩が滞在している死の国の遺跡を起動する為だ。
古代文明がとある目的の動力源に作った魔法力網は大陸中央から南部へ大きく広がっていた。それらを速やかに起動し、奴らから守る、必要があった。だから、まーちゃん先輩の人(神)にとって大陸南部で起こった騒乱は好都合だった。……そこまで意識が覚醒していればなのだけども……。
正直、微妙なんっすよ。
一見大人の『畑中先輩』の様に見えるんだけども……、たまに神界を見通したような『あの方』を感じるし、そういいながらもマイルズ君の幼児性も見える。そもそも『あの方』の片鱗が見えているのにお母様が何もしてこないのもおかしい。
ああ! もう! ややこしいこと考えるの嫌いなんすよね……。
「……面倒くさいっす。そしてカクノシン君、そろそろお仕事に戻らなくてもよいのですかね?大人として心配っすよ」
死の国へあと2か国に迫ったここでカクノシン君はVRゴーグルでまーちゃん先輩の動画を再生しまくっている。俺もそろそろレベル神の仕事に戻んなきゃならんのだけども……。
「神よ、しばし待たれよ。今脳裏に焼き付けているところ故」
重症だな、こりゃ……。
しっかし、15歳なのにこの口調だと年齢不詳なんだよな、この子。中身がまーちゃん先輩と同じで結構なお歳なのかと思えば、年齢通りとかどんな生き方したらこうなるんでしょうね……。
「失礼します、主。アルマンジ、バルグダード、両国との交渉が完了したとイケダ家の伝令より連絡がございました」
執事風の服を着こなしたできる美人秘書風の女性はノックをしてたが返事を待たず慣れた様子でドアを開けて現れる。部屋に入るとVRゴーグルをしてもだえるカクノシン君の姿にうろたえたが、落ち着いて報告を読み上げ、カクノシン君の反応をうかがっている。
「うむ、ご苦労」
「……成否は確認しないんっすか?」
俺がそういうとカクノシン君はVRゴーグルを外して俺を見る。意志の強い瞳だ。神である俺に向ける瞳ではない。
「失敗を失敗とだけ報告する者は我が配下におりませぬ故」
薄く笑みを浮かべるカクノシン君。ギャップ激しすぎるよ、君。
「そういわれるレベル神様も優雅にお昼を楽しんでおられるご様子、さほど急ぎでもありますまい」
……くっ。
俺が降臨することを読んでいたのか、この部屋には料理が用意されており、降臨してカクノシン君にVRゴーグルを渡すと自然の流れで料理を担当していた。天界での作業が長いとあの『食事の必要性がなくなって風習だけうっすら残っている食生活』を送らねばならなくなるっす……。知ってる?木の棒みたいな『栄養はあります』って顔した固いもの以外食べられないのよ……。たまに各世界に降臨しなきゃならない神がかろうじて残している文化だけど、適当すぎるんっすよ! マジで!
「地上に降臨したら、まず食事っす」
すっげー忙しい役職であるのに評価の低い『レベル神』。だけどこの世界みたいな世界を創造してしまったら、生まれた知的生命体を生き残らせるために必要な仕組みを支えるために必要な役職っす。他の部署に比べて神の数も必要としているのに……評価の低い『レベル神』を若い子(神)に続けてもらうにはメリットが必要っす。
「ふむ。レベル儀式に現れた神がかならずそのあと2時間はグルメ探索をしているとは……知りたくなっかた事実ですな」
食事を用意して接待してる人に言われたくねーっす。
「あ、すみません。このデザート包んでもらえます」
「賄賂用ですかな?」
「仕事を潤滑に回すための潤滑油ですよ。あ、あと打ってる店舗か食べられるお店も教えてください」
「して、神は今宵何をしにこちらに?神器(VRゴーグル)を褒美に与えるために降臨されたわけではありますまい」
……その話をしたくて待ってたんですがね……。
「お食事に夢中故、待たせていただいておりました」
うっ、この子、できる!
「あなたの方の進捗……は問題なさそうっすね。南部から1月で大陸中央まで起動してあるくと聞いたときは初期を疑ったんですがね」
俺の言葉をさも当然とばかりに薄く笑みを浮かべるカクノシン君。いや、当然じゃないからね。ダンジョンや遺跡に立ち入って勝手するってことはほぼ国を侵略していくのに等しいからね?それを1月でやってしまうのは異常だからね。
「さすがに私一人ではかなわぬ故、国元から援助を受けていますがね」
「……それはそれは、後日お礼に伺うっすよ」
ガッツリ恩を売られました。
しょうがないっすよね。断罪されて大陸の反対側に捨てた王子のはずですからね。この子逆にどうやったら支援を受けられたのか……。
「さて、それは良いとして。自分はこれから天界の『通常業務』に戻るっす。死の国国内も西部はまーちゃん先輩の身内の皆さん、他の地域は権三郎君率いるまーちゃん先輩軍団がそれぞれ制圧完了。権三郎君は遺跡制御機能を半分程度制圧完了とのことですよ」
1月前まで死んでた遺跡群なのにね……。
「ふむ。少し踏ん張ればいとし子の仕上げに間に合う可能性があるな」
「そっすね……、おっとカクノシン君。君レベル上げられるっすね。どうせ降臨したことが上にはばれていますから、レベルを上げてあげるっすよ」
「では、この拠点にいる配下の者どもとまとめてお願いいたします」
自信満々に言い放つカクノシン君。
レベルとは魔法など超常の力が存在する世界で、超常の力に適合し本来の生物から逸脱する仕組み。簡単に言うと生体強化になるっす。魔物を倒すと上がりやすいっていうのは魔物が実態情報を伴った魔法力であり、それを打ち破るためにはこの世界の『超常の力』である魔法力を使いこなし、親和性を上げなければならないっす。なので非常に難しいんすけど……。
「はい。終わったっす。君の配下すごいね……」
俺がほぼすべての配下がレベルを向上させたことに驚きを隠せないでいると、カクノシン君は興味がないとばかりに違う話題を振ってきた。
「異世界転移の術……」
今回異世界宗教とその裏で暗躍してきた人々(神々)に向けた餌。
「転移できるものなのですかね」
……わかって聞いてるっすね。この子。
「できませんよ」
そうできない。出来たら苦労はしません。世界の間の流れは地球に向かってはいない。異世界人はたま世界のはざまの流れ、その存在が引っかかって流されてこの世界にやってくるんっすよ。だから体や心が世界の狭間で、逆らう術を盛らない状態で、流されては良くて欠陥を持つけど生きて田地ドりつく、悪くて擦りきれて存在が掻き消える。神でも取り扱いが難しいのだから人類ではどうしようもない場所なんですよ。……今のまーちゃん先輩なら意図的に戻れるかもしれないっすけど、まーちゃん先輩の場合は肉体ではなく精神、あと中の人(神)の問題も解決しないと戻れないか……。
「希望を抱き、起動を奇跡と感謝し、いざ! と思ったらそこで終わりとはなんとも世知辛い」
カクノシン君。表情はとてもそう言っていないっすよ。
コンコン
カクノシン君に色々情報を仕込み終わったタイミングでドアがノックされる。
「お土産ができた様っすね。じゃ、そういうことで自分はお仕事にもどるっす」
「うむ。今宵はご降臨いただき感謝申し上げます」
「VRゴーグルつけながら言われてもね……」
その後思った以上の土産をもらった俺は通常業務に戻った。
……まーちゃん先輩、うまく段取りをつけたんだから失敗しないでくださいよ……。
失敗したら……。お母様の派閥が動き出しますよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます