第123話「皆さんカルシウムが足りないのでしょうか(表)」

 という事で……。


「お腹すいたのです。朝ごはんはまだですか?」

 こんにちは、昨晩どこからか現れた男たちに拉致され、石造りの牢屋に入れられております。マイルズです。

 手足に魔法力をかき乱す錠をかけられております。

 ……ま、無駄なんですがね。

 まーちゃんに同じ技は2度と通用しないのです!

 ふう、ま、それはいいのです。

 私は今、朝……と言っても地下なのでしょう……空気穴はあるが窓がない、この牢屋で暇つぶしのおもちゃをいじっております。しばらくして、ふと思い出しました。きっとそろそろ朝餉のお時間です。まーちゃんズ腹の虫さんが知らせてくれました。

 牢屋飯! 期待なのです。

 さてそれまでもうちょっと遊びますかね……。


チュイイイイイン

 これは中々抵抗しますね……。では、ここをこう分解して……。構造解析ではそろそろ全容が見えるはずなのですが……。


「おい、クソガキ。朝飯だ」

「あ、はい。今忙しいのでそこ置いておいてください」

「あ゛?」

 私を拉致した男たちのリーダーが怒っているようです。そんなに私と朝ごはんを一緒したかったのでしょうか?


「……聞こえてんぞ。くっ、大事な交渉材料で傷をつければこちらに不利になると知っての態度か……」

 リーダー(彼女いない歴=年齢)が何か言っています。


「くっ、ちげーし。子供の頃幼馴染と付き合ってたし」

 あら、心の声が漏れていたようですね。あと、幼子のストレートな表現に一々ムキになるものではないですよ? 底が透けて見えます。


「うがーーーー! もう、こうなったらこの朝飯は俺が食べる! 精々悔しがるがいい! どんなに弱った顔をしても晩御飯までは食べられないと知れ! そして己の迂闊な言動を反省してごめんなさいを言うがいい!!!」

 チラチラとこちらを見ながらリーダー(独身)が言います。


「……食べるのですか?」

「ああ」

「私の祖父は農家さんです」

「……は?」

「我が家の家訓です。『食べ物、無駄にすることなかれ』。私に提供されるはずだったモノ(食事)とはいえば、私のモノ(食事)も同然。全部食べるのですよね?」

 真摯な目で問いかけると、感化されたのかリーダー(無職)は真面目に頷きます。


「俺とて貴族の端くれ、使うところと守るところは心得ている。食料を無駄にするなど誓ってない」

「そうですか。では、美味しく召し上がりください」

 ちょっとだけ悲壮感を出して言ってみました。

 見つめ合う私たち。この時確実に私達は通じ合っていました。


「……その覚悟嫌いではない。いただくぞ!」

 すでに朝ごはんを済ましていただろうリーダー(童貞)は、それでも食に感謝し、固そうなパンと塩分過多なスープを飲みます。


「……ん、ああそうですね。私も朝ごはんでしたね」

 昨日作成した権三郎配下の特殊案山子6号が朝ごはん(牢屋飯)を配膳してくれます。色とりどりの食材が私の前に並びます。

 チラリと横を見るとリーダー()が固まっています。

 ……そのご飯セットを見ると、在りし日のザン兄がつくっていた『残念定食』を思い出すのです……あ、ザン兄は今料理番組のお陰でぐんぐん成長中です。この間ブタさんとセットで自信作を持ってきまして……そう、ドヤ顔でした。少し負けた気分です。


サクッ

 トーストがサクサクなのです。

 口内に広がるのは香ばしいパンの風味と、口内で薫るバターの味わい、素晴らしいです。


ズッ

 スープを頂きます。魔物を4日煮込んだと言うスープは深い味わいです。鼻孔をくすぐるこの香りは茸でしょうか、上品な味に仕上がっています。


パリッ

 ソーセージから弾ける肉汁、食欲を増進させてくれます。強烈な旨みがそれまで食べた味わいを侵略します。まさに肉の圧倒的な存在感なのです。


ザクッ

 瑞々しい葉物野菜のサラダは軽く塩だけ振られて居ます。それだけで野菜本来が持つ甘み、旨味を増大してくれます。やはりお野菜が一番の主役ですね(チラリ)。


「……おい! なんで今こっちをチラ見した!」

「いえ、朝食は美味しいなと、思いましてね……」

 再びリーダーの朝食を見ます。


「食料を無駄にしない。立派なお貴族様なのです。私は農家の一族、食料を大切にした上で更においしく頂くのです。同士ですね」

 幼児の笑顔です。渋面のリーダーにわざとコテンと首をかしげてみました。


「……そっそうだな」

 口の端をぴくぴく痙攣させながらリーダーが返答を返してきます。


「……あ、デザートですか。ふむふわふわな食感、ソースがしつこくない甘さで素晴らしいのです。お父さんの所で修業したのですか? 素晴らしいですね」

「……」

 私は料理人案山子にお礼を言うと膳を下げてもらい再び玩具(異世界人遺跡の遺物)に向かい合うのでした。


「おい! そういえばその案山子はどこから「チュイイイイイン」」

 リーダー(童貞)が何か叫んでいますが聞こえませんでした。

 先程からカリカリしているのは塩分過剰摂取の影響でしょうか?

 ちゃんとカルシウムこと牛乳さんを飲んで癒されないと大変なことになりますよ?


カクヨム+α

「あ、ベットはそこに、はい。ご苦労様です」

「だからその案山子はどこから「チュイイイイイン」」

 面白いのですこの玩具。別荘で玩具の解体がここまで心休まるとは……。


「ちがうから! ここ牢屋だから! ここ別荘じゃn「チュイイイイイン」」

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明日に(裏)を出します。また明日!

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